硬直したレガシーシステムに悩む企業はどのようにして業務プロセスや既存システムの改善に取り組めばいいのか。業務自動化の専門企業として豊富な実績を持つAppianのアプローチから、そのヒントを探る。
複雑化したレガシーシステムや業務プロセスは企業にとって大きな課題だ。特に金融、保険業界のような規制が厳しい領域では、規制の変化への迅速な対応も求められる。
これらの課題に対して、企業はどのようにして業務プロセスの改善や既存システムのモダナイゼーションに取り組めばいいのか。本稿ではAppianの創業者 兼 チーフエグゼクティブアンバサダーのマーク・ウィルソン氏、Appian Japan カントリーマネージャーの大山博司氏、同プリンシパル ソリューション コンサルタントのデヨング・ジョールダン氏の3人に、同社のプラットフォームが企業の課題にどのようにアプローチするかを聞いた。
Appianはビジネスプロセスの自動化の専門企業として、さまざまな業界のエンタープライズ企業の業務効率化を支援してきた。政府関係機関、官公庁、銀行や保険、製造や製薬業界での評価が高く、ミッションクリティカルな大規模システムのモダナイゼーションでも多くの実績を持つという。
ウィルソン氏は、「レガシーシステムの多くは優れた機能を持っており、それ単体が大きな問題を抱えているわけではない」と指摘する。問題の本質は、近年のビジネスのニーズやスピードに対応する柔軟性に欠けていることだ。その解決のために既存システムを全面的に置き換えるのはリスクが高く、それまでの多大な投資が無駄になる可能性があるという。
同氏は、多くの企業が特定のタスクの自動化に焦点を当て過ぎている現状も問題視している。RPA(Robotic Process Automation)を活用したタスクの自動化は、局所的な業務効率化には有効だが、異なる業務を統合したりビジネスプロセス全体を最適化したりする価値を見過ごす可能性もあるという。
「企業が目指すべきは、ビジネスプロセスの効率化と成果の向上を通じて『真の価値』を創造することです。そのためには、個別のタスクを自動化するというアプローチにとどまらず、複数のプロセスやアプリケーションを統合して、組織の戦略的な目標達成を支援する必要があります。その上で、運用コストの削減と同時に新規顧客のオンボーディングや保険金請求のようなプロセスの高速化が求められているのです」(ウィルソン氏)
Appianの「Appian AI Process Platform」(以下、Appian Platform)は、さまざまなシステムをまたいで業務プロセスを自動化できるローコード開発プラットフォームだ。ウィルソン氏によれば、その特徴は「既存システムの資産を残しつつ、ユーザーと既存システムの間に『アジリティレイヤー』を構築すること」だという。アジリティレイヤーとは、ユーザーと既存システムの間に構築される柔軟性の高い中間層であり、これによって安全かつ迅速に複数システムの統合や拡張を行える。
アジリティレイヤーは、複数システムを操作できる統一されたユーザーインタフェース(UI)とデータ連携のハブ機能を提供する。既存システムの複雑さや連携の難しさを吸収し、新しいフロントエンドやサービスとの連携も円滑に実現できるようになる。
Appian Platformのアジリティレイヤーを支えているのがデータファブリック技術だ。Appianのデータファブリックは、複数のデータソースからのデータの「読み取り」と「書き込み」の両方をサポートする。データレイクやデータウェアハウス製品を導入してデータを1カ所に集める手間をかけずに、システム間のデータ連携を可能にする。
この技術によって、ユーザーは複数のシステムにまたがる単一のデータビューを得ることができ、分析プロセスも改善できる。CRMやERPなどを業務ごとに使い分けている企業にとって、このようなデータの統合は効果的だ。このアプローチは、企業の合併や買収を迅速に進める上でも有効だとウィルソン氏は言う。
「Appian Platformを使えば、ユーザーはダッシュボードやレポートの変更を、数週間や数カ月ではなく、分単位で素早く行えます。M&Aによるシステム統合でも、既存システムを活用しつつコストをかけずに統合できます」
法規制が厳しい金融や保険などの業界は、規制の変化に素早く対応しつつIT部門が適切にガバナンスを統制できる仕組みが求められる。これらの業界においては、KYC(顧客確認)やAML(マネーロンダリング対策)など、特定の課題に対応するためのソリューションが乱立している。
