IT人材不足による大型案件の遅延や予算超過が課題となる中、注目を集めるのがAIエージェントの活用だ。AIエージェントを大規模システム開発にいち早く導入しているULSコンサルティングが、その具体的な効果と今後の展望を語った。
IT人材の不足は深刻さを増しており、システム開発プロジェクトの開発遅延や予算超過の影響が顕在化している。特に大規模基幹システムの刷新においてはプロジェクトの組成自体が困難であり、ビジネス成長を阻む要因となっている。
こうした状況を打破する手段として注目されるのが、人の代わりに自律的に作業を遂行するAIエージェントだ。これまでも生成AIを利用してシステム開発を効率化するツールは存在したが、AIエージェントは「一人のエンジニア」としてプロジェクトに参画できる点で決定的に異なる。
AIエージェントは、システム開発における人材不足の問題を解決できるのだろうか。
ITmedia エンタープライズが開催したイベント「Enterprise IT Summit 2025 夏」(2025年8月19〜22日開催)に登壇したULSコンサルティング(取材時はウルシステムズ)の桜井賢一氏(取締役副社長)が、「Devin活用事例に学ぶ:生産性15倍! AI駆動開発で描くエンタープライズITの未来」というテーマで話した内容を見てみよう。
ULSコンサルティングは技術力を強みとして、戦略策定、業務改革、IT構想策定、システム開発などを手掛けるコンサルティング会社だ。
IT人材の不足は近年、プロジェクト体制構築の遅れや開発者単価の高騰化を招いており、大企業の基幹システム構築刷新プロジェクトは開発遅延や予算超過が常態化している。
「仕様変更の調査に2週間、軽微な修正でも数カ月の期間がかかり、費用は数百万円に上る、こうした非効率性がエンタープライズITの現場では日常的に発生しています」
桜井氏は、こうした状況をAIエージェント「Devin」によって打破できると語る。DevinはCognition AI社のクラウドサービスで、自律的に計画を立て、人の代わりに一連のシステム開発タスクを遂行する「AIソフトウェアエンジニア」だ。
自然言語で指示すると、Devinは作業計画を立てて、設計や実装作業、テストやデバッグを実行し、成果物をアップする。人が成果物をレビューして問題がなければ採用する。これがDevinを利用したシステム開発の流れだ。
ULSコンサルティングの開発プロジェクトで、比較的容易な機能の設計、実装、テストをDevinで実施したところ、人が担当すると3日かかる作業が5時間で完了し、人が設計、実装した場合の約5倍の生産性を実現したという。
「5時間と言っても、Devinが実際に稼働した時間はわずか20分程度で、残りの時間は人が指示を出したり、成果物をレビューして修正指示を出したりした時間です」
Devinは、まず人の指示を「Devin's Brain」が解析し、次に開発環境「Devin Machine」を起動してソースコードや設計書の情報を取得し、コーディングやテストを実施する。起動できるDevin Machineの数に制限はないが、ULSコンサルティングの経験上、指示やレビューなどの作業を考慮すると、3つのDevin Machineを並行して稼働させたケースが最も効率が良かったという。
「Devinを単独で作業させるだけでも生産性が5倍になり、さらにDevinを3つ並行で作業をさせれば生産性が15倍になります」
従来の生成AIを利用したツールとAIエージェントのDevinはどこが違うのか。桜井氏は次のように整理する。
「Devinはクラウド上で無限に“増員”できるプロフェッショナルエンジニアチームだと考えています。100人月の開発プロジェクトを100人投入して1カ月で完了させるなんて冗談を言うことがありますが、Devinを活用すれば本当に実現可能かもしれません」
続いて桜井氏は、Devinの活用事例を2つ紹介した。
1.20画面程度の中規模システムの新規開発プロジェクト
通常工程で人が対応した場合の工数見積もりは約50人月で、要件定義と設計が15人月、実装とテストが35人月という内訳だった。実装とテストの工程にDevinを導入したところ、約10人月分のコストを削減できた。
2.基幹システムの大規模改修プロジェクト
