事業の成長や環境の変化に対応するために、IT環境の柔軟性を高めたいと考える企業は多い。そんな中、この取り組みに成功したのが、学習塾や語学学校、介護・保育事業などを手掛ける京進だ。ローコード/ノーコード開発ツールを活用しつつ、ITパートナー企業との役割分担も見直すことで、基幹システムの機能を次々に拡張している。同社の成功の秘訣は何なのか。
パッケージの利用による標準化は、変化に強いITシステムを作る上で重視される要素の一つだ。だが「ビジネスをどう成長させるか」を軸にシステムを考えると、パッケージを用いた標準化が必ずしも正解とは限らない。一方で企業が基幹システムをフルスクラッチで開発したり、そのための開発者を多数抱えたりするのはハードルが高い。こうした背景から近年はローコード/ノーコード開発ツールを活用したシステム開発の内製化が注目され、ツールの選択肢も多様化した。
その中から、成長に寄与できるローコード/ノーコード開発ツールを見極めるにはどこに着目すればよいのだろうか。基幹システムの内製化を推進する企業事例にヒントを探った。
京都を本拠に学習塾や語学学校、介護・保育事業などを手掛ける京進が、20年間稼働した基幹システムを刷新した。採用したのはローコード開発ツールの「GeneXus」(ジェネクサス)だ。内製化と準委任契約を組み合わせることでエンジニア不足やスキル不足の課題を乗り越えて、経営戦略に沿って基幹システムの機能を迅速に開発できる体制を整えた。
京進グループは小中学生を対象にした個人塾「京都進学教室」として1975年にスタートし、現在は子どもから高齢者までさまざまなライフステージにおける学びを通じて「人の一生を支援する」サービスを提供している。
「全従業員の物心両面の豊かさを追求するとともに、日本と世界の教育・文化の向上、社会の進歩と善良化に貢献します」との経営理念を基盤として事業を展開。「ステキな大人が増える未来をつくる」というグループビジョンの実現を目指している。
同社が事業を拡大するために取り組んだのが基幹システムの刷新だ。多角化する事業へ対応するために2000年に構築したシステムは、運用から20年を経てさまざまな課題が顕在化していた。こうした状況の中、老朽化により、同社の新たなチャレンジである保育や介護などの事業に対応することが困難だった。
システムを管掌する京進の山本宗孝氏(執行役員 経営情報企画部 部長)はこう話す。
「特に深刻だったのはエンジニアの確保や育成です。従来の開発言語やシステムアーキテクチャが時代にそぐわなくなり、パートナー側でも開発・運用できる要員の確保が難しくなっていました。将来にわたって事業のスピードに同期できる開発力と、変化に強くコストを制御できる基幹システムが必要でした」
そこで山本氏が着手したのがGeneXusを活用したシステムの内製化と運用体制の見直しだ。
「今の事業に沿った仕様のシステムをフルスクラッチで開発すると、数十年後に同じ課題を抱えることになりかねません。ビジネス環境の変化にアジャイルに対応するためにはどうすればいいか、調査する中で見つけたのがGeneXusでした。パートナーとして豊富な実績を持つウイングさんに相談して、システムの構想に取り組みました」
京進はなぜ数あるローコード/ノーコード開発ツールの中からGeneXusを選んだのだろうか。
GeneXusは、開発したいシステムの仕様や業務ロジックを記述するだけで、Javaなどのプログラムコード、それに対応するデータベース構造を自動生成するローコード開発ツールだ。言語・OS・データベース・Webサーバなど、ユーザーが求めるプラットフォームに応じたアプリケーションを構築できる。業務ロジックと出力コードが分離されているので環境の変化に強く、アジャイルなシステム開発を実現しやすいのが特徴だ。GeneXusは35年以上にわたり進化を続けており、基幹システムでの豊富な採用実績に加え、レガシーシステムのマイグレーションにも活用されている。
「自社で開発から運用まで内製化することも検討しましたが、事業会社にとって、システム開発の専門人材を従業員として雇用し続けることは簡単ではありません。また、ノーコードツールはできることが限定的で、基幹システムの複雑な要件を満たすことは難しい。その点、仕様や業務ロジックをローコードで記述し、プログラムコードを自動生成できるGeneXusなら、内製化とノーコードツールの課題を解消した上で、変化に合わせて改良し続けられると判断しました」
この変革のポイントの一つがシステム開発・運用パートナーとの関係の見直しだ。ウイングとはもともと別のシステム案件で取引関係があった。GeneXusの採用を機に、新たな成果物に対して京進が責任を持つ準委任契約に移行して予算管理の手法も変更した。要件定義やデータの設計を京進に集約して、ローコード開発をウイングが手掛ける体制だ。山本氏は「スピードが必要なものは迅速に、腰を据えて作り込むものは計画的に、といったメリハリのある開発・運用を目指しました」と振り返る。
