長らくデファクトスタンダードだった製品のライセンス体系が変更されたことで、ITインフラの見直しを迫られる企業は多い。「コストを抑えたい」「シンプルに運用したい」と願う中堅・中小企業向けの乗り換え先が限られる中、新しい選択肢が登場した。
VMwareのライセンス体系の変更により、これまで「VMware vSphere Essentials」や「VMware vSphere Standard」を利用してきた中堅・中小企業の中にはVMware製品の継続利用を断念するところも出てきた。
仮想化基盤の構築や運用を多数手掛けるアルファテック・ソリューションズも、この問題に直面する顧客を多数抱えている。同社の小林憲到氏(エンタープライズ事業部 技術部 部長)はその理由についてこう説明する。
「システム構成によっては上位エディションへの移行が必要です。コア数課金への変更も相まって、現在と同じ環境を使い続けるには従来の3〜5倍、時には10倍以上のライセンス費用がかかるケースもあります」
今後の価格変動を警戒する声もある。小林氏は「ライセンス体系の変更当初に情報が錯綜(さくそう)したこともあり、価格変動を不安に思うお客さまもいます。納得できる予算感で長く安心して使える仮想化製品に移行したいとの声を聞きます」と続ける。
VMware製品からの移行先候補として、ベンダー各社はさまざまな仮想化製品を提案してきた。しかし、中堅・中小企業がコスト面や運用面で無理なく移行できる製品は限られていた。
こうした悩みに応えて、Hewlett Packard Enterprise(HPE)が2025年2月に提供を始めたのが仮想化基盤「HPE Morpheus VM Essentials Software」(以下、VM Essentials Software)だ。当初はハードウェアと組み合わせた提供を予定していたが、顧客の要望に応えてソフトウェア単体での提供を先行させた。
HPEの山中伸吾氏(パートナー・アライアンス 営業統括本部 ストレージ営業部 部長)は「VMware製品からの移行先を求める中堅・中小企業にとって最適な4つの特徴を同製品は備えています」と言う。
山中氏は「KVMはLinuxカーネルに組み込まれたオープンソースの仮想化技術として、既に多くのエンタープライズ向け製品に採用されています。ベンダーロックインのリスクはありません」と続ける。
「VMware vCenter」などの運用管理の利便性を評価してVMware製品群を採用したユーザーも多いだろう。HPEの三上和真氏(デジタルセールス・コンピュート事業統括本部 パートナー技術部)はVM Essentials Softwareについてこう話す。
「多くの顧客が『VMware製品が搭載している全機能を必要としているわけではないが、これだけは譲れない』と挙げるのが、ライブマイグレーション機能やハイアベイラビリティー構成を実現する機能です。VM Essentials Softwareはこれらの機能を標準で提供します」
VM Essentials managerはKVMだけでなく「VMware ESXi」の管理にも対応可能だ。VMwareのライセンス更改のタイミングで段階的に移行する場合や、一部のシステムでVMware製品環境を継続利用する場合もVM Essentials managerで一元管理できる。
VM Essentials Softwareはソケット単位のライセンス課金を採用する。「高コアCPUを使って仮想サーバの集約率を高めれば大きなコストメリットが得られます」と三上氏は説明する。
HPEのハードウェアを併せて導入すれば、仮想化基盤からOS、ハードウェアまでワンストップでサポートする。アルファテック・ソリューションズの横尾純平氏(エンタープライズ事業部 技術部 第1技術グループ 第1チーム)は「ソフトウェアとハードウェアのサポート窓口が異なると障害発生時に原因究明が進まず、対応や復旧が遅れるケースがあります。問題の切り分け段階からHPEのサポートを受けることで、運用担当者の負担を大幅に軽減できるでしょう」と語る。
仮想化ソフトウェアにかかるコストを圧縮することで、システム全体のパフォーマンスや安定性を高めるための“攻めの投資”も検討できる。山中氏はこうしたニーズに対して、「100%の可用性」をうたうストレージ「HPE Alletra Storage MP」を推奨する。
山中氏によると、HPE Alletra Storage MPはハードウェアの管理機能「HPE InfoSight」によって稼働状況をHPEが集中管理することで、AIを使った障害の予兆検知や故障リスクのアドバイザリー情報を展開する。ファームウェアのアップデートも自動で対応する。
