手をかざした瞬間に認証し、通信障害時にもサービスを継続する。USEN&U-NEXT GROUPのUSEN-ALMEXが提供する手のひら認証サービス「Gen-pa」は、快適なユーザー体験と100万台規模の端末稼働を見据えた拡張性をいかに両立させるのか。その鍵となるデータ基盤と実装の舞台裏に迫る。
ホテルの大浴場に向かうときも、リゾート施設のプールサイドでも、ルームキーやスマートフォンを持ち歩く必要はない。“手のひら”をかざせばあらゆる扉が開き、決済が完了するからだ。USEN-ALMEXが本格展開を開始した手のひら認証サービス「Gen-pa」は、物理キーに依存していた私たちの日常を大きく変えようとしている。
USEN&U-NEXT GROUPの一社であるUSEN-ALMEXは、「テクノホスピタリティを世界へ」という理念の下、医療機関やビジネスホテル、レジャー施設などに自動精算機やキオスク端末などのフロント管理システムを展開しており、現場のオペレーション効率化と利便性向上を長年支援してきた。常に新たな顧客価値を創出し続ける同社のサービス開発方針について、常務執行役員CTO(最高技術責任者)の井上晋氏は次のように説明する。
「私たちは一貫して『テクノロジーでホスピタリティを提供する』というコンセプトでサービスを開発してきました。お客さまの接客現場の省人化を実現しつつ、顧客にスムーズなユーザー体験(UX)を提供する。Gen-paは、そうした当社サービスの核の一つです」
同社はこれまで顔認証による認証サービスも手掛けてきたが、次世代の主力製品には手のひら認証を採用した。その理由について井上氏は、「顔認証は、利用環境や外見の変化によって認証精度が左右される場面があります。また、本人が意図しないタイミングで認証されることに、心理的な抵抗を感じる方もいます。誰もが自らの意思で、日常的に使える認証方式を考えたとき、手のひら認証に大きな可能性を感じました」と語る。
一方、静脈と掌紋を組み合わせる手のひら認証は、利用者が自ら手をかざして初めて認証が始まる。「かざす」という明確な意思表示があるため、知らないうちに認証される不安を抑えやすい。井上氏は世界各地の技術を調査し、コアとなる認証技術の国内独占販売権を取得して、サービス化を進めた。
井上氏は「将来的に市場で100万台のGen-paを稼働させる」という大きなビジョンを描いている。このため、当初から一般的な生体認証システムのように端末で読み取ったデータを全てクラウドのサーバに送信して照合する方式は考えていなかった。
「100万台の端末が同時にサーバに認証要求すると、全てクラウドで処理したら毎月数百万円規模のインフラコストが発生してしまいます」
コスト増はサービス提供を困難にするだけでなく、通信遅延やサーバダウンのリスクを招き、同社がこだわる「瞬時に完了するスムーズなUX」を損なってしまう。
この問題を解決するには、端末内に認証データをキャッシュし、端末のみで照合を完結させる「エッジ処理」が不可欠だった。エッジ側で認証処理ができれば、通信障害が発生してもサービスを継続できる。ネットワークが途切れても認証を止めない。このアーキテクチャこそ、Gen-paが求める安定性の鍵だった。
エッジのみで安全な認証処理を遂行するには、全ての端末が常に最新の認証データを持つことが条件となる。ある端末で手のひらの情報を新規登録すると、その情報をリアルタイムで他の端末にも同期し、別の場所でも認証できなければならない。退職や退会に伴うアクセス権限の削除も全端末に反映される必要がある。
しかし、多数の端末間で認証データをリアルタイムかつ安全に同期し続けるシステムを自社で一から開発することは、時間的リソースとデータ安全性の観点からリスクが伴う。井上氏は自社のコアビジネスであるホスピタリティの追求にリソースを集中させるため、外部のデータベースソリューションの採用を決断した。
「リアルタイムデータベースが必要だと考え、生成AIを壁打ち相手にアーキテクチャを決めていきました」
生成AIとの対話を重ねてたどり着いたのが、端末側を担う組み込み型データベース「Couchbase Lite」と、端末間の同期を担う「Couchbase Sync Gateway」の組み合わせだった。
Sync Gatewayの柔軟なデータ同期とルーティング機能も決定打となった。加えてチャネル機能を使えば、店舗、地域、顧客属性などの条件に応じて、必要なデータだけを必要な端末へ届けられる。大規模な端末展開でも、同期対象をきめ細かく制御できる。
