企業で導入が進む「Microsoft 365 Copilot」。「より早く、効果的に業務で活用したい」という声も聞こえ始めた。どうすれば投資に見合う生産性向上を実現できるのか。Microsoft製品の専門家に話を聞いた。
「『Microsoft 365 Copilot』(以下、Copilot)を導入したものの、文書作成支援にとどまっている」「AIを業務に生かしたいが、何から始めればよいか分からない」――こうした悩みを抱える中堅・中小企業が増えている、とアバナードの上田歩央氏は語る。
さまざまな経営課題に対応するため、中堅・中小企業はデジタル化やAIの利用による生産性向上に取り組んでいる。しかし、AIを導入しても、期待するような効果を得られていない企業があるのが実情だ。上田氏によれば、その背景には中堅・中小企業特有の課題が立ちはだかっているという。
中堅・中小企業の課題として上田氏が強調したのが、深刻な人材、スキル不足だ。労働人口減少によって即戦力の確保が困難になっている。IT部門の人員は限られており、デジタル化やAIに精通した専門人材が社内にいないケースもある。賃金の見直しによって求める人材を雇える可能性もあるが、中堅中小企業にとってはコスト増という重荷になる。
中堅・中小企業のIT部門は、予算の厳しい制約にも直面している。原材料費の上昇や為替変動、各種規制への対応などでコストが増加しているため、大企業のようにシステム開発への高額な投資は困難だ。限られた予算でデジタル化やAIの利用を進めなければならない。
人手不足を補うためにBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)に頼ることも選択肢に挙がるが、自社に業務のノウハウが蓄積されないというリスクを伴う。「自社のケイパビリティーを確保した上でAI活用やクラウド移行に取り組みたい、というニーズはかなり大きい」と上田氏は述べる。
中堅・中小企業のAI活用支援を手掛けるアバナードには、これらの課題に関する相談が数多く寄せられている。上田氏によると、多くの中堅・中小企業がAI活用の必要性は理解しているものの、業務への実装段階でつまずいているという。「文書作成支援や社内情報を横断検索するAIチャットといった基本的な使い方を試しているものの、生産性向上にどう活用すればよいか迷っている企業が多い」と実態を明かす。
これらの課題に対して、アバナードは独自のアプローチで解決策を提供する。同社はAccentureとMicrosoftの共同出資によって2000年に設立され、2025年で25周年を迎える。Microsoft製品の専門家6万人を擁し、26カ国90拠点で7000社以上にサービスを提供する、Microsoftの世界最大規模のパートナー企業だ。
2005年に設立された日本法人は、20周年を迎えた。これまでは主に大手企業を顧客としてきたが、ここ数年で中堅・中小企業への支援を本格化させている。
「中堅・中小企業も大手企業と似た課題を抱えていますが、解決へのアプローチや投資規模が異なります。私たちはMicrosoftの知見と導入経験を生かして中堅・中小企業の成長を後押しし、日本を活性化していきます」
同社が中堅・中小企業向けに展開しているサービス群が「Hero Offers」だ。大手企業の支援で蓄積したベストプラクティスを中堅・中小企業でも活用できるようにメニュー化したもので、2025年に提供を開始した。
Hero Offersは2つの構成に大別される。一つは「エバリュエーション」で、半日〜2週間の短期間でシステムのトライアルを実施する。もう一つは「アクセラレーター」で、3〜5週間でより本格的なトライアルを実施し、本番導入への道筋を立てる。
「まず『とにかくやってみる』機会を提供して、その効果を実感していただくという点を重視したメニュー群になっています。Microsoftの製品はほぼ全て網羅しており、AI製品の導入だけでなく、MicrosoftのERPやCRMの導入、オンプレミスで動いているシステムの『Microsoft Azure』への移行といったものまで、幅広いサービスを包含しています」
Hero Offersは、技術導入だけでなく戦略策定段階から包括的にサポートを提供する。
「お客さまの目的は、AIの導入ではなく売り上げの拡大や業務改善にあります。私たちは、目的達成に向けて100種類以上のサービスメニューから最適なものを選択して技術選定から実装、運用、定着まで一貫してサポートします」
アバナードはAI活用の前提となる「データ基盤の整備」の支援も可能だ。データ基盤を構築せずにAIを導入する企業もあるが、「Garbage In, Garbage Out(ごみを入れればごみしか出てこない)」の原則はAIも同じだ。部門ごとにデータが散在し、サイロ化しているのでは、AIは真価を発揮できない。まずは自社のデータ資産を棚卸しすることが成功への近道となる。
「データがどこにどのような形で存在し、どう活用できるかという基盤部分をしっかり整備することからプロジェクトがスタートすることもあります。結果的に、AI製品だけでなく『Microsoft Fabric』や『Microsoft Power BI』でのダッシュボード開発などにつながるケースも多いのです」
さらにAI活用が進み、Microsoft AzureでのRAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)の構築やAIエージェントの開発といったニーズが発生した場合も、企画から設計、構築まで一貫してサポートする。
アバナードは、単純なアウトソーシングではなく内製化支援に重点を置いている。クライアントの自立を促すように支援することで、「自社にノウハウが蓄積されないのでは」という懸念を払拭(ふっしょく)する。現場の実情を詳細に把握することがポイントだ。理想的な業務フローを押し付けるのではなく、現在の業務の実態を理解した上で実現可能かつ効果的な改善策を提案する。
「内製化を成功させるには、導入時から顧客企業の実務担当者やシステム利用者と密に連携し、運用ノウハウを社内に蓄積できるように支援することが重要です。単にシステムを導入して終わりではなく、企業が自立して運用・改善できる体制づくりまでサポートします」
Hero Offersは既に100を超える企業から引き合いを受けており、市場ニーズの高さを裏付けている。最も多い相談はCopilotの効果的な使い方に関するスキルトランスファーで、次いで業務適用シナリオでの概念実証(PoC)支援が多いという。
相談者の多くは情報システム部門で、「Copilotの導入効果を詳細に把握したい」「導入したが社内での定着に課題がある」といった内容が大半を占める。
同社の中堅・中小企業向けソリューションの強みは4つの要素に集約される。第一に大手企業向け市場で培った20年間の経験と知見、第二にMicrosoft製品を最大限に活用したソリューション、第三に中堅・中小企業向けに特別設計されたサービスメニュー、第四に戦略策定から運用定着まで一貫したDX、AI活用支援だ。
変化の激しい経営環境において、中堅・中小企業が抱えるデジタル化やAI活用の課題に対し、大手企業への支援で得た知見を提供するアバナード。IT製品の単なるサプライヤーではなく、中長期的なパートナーとして企業の成長を継続的に支援する同社のアプローチは、人材不足、予算不足に悩む中堅・中小企業にとって有効な選択肢となるはずだ。
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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2025年10月2日