VMwareのライセンス体系変更に伴い、日本企業はコストの増加とシステム主権の維持という難題に直面している。この危機に対してNTTデータは、IT部門のスキルセットや運用体制に合った仮想化基盤「Prossione Virtualization」を開発した。ユーザー主導のITインフラを実現する新たな選択肢の全貌に迫る。
企業のITインフラを長年支えてきた“当たり前”が足元から揺らいでいる。長らく仮想化基盤のデファクトスタンダードだったVMwareのライセンス体系の変更が、多くの企業に深刻な影響を与えている。
BroadcomによるVMwareの買収以降、永久ライセンスの廃止やCPUコア課金への移行など矢継ぎ早に変更され、コスト構造が根底から変わった。IT部門を悩ませているのが、パッケージ販売への集約だ。
こうした状況を受け、ITインフラの主導権をユーザーの手に取り戻すため、「KVM」(Kernel-based Virtual Machine)ベースの国産仮想化基盤が登場した。特定のベンダーに左右されない環境をいかに実現するのか。その鍵を握る「システム主権」の重要性と、製品が登場した意義を開発担当者に聞いた。
NTTデータの石崎晃朗氏は、「現在のライセンス体系は、必要な機能だけを使いたいお客さまにとっては大きな負担です」と機能とコストのずれを指摘する。
加えて、経営層が強い危機感を抱いているのが「システム主権」の確保だ。「特定の海外ベンダーの意向で基幹システムの方針が左右されるだけでなく、国際情勢の変化によって製品の供給が危ぶまれるリスクを抱えています」と同氏は話す。
基幹システムやAI基盤などがブラックボックスの海外製品に依存してよいのかという懸念もある。特定のベンダーに依存しないITインフラを模索する動きが、日本企業の間で広がりつつある。
これを受け、有力な選択肢として注目されるのが、Linuxカーネルの標準機能である仮想化基盤のKVMだ。オープンソースでライセンスコストがかからず、ベンダーロックインからも解放される。
しかし、IT部門にとってKVMへの移行にはハードルが立ちはだかっている。商用製品のような洗練された管理ツールが存在せず、運用には高度なCUI操作やXMLファイルによる緻密な構成管理が必要だからだ。「仮想化基盤はGUIベースで管理する」という運用スタイルに慣れた担当者にとって、これらの作業はハードルが高い。
「KVMは難しい」という常識を覆す選択肢として、NTTデータが2025年7月に提供を開始したのが「Prossione Virtualization」(プロッシオーネバーチャライゼーション)だ。これはIT部門のスキルセットや運用体制に合わせて開発されたKVM基盤だ。GUI管理ツール「Prossione Virtualization Manager」を中心に、導入・運用に不可欠なナレッジドキュメントやNTTデータの技術者による手厚いサポートを統合したサブスクリプションサービスとして提供される。
サポートしているLinuxディストリビューションは「Red Hat Enterprise Linux」と「AlmaLinux OS」の2種類。後者は、OSの追加サポートを同梱(どうこん)したサブスクリプションメニューが用意されている。
NTTデータは2004年からOSS専門組織を設置してコミュニティー活動や開発を続けており、金融機関の勘定系システムといったミッションクリティカルなシステムを含むさまざまなシステムでOSSの活用実績がある。「それらの技術とノウハウを結集し、安心して長く利用できる国産仮想化基盤を求めるお客さまに向けて開発したのがProssione Virtualizationです」と石崎氏は説明する。
Prossione Virtualizationが追求しているのは、徹底して運用担当者の視点に立ち、KVMの複雑さを取り払ってIT部門の負担を軽減することだ。
VMware製品の運用に慣れた担当者にとって、KVM移行の最大のハードルがCUIによる操作だ。そこで、直感的に操作できるWebブラウザベースの管理画面を提供している。
仮想マシンの稼働状況やリソース使用率を可視化し、仮想マシンがどのホストで動いているのかなどを把握できる。サーバごとのコマンド操作やスプレッドシートによる情報管理などは不要だ。
NTTデータの梶波崇氏は、「運用の中で、ご要望が多い機能からどんどん作り込んでいます」と語る。
稼働中の仮想マシンを別のホストに移動させるライブマイグレーションをKVMで実施するには、複雑なコマンドオプションや共有ストレージの設定を熟知している必要がある。
