Wi-Fi接続が不安定で音声や映像が途切れる――九州産業大学では、無線ネットワークの老朽化と性能不足が教育の質に影響を及ぼす大きな課題となっていた。これらの課題を解決すべく、キャンパス全域の無線LANアクセスポイントを刷新。学生及び教職員の満足度を向上させた。本記事では、同プロジェクトの裏側を紹介する。
九州地方を代表する私立総合大学の一つである九州産業大学。1960年に開学した同大学は、「産学一如」を建学の理想とし、産業界と連携した実践的な教育を重視している。周囲約4キロの広大なキャンパスに文系、理系、芸術系の9学部21学科、大学院5研究科と造形短期大学部を擁し、1万人を超える学生が学んでいる。就職決定率の高さが大きな特長であり、就職希望者の約99%という全国的にも高い水準の実績を誇る。特に進路指導は手厚く、学生や教育関係者から「面倒見が良い大学」としても定評がある。
そんな九州産業大学で、学内情報システムの管理や情報セキュリティ対策、情報教育支援などを担当している部門が総合情報基盤センターだ。九州産業大学は学術情報ネットワーク「KIND」(カインド)、教育研究システム「armo」(アルモ)、学生教育支援・事務情報システム「K’s Life」(ケーズライフ)という三大基幹システムを有しており、いずれも総合情報基盤センターが構築と運用を担っている。
九州産業大学には「Wi-Fi接続が不安定で音声や映像が途切れる」という課題があり、教育の質向上を図るために学内のネットワーク環境を大幅に改善することになった。その際に総合情報基盤センターが重視したのが無線LAN環境の増強だ。
「従来使用していた無線LANアクセスポイントはWi-Fi接続の安定性に問題があり、授業中に音声や映像が途切れることがありました。その原因を調査する中で、2014年に導入した機器がネットワークのブロードキャストを必要以上に流しており、それがネットワーク帯域を圧迫し、性能低下を引き起こしていたことが判明しました」(石岡氏)
そこで総合情報基盤センターは2022年、キャンパス内にある約200教室を中心に、293台に及ぶ無線LANアクセスポイントの入れ替えを決断。以前から取引のあったクラフティア※とSCSKに導入の相談をしたところ、提案を受けたのがHPE Aruba Networkingの無線LANアクセスポイントだった。
※九電工。九電工は2025年10月1日に、クラフティアに社名変更を予定しているため、本稿は新社名で表記します。
「HPE Aruba Networkingの無線LANアクセスポイントは、電波干渉を自動で回避してネットワークの負荷を軽減する機能を備えています。近くのアクセスポイント同士が連携してチャネル選択を自動的に調整するため、安定した接続を維持できます。アクセスポイント間の接続切り替えもスムーズで、移動中でも途切れません。負荷テストの結果でも最も安定していたため、HPE Aruba Networkingの無線LANアクセスポイントの導入を決めました」(石岡氏)
こうして2023年3月に293台の無線LANアクセスポイントの導入を完了した。しかし、キャンパスにはまだ古いアクセスポイントが586台残っていた。この入れ替えに関しては、2024年度に計画していた学術情報ネットワークKINDの更改の際に行うことにした。
従来のKIND3は、2014年の利用開始から10年目を迎えていた。この間、特にコロナ禍を境に遠隔授業やWeb会議が一般化してきたことでネットワークの通信量は飛躍的に増大し、ネットワークの能力不足が顕在化した。そこでKIND4への更改の際は、有線系ネットワーク、無線系ネットワーク、ネットワークサーバ、さらにはセキュリティを見直すことで、教育や研究環境のさらなる充実と業務DXの推進を計画した。
「複数のベンダーに対してRFP(提案依頼書)を作成・送付し、提案された製品から最適なものを選ぶことにしました。ベンダー各社からの提案内容を基に機能、管理性、安定性など多岐にわたる項目を点数化し、入念に評価しました」(福田氏)
「KIND4は、ネットワーク回線については今後12年間、ネットワーク機器については今後6年間の運用に堪えることを前提に、使いやすく安心・安全なネットワーク環境の構築を目指しました。能力に余裕のある一部のネットワーク回線は継続利用していますが、無線LANアクセスポイントに関しては最新規格のWi-Fi 6による高速化、デッドスポット(通信困難場所)の解消を図り、学内のどこからでも快適に使える環境を目指しました」(小松氏)
クラフティアとSCSKもこのRFPに応じ、提案内容はもちろんのこと、2022年度のHPE Aruba Networking無線LANアクセスポイントの導入実績も評価されてKIND4更改プロジェクトを受注するに至った。
無線系ネットワークに関しては、前述したように2022年度に293台の無線LANアクセスポイントを更改したものの、まだ古いアクセスポイントが586台残っていた。
「デッドスポットを解消するために、KIND4には586台のHPE Aruba Networking無線LANアクセスポイントを導入しました。すでに導入実績があったため、他の製品と比較せずに決めました。HPE Aruba Networkingのコントローラーは操作性に優れ、全てのアクセスポイントを一元管理し可視化できるため、運用管理面で大きなメリットを感じます。たとえ障害が発生しても、迅速な対応が可能です」(福田氏)
総合情報基盤センターは、アクセスポイントの設置に当たってSCSKの導入支援体制を高く評価している。SCSKのエンジニアが広大なキャンパス内をくまなく歩き回り、デッドスポットを1つずつ解消しながら最適な設置場所を探すという地道な作業をした上でアクセスポイントを設置し、導入後も的確な運用フォローをしている。
「アクセスポイントを追加したことで、従来の通信遅延や切断といった問題が解消され、無線LANの接続安定性が大幅に向上しました。これにより、1万人以上の大規模な同時接続も可能となり、学生や教職員をはじめとする利用者の満足度も向上しています。さらに、トラブルの発生頻度が大幅に減少し、総合情報基盤センターの運用管理負荷も軽減されました」(小松氏)
「無線LANのデッドスポットがなくなり、多くのデバイスが同時接続しても遅延が発生しなくなりました。特に学生からの評判が良く、『快適に利用できる』という声が多く寄せられています」(石岡氏)
KIND4においては、無線アクセスポイントだけでなく、RFPの要件の範囲内で一部のネットワークスイッチやIT基盤にHPE製品を採用したことで、製品間の親和性向上や保守窓口の一元化による運用工数の削減につなげている。
こうして導入した合計879台のHPE Aruba Networking製品は、今後6年にわたって使い続ける予定だ。従来の10年サイクルから6年サイクルへと更改頻度を変更したのは、技術進化のスピードに対応するためだと石岡氏は説明する。
KIND4から次期KIND5までの間に、さらなるネットワーク環境の増強も検討している。最新規格であるWi-Fi 7への対応についても、動向を見極めながら導入を検討する考えだ。小松氏によると、IPv6の導入も視野に入れているという。
「今後も新技術の導入を視野に入れていますが、安定した通信環境の提供を何よりも最優先すべきだと考えています。これからも最適なネットワーク設備に更新することが総合情報基盤センターの使命であり、時代の変化に合わせたネットワーク環境を提供していきたいと考えています」(石岡氏)
※本稿は、SCSKからの寄稿記事を再構成したものです。
※本稿は、2025年3月に取材したものです。取材に対応していただいた方の役職は当時のものです。
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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2025年9月17日