「昨今のストレージ製品における故障の大半は、構成要素であるソフトウェアやハードウェアの組み合わせに起因して発生しています。HPE Alletra Storage MPは、HPEの管理サーバが世界中の筐体(きょうたい)の稼働データをリアルタイムに収集して分析します。ある筐体で不具合を検知したら、その筐体と同じ構成のユーザーに通知して対策を促します。これにより『100%の可用性』を保証しています」
HPE Alletra Storage MPの監視対象にはVM Essentials Softwareも含まれるため、障害が起きる前に検知結果が通知されるので対応できる。VM Essentials SoftwareとHPE Alletra Storage MPを組み合わせると「VMware vSphere Virtual Volumes」と同様のストレージ管理機能を備え、仮想マシン単位のバックアップやリストア、スナップショットの保管も可能だ。
今後、VM Essentials Softwareは「HPE SimpliVity」などのHPE製品との連携を強化することで、インフラ管理の柔軟性と拡張性がより高まる予定だ。
VMware製品ユーザーの支援実績を多数持つアルファテック・ソリューションズは、今後もVMware製品をはじめとする各種仮想化製品を取り扱いながら、HPEとのパートナーシップの下でVMware製品に代わる仮想化製品を求める企業の支援にも力を入れる。
アルファテック・ソリューションズはサーバ仮想化技術の黎明(れいめい)期からさまざまな企業の仮想化基盤の設計や構築、運用を支援してきた。これまでに蓄積してきた豊富なノウハウによって、顧客企業のさまざまなニーズに応えられると同社の青谷謙一氏(エンタープライズ事業部 技術部 第1技術グループ マネージャ)は力を込める。
「VMware製品や『Hyper-V』『Nutanix AHV』などによる基盤構築からネットワーク仮想化、マイクロセグメンテーションまで、仮想化技術を使ったプロジェクトを数多く手掛けてきました。『長年利用してきた仮想化製品のラインアップが変わってどうすればよいのか分からない』『移行後もコストや運用方法はなるべく変わらないようにしたい』といった顧客のニーズをよく知っていることがわれわれの強みです」
VMware製品からの移行先を検討する企業に対しては、現行環境のアセスメントからVM Essentials Softwareのライセンス選択や移行方法、基盤設計、構築、移行作業、監視や障害検知、バックアップといった運用環境の構築も行う。
既に幾つかの企業がVMware製品からVM Essentials Softwareの移行を検討している。
ある企業は、中核となるデータセンターでVMware vSphere StandardとHPEのミドルレンジストレージ「HPE MSA Storage」を利用し、地方拠点ではVMware ESXiによる仮想化基盤を運用していた。ライセンス改定をきっかけに仮想化基盤の見直しを進めている。
「当初、中核データセンターはVMwareの上位ライセンスに移行し、地方拠点はHyper-Vを使う構成で検討していました」とアルファテック・ソリューションズの大坂祐輔氏(エンタープライズ事業部 技術部 第3技術グループ 第1チーム)は振り返る。
費用を抑えるためにライセンス数を従来の半分に圧縮する構成を検討したが、それでも大幅なコスト増が避けられない状況だった。
こうした中、リリースされたばかりのVM Essentials Softwareの紹介を受けて関心を持ち、アセスメントを実施。中核および地方拠点の仮想化環境の移行、動作についてアルファテック・ソリューションズと共同で検証した。
「ライセンス数を減らさずに従来と同等の構成を維持しようとしたときに、VMware製品とHyper-Vの構成よりもコストを抑えられることを評価していただきました。現行環境との比較や共同検証を通して、課題解決に対するわれわれのサポート力や伴走力も好評を得ています」(大坂氏)
アルファテック・ソリューションズはHPEと緊密に連携してVMwareのライセンス問題に悩む中堅・中小企業のVM Essentials移行を支援する。
「当社はHCIによるサーバ構築、運用やVDI、それらのクラウド移行と各種クラウドサービスの活用支援、ゼロトラストなどのセキュリティ対策も得意としています。仮想化基盤の構築、運用だけでなく、それらを顧客のニーズや環境に応じて発展させる支援も実施しているので、『次期仮想基盤を何にするか、客観的な視点で一緒に考えてほしい』といった内容も含めてご相談ください」(青谷氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
提供:アルファテック・ソリューションズ株式会社、日本ヒューレット・パッカード合同会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2025年6月14日