「将来的に異なる小売りチェーン同士が特定エリア限定で共通ポイント制度を導入するような際も、データを柔軟にマージ(統合)して対応できると考えました」
チャネル機能は、データ同期の効率も大きく高める。100万人分の会員データがあっても、各端末が全てを保持する必要はない。例えば、特定エリアの店舗には利用可能性の高い1万人分だけを配信し、対象外の会員が利用する時にだけサーバへ問い合わせる。必要なデータを必要な場所に届けることで、端末負荷と通信量を抑えながら柔軟に運用できる。
「端末が保持するデータを、そのエリアで必要な顧客情報に絞れば、CPU負荷を抑えながら認証をさらに高速化できます。100万人を対象に探すのと、1万人を対象に探すのとでは、処理の軽さが大きく違います」
データの分散配信によってパフォーマンスとセキュリティの両立を実現するCouchbaseのアーキテクチャは、まさにGen-paが求めているものだった。
Couchbaseを最有力候補に据えたUSEN-ALMEXは、2025年春にCouchbase Liteのオープンソース版(Community Edition)を利用して動作を検証し、パフォーマンスが要件を満たすことを確認。製品化に当たっては機密性の高い生体情報を扱うため、データベース暗号化機能を持つ商用版を採用した。
同社は2025年12月に商用版ライセンスを購入し、自社のエンジニアとプロジェクトマネージャーなどを含めた7人で開発を本格化させた。翌2026年1月には環境構築に着手し、わずか1カ月後の2月には、展示会で完全動作するデモを披露した。
この超短期開発を可能にしたのが生成AIだ。Couchbaseは非同期分散システムであり、端末間の時刻差への対応、削除データを確実に同期する仕組み、OSごとに異なる実装作法など、慎重な設計が求められる。通常であればOS別の実装と検証に多くの工数を要するが、開発チームは複数のAIコーディング支援ツールを使い分けて実装と検証のサイクルを高速化。開発期間を大幅に短縮した。
こうした開発チームの工夫により、現在はエッジ処理と確実なデータ同期でシステムは安定稼働を続けている。さらに、将来的に認証端末数が大幅に増加した際のクラウド側(Sync Gateway)のチューニングに向けて、Couchbase Japanのプロフェッショナルサービスを活用。今後のシステム拡張を見据えてアーキテクチャをレビューするなど、万全の伴走サポートを受けている。
安定したシステム基盤を手に入れたUSEN-ALMEXは、Gen-paの社会実装もすでに始まっている。ソラーレ ホテルズ アンド リゾーツが運営する「ザ・スクエアホテル銀座」では、女性用大浴場の入室管理にGen-paを採用した。もともと大浴場の入室には物理カードキーを使っていたが、セキュリティや紛失などの問題への対応や管理が煩雑だったところ、Gen-paであれば受付時に登録した手のひら情報をその場で認証するだけで安心して利用できるようになり、顧客体験の向上と安全性を両立させた。医療分野でも、厚生労働省が推奨する医療情報システム全般に対する二要素認証向けに手のひら認証とパスワードなどを組み合わせた認証方法を提案中だ。
今後は、レジデンス(集合住宅)の共用部やスマートロッカーでの活用、小売業界向けのカスタマイズ販売など、幅広い領域への展開を進めている。手のひら一つで決済まで完了すれば、レジ渋滞の解消など店舗のオペレーションも劇的に改善されるはずだ。
100万台稼働を見据えた強固なシステムを築いた同社は、次の投資としてCouchbaseの「ベクトルデータベース機能」の活用を検討中だ。暗号化した個人情報を安全に管理しつつ、ベクトル検索で特定の会員情報をさらに高速に探し出すのが狙いだ。
「技術選定で重視するのは、未来を切り開く先進性と、現場を止めない安定性です。Couchbaseは、その両方を備えています。Gen-paの運用が始まったら、そこから先は絶対にシステムを止められません。現場での安定稼働と今後のサービスの発展を支えるパートナーとして、Couchbaseにはこれからも強力に伴走支援していただきたいですね」
技術の力で現場の課題を解決し、究極のホスピタリティを追求するUSEN-ALMEXの挑戦は、まだ始まったばかりだ。
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提供:Couchbase Japan株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2026年10月13日