テレワークが広がり、SaaSやAIの活用が進み、IT環境はかつてないほど複雑化した。IT部門はシステムの安定運用やセキュリティ対策に追われ、従業員のIT体験にどのような不便が生じているかを把握できていない。
こうした状況を背景に、アイティメディアが主催したオンラインイベント「Enterprise IT Summit 2026 冬」ではIT運用の次世代化がテーマの一つとして取り上げられた。同イベントに登壇したNexthinkの金容鎮氏は、複雑化するIT環境を克服する方法として、従業員の利用実態に即した運用管理やAIによるトラブルへの効率的な対処法を示した。
Nexthinkは2004年にスイスで創業した「デジタル従業員エクスペリエンス」(Digital Employee Experience。以下、DEX)専業ベンダーだ。現在は世界で1500社以上が利用するDEXプラットフォームを提供している。日本法人は2025年6月末に設立された。
金氏は、企業が直面するIT運用の限界について次のように語る。
「テレワークによって働く場所が分散したことに加えて、部門ごとに乱立するSaaSや生成AIの導入など企業のIT環境は複雑さを増しています。トラブルが起きてから対処するリアクティブな運用が中心で、その場しのぎの対応に追われる悪循環から抜け出せていません。その結果、根本的な課題の解決や戦略的な施策にリソースを割けていないというのが現状です」
これらの課題を解決するためには、デバイスやアプリの挙動、従業員の操作内容といった利用実態に基づいた可視化と分析が必要だ。その方策として注目されているのが、AIを活用したDEXの管理と向上だ。
NexthinkのDEXプラットフォーム「Nexthink Infinity」は「可視化」「診断」「解決」の3ステップで従業員のIT体験を改善する。可視化のステップは、各デバイスからCPU使用率やアプリのクラッシュ状況といったリアルタイムデータを収集して分析することで、ブラックボックス化していたエンドポイントの挙動を明らかにする。
注目すべきは、従業員の主観的な声を吸い上げるアンケート機能だ。従業員がITサービスをどう感じ、どう改善してほしいかという意見や感情を効率良く収集できる。集めた意見を生成AIで分析することで、短時間でインサイトを得られる。
ITサービスの利用実態を分析して予兆検知と対応の自動化ができることも特徴だ。IT運用を事後対応からプロアクティブなものへと変革する。
例えば「全社で使用頻度が高い生成AIサービスを把握する」「AI利用が進まない部門の従業員にアンケートを配布してIT部門と人事部門が連携して対応策を練る」といったことが実現する。
また、特定のアプリの動作が遅いといった問題が発生した際、AIやNexthinkのユーザーベース(他社の利用動向データ)を生かして問題を絞り込むことも可能だ。
「特定のアプリの動作が遅いという問題に対して、AIが全社の利用状況をスキャンします。AIは、『古いバージョンのソフトウェアが高い負荷の原因である』というインサイトを即座に提示。管理者は、この分析に従ってそのソフトウェアをアップデートすることで、従業員から問い合わせが来る前にトラブルを解消できます」
Nexthink Infinityの効果は、導入実績からも見て取れる。
オランダに本拠地を置く医療テクノロジー大手のPhilipsは、半年間で1万件のITサービスチケットを削減した。オランダの主要銀行の一つであるABN AMROは、導入後に従業員エンゲージメント率が90%向上した。米国の大手ヘルスケア企業であるCenteneは、IT運用に関わる作業の95%を自動化した。
定型的なトラブル対応や予兆検知をAIに委ねることで、IT部門は「事後対応に追われるコストセンター」という旧来の役割から脱却できる。DEXの向上を通じて「従業員の生産性を最大化する」ことこそが、次世代のIT部門が目指すべき姿だ。
従業員の自己解決を促進するAIエージェント「Nexthink Spark」もある。対話形式でトラブルを解消に導き、VPNの接続不良なども自動修復する。IT部門への問い合わせを大幅に削減することが可能だ。
金氏はセッションの締めくくりに、IT運用の本質について次のように語った。
「デジタルツールは導入することが目的ではありません。大切なのは、従業員がストレスなく使えているか、本当に業務の役に立っているかを常にユーザーの視点で把握し続けることです。そうした実態把握の積み重ねこそが、真の生産性向上に寄与するのです」
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提供:Nexthink合同会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2026年3月24日