より適切な業務デバイスの選択は、企業の競争力強化に直結する。昨今は従業員の生産性向上のために、あえて業務デバイスとしてMacを導入する企業が増えているという。専門家への取材から、Macを選ぶ企業の目的とビジネスシーンにおけるMacならではの利点を深掘りする。
長らく日本企業では「業務デバイス=Windows PC」という考え方が一般的だった。だが、個人の生産性を重視する傾向が強まる中、企業にはOSを問わず従業員がパフォーマンスを最大限に発揮できる環境の整備が求められている。「何となくこれまでと同じ機種を渡す」という慣習から脱却して、自社にふさわしい業務デバイスを検討し、最適な選択肢をそろえる必要がある。
こうした状況で、業務デバイスの選択肢に「Mac」を取り入れる企業が増えている。これらの企業は、なぜMacを選んだのか。Macはビジネスシーンでどのような利点があるのか。Apple製品の導入支援を手掛けるTooの福田弘徳氏と山田未來氏に話を聞いた。
「もしかするとWindows PCを利用している多くの方が、Macに対して10年ほど前のイメージを持ち続けているかもしれません。ですが、この10年で業務デバイスとしてのMacを取り巻く状況は、主に3つの要因によって大きく変化しています」と山田氏は話す。
かつてのMacは「クリエイティブ職が使う特殊なデバイス」といった印象を持たれがちだった。実際、ビジネスユースにおける管理や運用面、コスト面での課題が指摘される場面も多かった。だが、それはもう過去の話だ。
1つ目の変化は、企業におけるモバイルデバイス管理の必要性が高まり、2014〜2015年ごろに日本でデバイス管理ツール「MDM」(Mobile Device Management)の市場が急成長したことだ。
iPhoneと同じMDMアーキテクチャがMacにも搭載されたのは2011年。2014年10月には「DEP」(Device Enrollment Program)という自動デバイス展開の仕組みが日本でも適応され、組織への大量導入を支える要因になった。スマートフォン管理の必要性とMDMアーキテクチャの進化に後押しされ、「企業でMacを適切に管理する」という発想がこの10年で広く浸透した。
2つ目は、2020年に登場したAppleシリコンチップの存在だ。UMA(Unified Memory Architecture)で設計した専用のチップは、CPU、GPU間で動的に処理を割り当てるため、カタログスペックでは伝わらないほど高速で処理をする。Appleシリコンチップチップの登場以降、Macの処理能力は飛躍的に向上し続けている。2020年以降に販売したMacには、AI処理に特化したNeural Engine(NPUに相当)を標準で搭載している。高性能、高効率なチップによって上がる生産性は、1日体験すれば随所で実感できるだろう。
3つ目は2021年に大きく広がった「Apple Financial Services」というAppleデバイス専用のリースプログラムだ。これによって、Appleデバイスの利用後の高い残存価値を生かし、支払額を最大25%程度抑えてMacを利用できるようになった。コスト面でMacを選択しづらかった企業が導入を踏み出すきっかけとなり、Macのコストメリットの良さが際立つようになった。
こうした背景を受けて、現在はIT、Web系企業や外資系企業を中心に部門を選ばずMacを標準の業務デバイスとして採用する企業が増加している。特に業務に使うシステムの多くがSaaSの企業は、特定のOSに依存する必要がなく、管理が容易で高性能かつ、コストパフォーマンスの良い選択肢としてMacを好むケースが多い。
「私たちはどんな方にもMacが最適、Windows PCよりMacが優れている、とはまったく思っていません。Windows PCの方が力を発揮できるという業務環境や企業も多くあるでしょう。ただ、今まであった垣根はどんどん下がってきています。Macは企業で使えないと感じている方にこそ、Macの今の強みがあれば、広い領域で有用な選択肢となり得ることをぜひ知っていただければと思います」(山田氏)
DX推進への姿勢の変化も、多くの企業がMacに注目する要因の一つだ。特に優秀なエンジニアの確保を重要な経営課題とする企業はその傾向が顕著だという。
就職シーンでは、Macの利便性を熟知している応募者にとって、Macが使えないことがネガティブな要因になり、入社の見送りにつながるケースがある。とりわけ若い世代やエンジニア職はプライベートや前職でMacを使った経験が多い。技術人材の採用が加熱する中、「Macが使えない」ことが採用活動の障壁にならないようにしたいと考える企業が増えている。
