「属人化」「ブラックボックス化」をAIエージェントで解決 大和総研に聞く、レガシー刷新のアプローチ「Any-to-Any」でコード変換 技術的負債を残さないマイグレ/モダナイ実践法

ビジネスとITが直結する今、老朽化したレガシーシステムのマイグレ/モダナイは急務となっている。だが、人手不足、属人化、ブラックボックス化といった課題に直面し、取り組みは困難を極めている。この難局を打破する一つの解として大和総研が提唱するのが、「AIエージェント」を軸としたアプローチだ。

PR/ITmedia
» 2025年12月01日 10時00分 公開
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 ITがビジネスの競争力を左右する今、老朽化したレガシーシステムのマイグレーション/モダナイゼーションは喫緊の経営課題となっている。特に、生成AIの進化や経営環境の激しい変化を背景に、レガシーシステムからの脱却は避けられない状況だ。だが、多くの企業は人手不足、属人化、ブラックボックス化といった課題に直面し、移行は困難を極めている。

 どうすればこの難局を打破できるのか。一つの解として大和総研が提唱するのが、「AIエージェント」を軸とした自動化、自律検証による新たなマイグレーション/モダナイゼーションのアプローチだ。どのように実現するのか、大和総研の担当者に話を聞いた。

レガシー刷新が急務となる理由 コスト・人材・技術的負債の現実

 レガシーシステムの刷新が急務である背景には、外部環境の変化と企業が抱えるリスクの2つがある。外部環境の変化には、ベンダーの製品やサービスのマイルストーンがある。例えば、富士通はメインフレームの新規販売、保守の終了を明らかにしている。SAPは「SAP ERP 6.0」の標準保守サポートを2027年末で終了する。こうしたベンダー側の動きも、ユーザー企業が既存システムを「刷新せざるを得ない」ことの大きな動機付けとなる。

ALT 大和総研の長谷川晃紀氏(企業システム事業本部 プロダクトソリューション部 プロダクト企画課長)

 大和総研の長谷川晃紀氏は「レガシーシステムを抱える企業が特に大きなリスクとして懸念しているのが、コスト増と技術者不足という内部リスクです」と指摘する。

 メインフレームの維持コストは、技術者不足に伴って保守料金が高騰する傾向にある。レガシーシステムの維持コストが投資対効果、すなわち業務を遂行する上でのコストとして見合わないケースも出てきているという。

 技術の継承が進んでいないという深刻な課題もある。COBOLなどの知識を持つ熟練技術者がリタイアする中、「誰も保守を担えなくなるのでは」との不安感があり、それが刷新を強く推し進めている。

 このような課題を抱えるのはメインフレームだけではない。大和総研の下野将己氏は「レガシーシステムは、広い意味では特定の言語やOSで動いている古いシステム全般も該当します。分散システムでも、OSやソフトウェアが古くなっているものや古いバージョンのJavaで構成されているようなシステムです」と説明する。

 これらのシステムの特徴は、古いバージョンの言語で構成されており、設計書がない、あるいは中身がブラックボックス化していることが多い。運用保守できる人材が社内に少ないことも特徴として挙げられる。

経営判断を阻む壁と“リホストのわな” 成功の鍵は領域ごとの戦略

ALT 大和総研の下野将己氏(企業システム事業本部 プロダクトソリューション部 課長代理 主任データサイエンティスト)

 レガシーシステムの刷新において直面する課題は多岐にわたる。中でもIT部門が抱えているのが、経営層の意思決定を促すための「材料がない」ことだ。刷新対象のシステムがどう動いているのかが分からず、どこをどう変えるべきかが不明瞭なため、刷新にどれくらいの手間とコストがかかるのかを把握できない。経営層がレガシーシステム刷新の必要性を認識していたとしても、刷新プロジェクトを承認する具体的な材料がない。

 そのため、まずは現状の可視化(アセスメント)が求められる。可視化しなければ既存システムをリビルド、リライト、リホストのどの方式で移行するのかなどを決められず、議論は停滞してしまう。

 移行プロジェクトの推進にも困難が伴う。アプリケーションをクラウドネイティブ化して作り替えるようなモダナイゼーションには莫大(ばくだい)なコストと時間がかかる。そのため多くの企業は安価な「リホスト」を選択しがちだ。リホストはプラットフォームのみを変更するので言語や業務ロジックは残ったままとなり、技術者不足や拡張性の問題といったレガシーシステムの根本課題は、先送りされるにすぎない。

 「オープンレガシー」な領域はバージョンアップの優先順位が下がり「塩漬け」にされるシステムも多く、技術的な負債が蓄積される傾向にある。バージョンアップにはセキュリティの向上などのメリットがあるが、ビジネス貢献という観点から優先順位が上がりにくい。

 下野氏は、これらの課題を乗り越えてレガシーシステムの刷新を図るには、「競争力のある領域と、そうでない領域を明確に分ける必要があります」と指摘する。競争力に直結する、「人が深く思考する戦略的領域」は、コストと時間をかけてでもリビルドやモダナイズを推進する。競争力を生まないシステム維持や単純な移行に該当する「機械的な移行領域」は、できるだけコストを抑えて移行を効率化するという戦略だ。

AIエージェントが現新一致を自律検証

 そこで大和総研が提案するのが、AIエージェントを活用した自律検証型のマイグレーションツール「Smartrans」(スマートランス)を活用したアプローチだ。同社の池田恭彬氏は「最大の特徴はコード変換だけではなく、AIエージェントが自律的に検証を繰り返しながら出力結果を現行システムと一致させる『現新一致』まで推進することです」と説明する。