システムのモダナイゼーションに必要なのは、ピンポイントの問題を解決するシステムではなく、企業全体の業務プロセスの統合だ。「Appian Platformは、企業における課題解決のレベルを一段上げ、ゴールが何かという点に常にフォーカスしてきた」とウィルソン氏は強調する。ゴールに向かってどのようなプロセスが必要なのかを考え、法律や協定による規制はそのプロセスの制約条件として扱う。このようなアプローチを取ることで、規制に順守する仕組みを業務の中に自然な形で盛り込める。
このアプローチは、金融や保険だけでなく、公共機関向けのシステムでも効果的だ。大山氏は、「Appian Platformの強みの一つは、グローバルに展開する公共機関に長年にわたってサービスを提供してきたことです。この強みを生かして、日本市場でも公共機関に積極的にアプローチします」と語った。
進化するAI技術をどのようにシステムに取り込み、顧客にどのような価値を提供するのかが企業の課題となっている。AIの導入については、Appian独自の哲学があるとウィルソン氏は言う。それは「AIにはプロセスが必要」ということだ。
Appian Platformは、システム化されたプロセスがAIに構造とデータを与えることで、AIが誤った判断をするハルシネーションのリスクを軽減する。AIによる判断の経緯を記録した明確なログを提供して、セキュリティや法規制に関する懸念も払拭(ふっしょく)する。「AIはビジネスの目標達成に役立つときにこそ、真の価値を発揮します。プロセスとの連携がなければ、AIは単なる楽しい実験に過ぎません」とウィルソン氏は強調する。
AIの導入には、データ流出に関する懸念もある。これに関してAppianは「プライベートAI」という考え方を強く推奨している。「これは、AIが処理するデータが他の情報と混ざることなく、それを提供した組織だけがアクセスできる仕組みです」(ウィルソン氏)。プライベートAIを確立することで、意図しないデータの混合や漏えいを防止できる。
Appian Platformのユーザーは、組み込まれている独自のAI機能に加えて、他のAIソリューションをAppian Platformのプロセスにプラグインして利用できる。同社の顧客の約80%が既にAIを本番稼働させているか、導入の準備をしているという。
日本市場でも多くの顧客がAIの導入に関心を示しているものの、実際の導入はまだ計画段階にあると同社はみている。大山氏は、「今後、世界での豊富な事例を取り上げながら業務プロセスの中にいかにAIを組み込んで価値を提供できるのかをアピールし、日本での導入も推進します」と意欲を見せる。
レガシーシステムのモダナイゼーションにしても、AIの導入にしても、技術的な課題と並んで障壁になるのは、現状を変えることへの人々の抵抗感だ。このような抵抗感を和らげ、新しいシステムを企業に浸透させるにはどうすればよいのか。
そのためには2つの要素が重要だとジョールダン氏は言う。一つは、まず小さな成功から始めること。もう一つは経営層がリーダーシップを取って機運を作ることだ。
「最初から大規模な改修に着手するのではなく、まずは一部門の小規模なシステムからスタートして成功事例を積み上げることが大切です。その成功が経営層を動かし、本腰を入れてチャレンジするという機運につながります。この最初の成功を素早く効果的に成し遂げられることと、その成功体験をミッションクリティカルなシステムに広げていけることが、Appian Platformの優位性だと考えています」(デヨング氏)
ウィルソン氏は最後に、「世界中の何百もの企業が長期的なデジタルトランスフォーメーションにおいてAppianとパートナーシップを組んで大きな価値を創出しました。そのトランスフォーメーションの実現方法は、お客さまごとに異なりますが、私たちは柔軟性とスピード感を持ってお客さまの重要な問題に立ち向かってきました。これからも革新性を発揮し、ミッションクリティカルなシステムの変革をお手伝いします」と日本の企業へのメッセージを述べた。
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提供:Appian Japan合同会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2025年8月31日