こうした現場や採用担当の声を受けて、IT系業種以外でもWindows PCとMacを従業員が自由に選択できる「デバイス選択制」を導入、検討するケースが増加している。これは採用力の強化だけでなく従業員満足度の向上にもつながり、今後ますます注目を集めるだろう。
Macのメリットを検討する上で、重要なポイントの一つが「デバイスとしての安定性」だ。Tooが提供する、MacのLCMサービス「UTORITO」(ユトリト)の運用実績からも、その実力が裏付けられる。
「UTORITOでご契約いただいているMacとWindows PCで故障の発生状況と要因を調べたところ、トラブルの発生率と要因に異なる傾向が見られました。使い方や状況により発生するアクシデンタル故障の頻度に差はありませんでした。Windows PCは多種多様なモデルが存在するため一概には言えませんが、総じてMacの場合は自然故障の発生率が低い傾向にあります」(山田氏)
安定性の背景には、Appleがハードウェアとソフトウェアを一貫して設計していることがある。システム全体を高い整合性を持って設計しているため、動作の安定性を保ちやすく、故障やトラブルが少ない。Tooの顧客からは「Macに切り替えたことで、ヘルプデスクへの問い合わせが大幅に減少した」といった声が多数寄せられているという。
Macは外出時やテレワークでも強みを発揮する。Web会議ツールを長時間利用する際も、Macはバッテリー消費が比較的緩やかだ。これはハードウェアとOSを同一メーカーが開発していることで得られる最適化の恩恵と言える。外出や出張の多い職種において、バッテリー性能の差は業務効率を大きく左右するため、移動の多いビジネスパーソンにとってMacは理想的な選択肢だ。
福田氏は「Macの大きな魅力は、使いやすさにあります」として、次のように続ける。
「業務デバイスは、従業員が業務目標を達成するための道具です。使いにくさや複雑さを感じさせるものであってはなりません。ITの専門知識がない従業員でもiPhoneのように直感的に操作できるMacは、まさに適切な業務デバイスだと考えています」
Tooではほぼ100%の社員がMacで業務を行っている。前職でWindows PCを利用してきた中途入社の従業員も、1〜2週間程度でMacでの業務に適応している。Macの魅力であるUIの一貫性やユーザー体験が、日々のスムーズな業務を後押ししている。
Macはセキュリティ対策や管理面でも強みがある。AppleはOSやハードウェアの設計段階からセキュリティ機能を組み込み、複数のセキュリティ対策ツールを後付けする必要がない。「Apple Business Manager」とMDMの統合によるゼロタッチ導入など管理者の作業を減らす仕組みも整っており、Apple製品に特化したMDMによる管理もシンプルかつ柔軟に運用できると多くのIT管理者に評価されている。
調査会社のForrester Researchが2024年に発表したレポート※1では、Windows PCと比較して、Macはデバイスのサポートおよび管理のコストを5年間で約3分の1まで削減できることが明らかになった。
※1 :Forrester Research「ビジネス向けApple MacのTotal Economic ImpactTM」
業務デバイスの選定は、従業員の生産性や働きやすさに直結する経営課題だ。「何となくWindows PC」という慣習的な選択ではなく、業務効率や従業員体験を起点としたデバイス選びが企業には求められている。
Too自身が40年近くにわたり、全社的にMacを活用しているからこそ日々感じるMacのメリットを、理論だけではなく現場に即した提案を通して伝えたいという。
「業務デバイスは、従業員の力を最大限に引き出すための道具であるべきです。いかに高性能なAIを活用していても、デバイスが頻繁にフリーズやアップデートで業務を止めてしまっては意味がありません。Macならそうした無駄を減らして、本来の業務に集中できる環境を提供できます」(福田氏)
企業が向き合うべきは、固定観念にとらわれないデバイス選択だ。従業員の力を引き出し、可能性を十分に伸ばすという視点から、より適した業務環境を再構築する時代が来ている。
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提供:株式会社Too
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2025年8月20日