Prossione Virtualizationは管理画面で移動先のホストを指定するだけでよく、背後の煩雑なプロセスはシステムが自動で実行する。ウィザード形式のため、熟練技術者ではなくても容易にメンテナンス作業できる。「インフラ周辺の設定も含めて、使いやすくデザインしました。手動でコマンド設定をしなければならなかった部分をGUIで操作できるようにしています」と梶波氏は話す。
物理サーバが故障した際、仮想マシンを別のサーバで自動的に再起動させる「ホストHA」機能をOSS単体で実現するのは難しい。このような商用システムに欠かせない機能を標準機能として提供していく。一部の仮想マシンによるリソース占有を防ぐQoS機能などについても今後の拡張を検討している。
OSSは脆弱(ぜいじゃく)性対応や機能追加がコミュニティー頼みになり、対応が遅れるリスクが付きまとう。Prossione Virtualizationは、NTTデータが安全性や動作を検証した最新の修正パッチや新機能をサブスクリプションの一部として提供する。ユーザーは、膨大な脆弱性情報を追うことなくセキュアな環境を維持できる。
システムライフサイクルに合わせたアップデートの選択肢も充実させる。メジャーバージョンの最新機能をいち早く取り込む「機能追加フェーズ」と、安定稼働を最優先に保守する「長期サポートフェーズ」で、幅広いユースケースに対応する。長期運用したい企業向けに長期間のサポートも提供する予定だ。
Prossione Virtualizationが真に追求しているのは、仮想化基盤の在り方を「ベンダー主導」から「ユーザー主導」へと転換させることだ。
ITインフラの運用は安定稼働が当たり前と見なされ、障害が起きると責任を問われる。追い打ちをかけるのが、ベンダーの都合による仕様変更やライセンス改定だ。「新バージョンでは古いハードウェアを切り捨てる」「使い続けるならライセンス料が倍になる」といった要求にIT部門は疲弊している。
Prossione Virtualizationは、こうしたベンダーロックインからの脱却を掲げる。「製品コンセプトを押し付けるのではなく、IT部門の運用を重視して機能を作り込んでいます。ベンダーの都合ではなく、お客さまのニーズに合わせるというのが私たちのスタンスです」(梶波氏)
リリース後、市場からは予想以上の反響が寄せられたという。
企業の期待に応えるべく、NTTデータも検証とノウハウの蓄積を兼ねた社内導入を推進している。自社のサービス運用基盤などを対象としたパイロット導入を通じ、実務に即した運用フローの最適化を図っている段階だ。
業界における共創も広がっている。パートナー企業との連携を強化することで、多様なニーズに応えるエコシステムを構築する考えだ。
2025年7月にサイバートラストと、12月に日立製作所と協業を開始するなど共創の輪はスピーディーに拡大している。日立製作所とは、同社のサーバおよびLinuxに関する豊富なノウハウとProssione Virtualizationを組み合わせ、ミッションクリティカル領域への導入を促進する。2026年3月末には日立製作所の「Hitachi EverFlexクラウドサービス」「Hitachi Private Cloud Platform」にProssione Virtualizationが組み込まれる予定だ。
「当社の製品、サービスだけで完結させるのではなく、ハードウェアやインテグレーションを手掛けるパートナーと組むことでお客さまは安心して利用できます。日立製作所との協業は、国産ベンダー同士が手を組み、新たな選択肢を提示するという決意の表れでもあります」(石崎氏)
製品の進化も続く。現行のバージョン1に続き、2026年春にバージョン2の提供が予定されている。HA機能が提供開始され、ホストサーバ故障時に自動復旧を行う機能の他、既存の仮想化基盤からの移行を支援するツールが提供される予定だ。
開発チームが見据えるのは、単なる製品開発を超えた「日本のITインフラの健全な存続」だ。ユーザーの声に耳を傾け、必要な機能を着実に実装することで、日本企業のビジネスを足元から支える堅牢(けんろう)な仮想化基盤へと育て上げる。
取り組みにはもう一つの重要な意義が込められている。減少傾向にあるインフラ技術者が育つ土壌を取り戻すことだ。
「国内でインフラ技術を深く手掛けるベンダーや技術者は少なくなってしまいました。Prossione Virtualizationの提供を通じてインフラ技術者が育つ環境を育み、日本企業がシステム基盤を長く安定して運用できる体制を整えることも私たちの目標です」(石崎氏)
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提供:株式会社NTTデータ
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2026年3月27日