生成AIの普及が進み、2026年は「AIエージェント」の本番導入が本格化すると専門家は指摘する。成功の鍵は、ハイブリッドクラウドに潜むデータサイロの解消だ。AIの効果を最大化して業務変革を促進する次世代インフラの全貌に迫る。
総務省の「令和7年版 情報通信白書」によると、国内で「生成AIサービスを使っている」と答えた人の割合は2023年の9.1%から2024年の26.7%に増加した。業務での生成AI利用率は55.2%(2025年3月末時点)となり、AIを活用して業務を効率化する企業が今後も増えるだろう。業務を代行させる手段として、自律的に計画して行動する「AIエージェント」に期待する企業が多い。
「AIエージェントが注目され、PoCを始める企業が多かったのが2025年でした。2026年はAIエージェントを本番導入する年になるでしょう。AIの業務適用を前提にして業務プロセスを再構築することが当たり前になります」――企業におけるAI活用の動向に詳しいNECの伊藤猛氏はこう分析する。
NECは、AIによる業務変革や経営変革を自らも実践している。経営や営業活動、BPO、セキュリティ、IT運用などの7領域に23のAIエージェントを実装して、得たノウハウを顧客に還元する「クライアントゼロ」に取り組んでいる。これまでに支援したAIプロジェクトは8000件を超える。
営業活動やサプライチェーンマネジメント、人事労務業務、それらの業務変革を実現するデータマネジメントなどの「AI活用の価値が特に高いと思われる分野」を選定し、それぞれのベストプラクティスを顧客に提供している。「このベストプラクティスを生かせば顧客向けのシステムを一から構築する必要がなく、スピーディーに支援できます」
企業におけるAI活用が進む一方で「直面しがちな課題も見えてきた」と伊藤氏は言う。
「課題の1つ目は『AIの目的化』です。AIの導入自体が目的になってしまうと技術検証に終始してしまい、効果の検証がおろそかになります。2つ目は『データマネジメント』です。データの整理や管理・統制が不十分だと、組織横断でデータを活用できません。3つ目が『定着化のプロセス』です。ツールを導入したものの現場での活用が浸透しないケースもあります」
特に、システムごとに運用体制やデータ保管場所が異なる場合はこれらの課題が顕在化しやすい。ハイブリッドクラウドのようにシステムが複雑で運用や管理が難しいケースがその代表例だ。「重要なデータやシステムはオンプレミスで運用し、新たな試みにはクラウドを使う」といったように、データごとに置き場所を分けた結果、データや運用体制のサイロ化を招いた例もあるという。
「構造化データ、非構造化データ、異なるクラウドにあるデータ、オンプレミスにあるデータ――こうした多様なデータや、これまで使われなかったデータもAIに参照させたり学習させたりすることで、AIエージェントの回答や動作がさらに向上できると期待されています。AIにデータを渡すにはさまざまなシステムを横断する必要がありますが、データがサイロ化しているとそれが難しくなります」
この課題を解決するのが、NECが提案する「インテリジェントハイブリッドクラウド」だ。クラウドやオンプレミス環境をつなぎ、AIによる自律的な管理や最適化を目指す。NECの小谷哲郎氏は、各所に保存されたデータを仮想的に統合してAIが必要なデータを取得できる環境をつくると説明する。
NECは、さまざまな業種で顧客のニーズに合わせたハイブリッドクラウド環境を構築・運用してきた。多様な実績を型化して、「ハイブリッドクラウド・バイ・デザイン」として展開を図っている。さらに、これにAIを活用した「クラウドオーケストレーション」「データマネジメント」「統合管理」の機能を追加したのがインテリジェントハイブリッドクラウドだ。AIが環境の変化に適応して自律的に設定を調整するなどプラットフォームを最適化させて、高度なITインフラの形を提示する。
インテリジェントハイブリッドクラウドは複数のサービスを統合した構想だ。オンプレミス、プライベートクラウド、パブリッククラウドをネットワークでシームレスに接続し、これらをマネージドサービスとして統合管理することでAI活用の基盤を整備する。核になるのは以下のようなサービスだ。
AI活用基盤を成すこれらのサービスや、複数の環境を横断するデータマネジメントにもAIを活用する方針だ。「オンプレミスのストレージ製品とクラウドのストレージをつなげて、AIのためのデータ基盤を整備する仕組みを提供しようと考えています」と小谷氏は意気込む。
「データ基盤を整備するに当たって、1つの環境に全てのデータを集中させるアーキテクチャも考えられます。しかし『絶対にオンプレミスでしか管理できないデータ』があるなど、企業によってさまざまな事情がありますし、ビジネスの状況や社会情勢によって方針が変わることもあります。こうした変化にも柔軟に対応できるように、データを管理・運用できるアーキテクチャ、ガバナンス、体制を整えておくことが重要です」(小谷氏)
NECは、ビジネス変革や社会変革に取り組むことで得た知見・経験を体系化し、新たな価値を導くための集大成となる価値創造モデル「BluStellar」(ブルーステラ)を展開している。顧客を未来に導くため、NECの知識と技術を結集するものだ。本稿で紹介したインテリジェントハイブリッドクラウドもこの一環だ。
小谷氏は「当社は、クライアントゼロの取り組みとお客さまの支援事例で培った知見を持っています。それに加えて、変化が激しい技術トレンドを継続的にキャッチアップし、お客さまの課題に先回りする形で備えています。こうした取り組みを踏まえ、AI活用が本格化する中でもお客さまのビジネスの成長に貢献するプラットフォームの導入から運用まで一貫して伴走します」と、インテリジェントハイブリッドクラウドの強みを強調した。
伊藤氏も、顧客のAI活用を支援する立場としてインテリジェントハイブリッドクラウドに期待してほしいと強調する。
「企業はこれまで以上にAIを多用するでしょう。そんな未来では、インテリジェントハイブリッドクラウドのような『企業が安心してAIを稼働させられる基盤』が必要です。NECのプラットフォーム上で非構造化データを含めたさまざまなデータを活用できるようになり、AIエージェントに代表される高度なAIによる業務変革も可能になると信じています」
NECのインテリジェントハイブリッドクラウドは、AI時代に必要なITインフラとデータ基盤の形を提示している。AI活用に適したITインフラの構築に課題を感じている企業は、その動向に注目したい。
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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2026年3月31日