画面設計書やAPI設計書に詳細が記載されていた。しかし設計書は俗に言う「Excel方眼紙」で作られており、セル結合や画像として貼り付けられた画面イメージ、さらに情報が複数のシートにまたがって記載されているなど、Devinが正確に理解できるかどうかは難しい状態だった。
SQLなどは詳細に記述されており、バックエンドのAPI実装は70%の工数を削減できた。フロント画面は手動による対応工数が多いため削減率は10%にとどまったが、プロジェクト全体では30%以上の工数を削減した。
DevinはExcel方眼紙の設計書を理解するためにPythonのコードを自分で作成し、内容を読み込んで改修した。「われわれはDevinに『Excelの設計書を読んで改修してください』と指示しただけです。Devinは自律的にPythonのコードを書き、Excelから必要なデータを読み取りました。これには本当に驚きました。Devinは本当に“エンジニア”なんだと確信しました」
次に桜井氏は、Devinが活躍するユースケースを4つ紹介した。特に、COBOLやVisual Basic 6.0で書かれた大規模なレガシーシステムの改修にDevinを活用できないかという問い合わせが数多くあるという。
| ユースケース | Devinでできること |
|---|---|
| 1.レガシーシステムのモダナイゼーション | 古い言語やフレームワークからの乗り換え、大規模リファクタリングによる保守性向上、利用製品のバージョンアップ対応。 |
| 2.定型業務の自動化 | CI/CDエラーの発見や自動修正、軽微なバグ対応やチケット処理の自動化、人的な工数がかかる繰り返し業務を削減する。 |
| 3.仮説検証サイクルの高速化 | 迅速なPoC(概念実証)の実施、プロトタイプによる要件定義の効率化、MVP(Minimum Viable Product)を短期間で開発、デプロイする。 |
| 4.データ活用の効率化 | データウェアハウスの移行、データの抽出や変換などの自動実行、レポートやダッシュボードを自動生成する。 |
Devinは設計やコーディング、テスト、デプロイはもちろん、各ツールの操作やドキュメント作成、既存システムの調査にも利用できる。特に、大規模なレガシーシステムの改修で役立つ機能は2つある。
1.「DeepWiki」
リポジトリから読み込んだソースコードを基に、使用されているフレームワークやソースコード間の関係などシステム構成に関するドキュメントを自動生成する機能。「DeepWikiを活用することで、百万〜千万ステップ規模のソースコードを調査や分析する作業効率が飛躍的に向上します」
2.「Ask Devin」
自然言語による質問に対して複数のリポジトリを横断し、ソースコードを調査する機能。Ask Devinを使えば、開発当時のメンバーが残っていない現行システムの仕様調査も可能になる。「内製化に取り組む企業の中には、Ask Devinを利用する目的でDevinの導入を検討しているところもあります」
桜井氏は、IT業界で長く続いてきた「人月×単価」による価格モデルがDevinの登場によって崩壊するのではないかと予測する。今後は、システムが創出する価値によって対価が決まる時代になるというのが同氏の考えだ。
「システムの対価は、売上増加や業務効率化に対する成功報酬として支払われるようになるでしょう。従来2年かかっていたプロジェクトが、Devinを活用すれば1年でリリースできるとしたら、作業量は半分でも市場価値や機会損失の回避といった大きな果実が得られます。この価値にどう値付けするか、これはIT業界全体の課題です」
さらに桜井氏は、ベンダー自身のDXが遅れていたことに気付いたという。
「私たちは顧客のDXを支援する立場にいながら、自分たち自身がまだ十分にDXを実現できていなかったのです。Devinの登場で、その現実を目の当たりにしました」
「AIと一緒に仕事をする、そんな時代がまさにやってきます。こうしたパラダイムシフトが企業にどのような影響を与えるのか、考えるだけでワクワクします。皆さんと一緒に、新しい世界を作ってシステム業界を根本から変えたいと考えています。お気軽にお問い合わせください」
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提供:ULSコンサルティング株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2025年11月4日