プログラムコードと業務ロジックを分離させたことで、開発工程の標準化や保守性の向上だけでなく、将来的なアーキテクチャ変更や基盤刷新にも対応できる仕組みとなっている。
「GeneXusを使えば、開発言語やプラットフォームを意識せず『設計ドリブン』で進められます。運用もパートナーに全てを任せるのではなく、案件の優先順位を自社主導で決定することで、開発・運用体制を迅速に変更できるようになりました」
開発プロジェクトは2019年からスタートした。まず取り組んだのは、従業員情報を一元管理する「ローマE」と、顧客情報を一元管理する「ローマC」だ。システム名は「全ての道はローマに通ず」「ローマは1日にして成らず」ということわざに由来する。将来的な大規模システム刷新に向けて着実に歩みを続けること、アジャイルにシステムを変更し続けることへの決意を表している。
ローマEはグループ全ての従業員情報を管理するシステムだ。人事施策に直結するデータ基盤として横断的に活用している。グループ全体のシステムをつかさどるID基盤の役割も持っており、人事SaaSやID管理システムとも連携する。ローマCはグループ全体の顧客情報を名寄せして統合し、ユニークIDで一元管理するシステムだ。契約情報と顧客属性をひも付けて、幼少期から社会人までの受講履歴を横断的に把握できるようにしており、人の一生を支援する事業展開にも利用している。
この他、汎用(はんよう)マスター管理用の「ローマM」、人材情報の管理ツール、日報と従業員・顧客からの声の蓄積システム、生徒の合否管理システムなどをGeneXusで構築した。
京進の開発意欲は止まらない。2024年以降、新たに取り組んでいるのが、グループの契約・請求・入金・売り上げ管理を統合するシステム「KSN-U」だ。システム名は京進の略称(KSN)と統合(Unite)を掛け合わせたものであり、契約・請求・入金・売上のローマ字表記の頭文字にも由来する。
「KSN-Uは、20年以上稼働している請求システムを刷新して再構築します。これまで請求や入金の管理、入金消込、売上計上などの機能を、事業ごとに継ぎはぎでアップデートしてきましたが、それらを統合してグループ横断で契約管理や収益管理を一元化します。これによって財務状況の把握スピードを向上させます」
これだけ多数のシステムを刷新できたのは、GeneXusの優れた開発効率によるところが大きい。GeneXusのステップ数(GXステップ数)と、生成されるJavaコードのステップ数を比較すれば効果は明白だ。ローマEはGXステップ数が52万に対して出力されたJavaステップ数は387万、ローマCはGXステップ数13万に対してJavaステップ数は166万と、おおよそ7〜10倍は効率化した計算になる。
山本氏は、GeneXusの効果は3つあると話す。
1つ目は、戦略との適合性だ。「既製のパッケージでは対応し切れない独自性の高い業務を、全社戦略に合わせて迅速にシステム化できるのがGeneXusの良い点です。独自性の低い業務はSaaSの標準機能を利用するなど、切り分けた実装がしやすい。リソース配分を最適化するためにも、少人数でシステムを内製化するためにもこうした切り分けが重要だと考えています」と山本氏は評価する。
2つ目は、品質と納期の両立だ。GeneXus導入後の開発を通じて、社内では「組織や顧客に素早く価値を提供しよう」という意識や文化が定着しつつある。技術面でも、京進が上流工程に集中できるので、自分たちの選択が品質と納期にどう影響したのか成果責任を明確化できるようになったという。
3つ目は、コスト最適化と統制の実現だ。内製の主導と準委任契約の組み合わせによって、予算に柔軟性が生まれた他、プラットフォームに依存せずに標準化を推進できるようになった。これらの改善が保守性の向上にもつながっている。
山本氏はKSN-Uを完成させたのち、グループ全体でのデータドリブン経営を目指した取り組みを本格化させる計画だ。
「GeneXusを使った新システムは、従業員情報や顧客情報の一元管理、フロントでのSaaSの活用、API連携やRPA連携など、変化に応じて進化させられるシステムになりました。こうした基幹システムとデータを活用して『人の一生を支援する』サービスを提供していきます」
システム整備が進んで「ステキな大人が増える未来をつくる」京進の取り組みがいよいよ本格化する。GeneXusとウイングの支援を受けて、その歩みはますます加速するだろう。
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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2026年6月10日