 レガシーシステムで運用されているバッチ資産は、特定のインプット(A)に対して処理が実行され、特定のアウトプット(B)を出力する。Smartransは、インプットAからアウトプットBを導くバッチ資産に対してAIエージェントが自律的に古いコードを変換し、出力されたアウトプット(B′)と現行のBを比較する。

ALT Smartransの画面(提供:大和総研)《クリックで拡大》

 差分があれば、AIエージェントが原因を分析して再度変換を試みるプロセスを繰り返す。この自律検証機能により、従来人手と時間を要していた単体テストや現新一致の検証プロセスがコンバートプロセスに組み込まれてマイグレーションを自動化、効率化できる。

 Smartransは、ルールベースの変換ロジックではない。「生成AIを中心とした処理方式を採用しているため、『Any-to-Any』でコンバート前後における言語の制約がありません」と池田氏は説明する。これによって独自のコーディングルールやその企業の「癖」があるレガシー資産に対しても、適宜チューニングすることで高精度に対応できる。

 「Smartransのもう一つの強みは、ランタイムの制約がないことです。特定のプラットフォームでしか動かないベンダーロックインにつながるという制約がありません」(池田氏)

 Smartransは、従来のツールで生成されがちだった保守性・可読性の低い資産を排除し、プログラムやジョブの単位で保守性の高いモダンアーキテクチャに最適化する。AIエージェントにコードの変換単位を委任することで、複数の旧プログラムを最適な新プログラム群に分割・変換する「N対Mコンバート」を実現する。

 システム資産を解析してモジュールやデータ間の依存関係をグラフ形式で整理した結果を基にした設計ドキュメントの自動生成も可能だ。

 「単にコードにコメントを付与するようなものではなく、システム全体を俯瞰(ふかん)してどの塊で見ると人が分かりやすいかという観点でドキュメントを作成するため、将来的なブラックボックス化を防ぎ、保守・運用の効率化と標準化を支援します」(池田氏)

ALT Smartransの概要(提供:大和総研)《クリックで拡大》

レガシーシステムの刷新をPoCから実現まで一気通貫で支援

 大和総研は、レガシーシステムのモダナイゼーションに関するトータルサポートを提供している。戦略的なリビルド領域からSmartransを活用したリライト領域まで、大和証券向けシステムなどでの対応で培ったスキルとノウハウを生かして一気通貫で支援する。Smartransは、大和総研がモダナイゼーションを支援する中での有力な手段、すなわちレガシーシステムをリライトする際の強力な「武器」として位置付けられる。

ALT Smartransを使ったマイグレーションプロセス(提供:大和総研)《クリックで拡大》

 レガシーシステムの中からリライト対象となる部分を見極め、続いてSmartransの適用可否を確認するためのヒアリングを実施する。その上でレガシー資産を用いたPoC(概念実証)を通じてSmartransの有効性を確認する。

 「Smartransの検証事例は増加しており、特に大手企業の重厚長大なシステムを対象とした引き合いが多くなっています」(長谷川氏)。現状のPoCではシステムがブラックボックス化しておりどこから手を付けたらいいか分からない顧客からの要望に対し、ドキュメント化してシステムを可視化したりシステムの業務プロセス理解やコード解釈、モジュールやデータ間の依存関係の把握といったアセスメントを実現したりするためにSmartransを活用しているという。

 大手企業によるEOS(保守サポート終了)対応にSmartransを活用している事例もある。古い言語から新しい言語への変換だけでなく、プラットフォームも変更するようなオープンレガシーの領域に対応するものだ。

大和総研が目指す「技術的負債を残さない」未来

ALT 大和総研の池田恭彬氏(企業システム事業本部 プロダクトソリューション部 プロダクト推進課長 チーフグレード 主任データサイエンティスト)

 Smartransは今後、精度向上や自律検証範囲の拡大、機能バージョンアップなど、AIの発展とともに進化する。「現在は主にバッチ資産にフォーカスしていますが、今後はAPIサーバなど、定常的に対応が必要なシステムへの対応も拡充します」と池田氏は述べる。

 大和総研は、以前は困難とされていたAIによる高精度なコード変換が生成AIの進化によって現実のものになりつつあると確信している。レガシーシステムが企業の競争力やビジネスの足かせとなる状況をSmartransを通じて打破し、企業が本来注力すべき革新的な領域に経営資源を振り向けられるような支援を目指す。

 「われわれのメッセージは、単にAI技術を適用することではなく、顧客が移行を断念する最大のネックとなる『コストの壁』を下げることにあります。Smartransを活用して、今まで塩漬けや諦めていた部分を加速してマイグレーションを進め、『技術的な負債を後世に残さないこと』がテーマです」(長谷川氏)

 「コンバートは『使いにくいものができるのでは』とのイメージを持たれがちですが、Smartransは企業の独自ルールや使いやすい形に柔軟に対応できます。まずはお試しいただき、未来を一緒につくっていきたいですね」(池田氏)

 「Smartransの最終的なゴールはレガシー脱却だけではなく、その先のビジネス成長と業務価値の向上です。技術的な負債を後世に残さないために、まずはPoCで貴社のシステムの可能性を可視化しませんか」(下野氏)

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提供:株式会社大和総研
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2025年12月31日