シスコが25年ぶりの大変革 顧客価値を最大化する「新パートナープログラム」の全貌AI時代のITインフラを支えるパートナーが見つかる

AIの普及に伴いITインフラは複雑化し、企業が最適な技術を選択・運用するハードルが高まっている。この課題に対し、Cisco Systemsはパートナーの評価軸を「売り上げ規模」から「顧客への提供価値」へと転換した。パートナーの専門性や支援品質を可視化する新制度が、顧客のIT環境をどう変えるのか。

PR/ITmedia
» 2026年01月27日 10時00分 公開
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 AIへの対応やセキュリティ対策の要請など、ITインフラの在り方が変わる中、Cisco Systems(以下、シスコ)がパートナープログラムを約25年ぶりに全面刷新した。2026年1月25日に開始した新プログラム「Cisco 360 パートナープログラム」(以下、Cisco 360)は、その名称が示すように顧客を全方位で支援することを目指し、パートナーの評価軸を売り上げ重視から顧客価値重視に転換する。

 Cisco 360(シスコ スリーシックスティ)はどのようなものなのか。刷新のポイントはどこにあるのか。シスコシステムズの濱田義之氏と吉井彩乃氏に狙いを聞いた。

photo Cisco Partner Summit 2024で発表された「Cisco 360」(出典:Cisco Blogs)

「ハードウェア販売」前提の評価体系から脱却

 プログラム刷新の背景には事業構造の変化がある。ルーター製品を主軸に創業したシスコは、移ろう市場ニーズへの対応や、長年にわたる積極的な買収戦略によって事業領域が多角化した。2024年のSplunk買収はその象徴だ。ネットワーク事業の枠を超えてセキュリティやデータ分析などの領域も網羅する。

photo シスコシステムズの濱田義之氏(社長執行役員)

 収益構造の変化も顕著だ。ソフトウェアビジネスを拡大させ、サブスクリプションサービスの売上額が全体の5割を超えている。市場環境も変わり、AIワークロードへの対応やセキュリティ強化の需要が急増した。サービスやソフトウェア中心のビジネスになった今、ハードウェア販売額が軸の評価体系でパートナーの専門性を正当に評価するのは難しい。

 濱田氏は「顧客への貢献度や支援の質といったパートナーの『汗のかき方』を、従来の販売尺度では適正に評価できませんでした」と課題を明かす。吉井氏も「ハードウェアの導入だけでなくその後のフェーズまで見据え、パートナーとシスコが一体となって継続的な価値を提供することが不可欠になりました」とプログラム刷新の必然性を語る。

日本独自のパートナービジネスを評価の土台に

 Cisco 360の核は、評価軸を再定義した新指標「Partner Value Index」(以下、PVI)だ。PVIは、パートナーの実力をスコアリングする4つの項目――売り上げ実績を測る「Performance(パフォーマンス)」、認定資格や技術力を示す「Capabilities(ケイパビリティー)」、案件獲得や契約更新への貢献度に基づく「Engagement(エンゲージメント)」、カスタマーサクセスなどの運用成熟度を表す「Foundational(ファウンデーショナル)」から成る。

 PVIに基づき、「Security」「Networking」「Cloud + AI Infrastructure」「Splunk」「Mass-Scale Infrastructure」を含む7つのソリューション領域ごとにパートナーの実績を精査する。評価数値に応じて、PVI 5.0以上のパートナーを「Cisco(Portfolio)Partner」、7.5以上のパートナーを最上位の「Cisco Preferred」と認定し、二段階のDesignation (称号)で運用する仕組みだ。吉井氏は「認定資格の取得、トレーニングの受講など、パートナーが自らの血肉とした技術力や顧客に寄り添うために構築した体制を正しく数値化します」と説明する。

photo Cisco 360の概要(提供:シスコシステムズ)《クリックで拡大》

 パートナープログラムの刷新に当たってシスコが力を入れたのは、既存パートナーとの対話だ。Cisco 360の開始まで1年以上の準備期間を設けた点にその姿勢が表れている。濱田氏は「パートナーエコシステムはシスコにとって最大の財産です。これを自分たちの手で壊すわけにはいきませんでした」と背景を語る。

photo シスコシステムズの吉井彩乃氏(執行役員 パートナー事業統括)

 パートナーとの対話によって生まれたのが、日米におけるIT人材の所在の違いを踏まえてパートナーの介在価値を評価する指標だ。米国は顧客企業にいるIT人材による内製化が主流だが、日本はIT人材がシスコのパートナーであるシステムインテグレーター(SIer)に所属する状況も多い。濱田氏は「日本は、全国規模でシステムを支えるSIerの役割が大きいため、パートナーの介在価値を正当に評価できなければ日本の実態に即したプログラムにはなりません」と説明する。

 吉井氏も「日本はパートナー独自のサービスにシスコ製品を組み込んで提供するケースが主流です。日本特有の商習慣や提供モデルを、正当な評価対象として反映させました」と、サービス提供モデルへの配慮を示す。

AI対応のインフラを描く「構想力」を強化

 パートナーに求められるのは、数年先のビジネスニーズから逆算してインフラを再定義する構想力だ。ネットワーク環境の更新は、5年から7年の長期スパンになることが多い。濱田氏は「ネットワーク環境の更新機会は限られているからこそ、将来的なAIトラフィックの増大を見越したアーキテクチャをデザインすることが不可欠です」と指摘し、コロナ禍後のオフィス回帰で顕在化したインフラの課題を教訓として挙げる。

 「『会社が一番仕事をしにくい』という声が多く上がったのは、フリーアドレスやWeb会議の普及を想定していないネットワーク設計だったためです。一部のWi-Fi機器を更新しても、その先のコアネットワークやWANがボトルネックになって十分なパフォーマンスを発揮できませんでした」

 AI活用ではインフラがボトルネックとなる事態を防ぐため、将来的な負荷を想定した「AI対応」のネットワークを構築する必要がある。Cisco 360は、パートナーの専門性を高めるための支援体制を整えている。検証用の機材提供やテスト環境でのトライアル支援に加え、参加者が手を動かしながら実践的なスキルを習得するハンズオントレーニングも実施する。さらに、顧客の基盤データを活用し、インフラの更新時期など最適なタイミングで「AI対応の提案シナリオ」をパートナーが提案できる仕組みも備えている。

 AIインフラを構築する上で不可欠な「データの安全性」という視点について、濱田氏は「機密データをパブリッククラウドで学習させることは避けたいというのが企業の本音です。エッジに配置する機能やクラウドとエッジ間のアーキテクチャをどのように設計するかが重要になります」と話し、企業固有のデータを安全かつ効率的に運用するためのインフラ構築こそが、パートナーの真の役割だと強調する。

 日本市場は、シスコのグローバル戦略において重要な位置を占めている。最新のAIセキュリティソリューション「Cisco AI Defense」の先行展開先に、米国と並んで日本が選ばれたのはその証しだ。

 日本はグローバルから見てAIの推進と規制のバランスが取れていることに加え、労働人口の減少という深刻な課題から「AIを事業の根幹に据えざるを得ない国」として戦略的拠点に位置付けられている。シスコも、セキュリティ特化型の大規模言語モデルと専門チームである「Foundation AI」の設置やAIガバナンス協会への参画などAI領域への投資、活動を拡大させている。

「One Cisco」がもたらす統合の真価

 Cisco 360に導入された評価軸の一つが、複数のソリューションを組み合わせた提案に対する評価だ。シスコが掲げるプラットフォーム統合戦略「One Cisco」を具現化し、その恩恵を顧客に届けるための試みだ。

 濱田氏は「One Ciscoを実現するには、それを構成する個々のコンポーネントにおいて高い専門性を有していることが大前提です」と話す。複数領域でCisco Preferredを獲得したパートナーについては、多角的な専門性への投資を評価する仕組みを用意した。

 吉井氏も「領域を横断してソリューションを組み合わせることで、提供価値は相乗的に高まります」と語る。各領域で深い知見を持つパートナーがそれらを高度に連携させてこそ、統合プラットフォームの真価が発揮される。

 One Cisco戦略の中核を担うのがSplunkとの統合効果だ。SplunkはSIEM(セキュリティ情報イベント管理)やオブザーバビリティー(可視化)の領域で高い実績を誇る。

 「シスコ製品で収集したネットワークのデータをSplunkで分析することで高度な洞察が得られます。システム停止のリスクを可視化して未然に防ぐこの統合ソリューションの価値は大きく、国内の採用事例も増えています」(濱田氏)

 Cisco 360には、導入後のライフサイクル支援を評価する仕組みもある。導入後の活用状況の管理や適切なタイミングでのリニューアル支援などを評価し、顧客の体験とパートナーのモチベーションの両方を向上させる。

 「顧客満足度を左右する要素の一つが、初期のチューニング支援です。『製品を納入して終わり』ではなく、効果が出るまで設定を見直すなど、継続的な支援が重要です」(濱田氏)

中堅・中小企業向けパートナーの裾野も拡大

 Cisco 360はさまざまな規模の企業をカバーすることを目指し、中堅・中小企業を支援するパートナーの支援も視野に入れている。その鍵が、段階的な評価制度とディストリビューター経由の支援だ。

 パートナーは、PVIの評価数値に応じてステータスが変わる。注目すべきはPVI 0.0からパートナー制度のメリットを受けられる点だ。「PVI 0.0でもウェルカムパッケージを提供し、1.0取得で検証機器の購入や案件単位の追加ディスカウントが可能になります。参入障壁を下げることで、中堅・中小企業もカバーする狙いです」(吉井氏)

 ディストリビューター経由の支援体制も強化する。パートナー向けの無料コンサルティングサービスなどを展開しているディストリビューターなどに、シスコは技術情報の提供などでバックアップする。

 新しい評価制度は、既存パートナーの貢献を正しく評価するだけでなく新たな実力派パートナーの発見にもつながっている。「従来の最上位パートナーが高い評価を維持する一方で、取引量は多くないものの複数ソリューションで際立った数値を記録しているパートナーを見いだせます」(吉井氏)

 日本市場は、複数のソリューション領域でCisco Preferredを獲得するパートナーの多さが特徴だ。パートナー各社が多角的に投資し、シスコのOne Cisco戦略に呼応して専門性を磨き上げていることがCisco 360の実現で可視化される。

 濱田氏は「Cisco 360への移行は、シスコが最も注力している取り組みの一つ」とした上で、次のように決意を述べる。

 「ミスマッチのないエコシステムを日本で早急に確立し、パートナーがより高いモチベーションで挑戦できる環境を整えます。多くの企業にとってAI活用やセキュリティ強化は喫緊の課題です。Cisco 360によって、お客さまが最適なパートナーとともに安心してシスコの技術を活用できる体制を築きます」

 Cisco 360は、2027年2月にディストリビューター向け、その後もコンサルティングパートナー向けプログラムを展開する予定だ。約25年ぶりの大刷新を通じて顧客起点のエコシステムを再構築し、ネットワークに加えセキュリティとAIを核としたビジネス変革を加速させる。

photo 左からシスコシステムズの濱田義之氏、吉井彩乃氏

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2026年5月26日