ランサムウェア攻撃が激化している。既存の対策を突破する高度な攻撃も増え、侵入を完全に防ぐことは不可能に近い。そこで今求められているのが、仮に侵入されても迅速に復旧し、業務への影響を抑える「サイバーレジリエンス」だ。サイバーレジリエンスを強化するためのポイントと、その体制を整えるための具体策を解説する。
ITシステムに侵入し、重要なデータを盗み出したり暗号化して正常な業務ができない状態に陥れたりして、引き換えに金銭を要求するランサムウェアの被害が相次いでいる。警察庁が2026年3月に公開したレポート「令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」によると、国内のランサムウェア被害報告件数は226件と高止まりの状況だ。
被害を受けた企業は、復旧に多くの時間と費用を費やすことになる。同レポートによれば「一カ月未満で復旧した」とする企業は56%にとどまり、「調査・復旧費用が1000万円を超えた」とする企業が51%に上っている。「こうした業務停止や金銭的な負担に加え、社会的信用やブランド価値の低下にもつながります」とインターネットイニシアティブ(IIJ)の西崎奈々美氏は指摘する。
誰もが知る大手企業での被害が目立つことから、「ランサムウェアなどのサイバー攻撃が狙うのは政府機関や大手企業だけ」という印象を持つ人もいるかもしれない。しかし実際には、大手企業とつながりを持つグループ企業や中堅・中小企業も無差別に狙われ、そこから被害が連鎖するケースも報じられている。「今や、どんな企業にとってもランサムウェアは他人事(ひとごと)ではありません」
こうした危機感から、何らかの対策を採らなくてはならないという問題意識は高まっている。しかしコストや工数の関係から手が回らず、ファイアウォールやUTMによるインターネットの入り口・出口でのブロックや、ウイルス対策ソフトの導入にとどまる企業は多い。
問題は、昨今のランサムウェア攻撃が、そうした従来の対策をかいくぐって侵入してくることだ。コロナ禍以降、テレワークを実施するためにVPNなどのリモートアクセス機器を導入する企業が急増したが、その運用やアップデートが適切に行われず、新たな侵入口となっているケースが多い。
「前出の警察庁のレポートによると、対策をしていたにもかかわらず、ウイルス対策ソフトで脅威を検出できなかった事例は被害全体の71%に上ります。導入した製品の脆弱(ぜいじゃく)性管理を怠るなど、対策が不十分だったことに起因する事例も56%確認されています」と西崎氏は指摘する。
近年は、ウイルス対策ソフトをすり抜ける脅威に対抗するため、EDRを導入する企業も増えた。しかし、初期侵入時にEDRのプロセスを無効化あるいは削除し、検知されない状態を作ってから他の端末へと感染を拡大させる手口も横行している。
一定のセキュリティ対策をしてきた企業でも、侵入を完全に防ぎきることは不可能に近い。そこで今求められているのが、侵入を未然に防ぐだけでなく、仮に侵入されたとしても迅速に対応・復旧し、業務への影響を最小限にとどめる「サイバーレジリエンス」という考え方だ。
では、サイバーレジリエンスを高めるためには何が必要なのか。ランサムウェアが侵入した場合でも被害を最小限にとどめるために、事前にインシデント発生時のフローを検討したり対策を講じたりする企業は増えている。しかし、実際にインシデントが発生した際、それが計画通りに機能してスムーズな復旧に至るケースは少ない。
西崎氏は、その理由としてインシデント発生後に企業が直面する「3つの壁」を挙げる。
1つ目は「何をすべきか分からない」ことだ。インシデント発生時に誰がどう対応するかといった手順や対応フローを整備していても、実際にインシデントが起こってみると想定外の事態に直面し、計画通りに進められないこともある。
「ランサムウェアに感染すると、業務環境が破壊され、整備したドキュメントが閲覧できず、他の人に連絡も取れず、社内がパニック状態に陥ることもあります」
2つ目は「被害範囲を特定できない」ことだ。事後対応や関係各所への報告を適切に進めるためには、「何が原因で、どこまで感染が広がっているか」を速やかに特定する必要がある。その鍵を握るのがログだ。しかしログまでランサムウェアの被害を受けて調査が進まないケースもある。
3つ目は「復旧ができない」ことだ。復旧のフェーズにおいても、単純にデータをバックアップから戻せば済むというものではない。攻撃によって停止・削除されたEDRや各種セキュリティツールを復活させ、本来の防御機能を取り戻すことも重要になる。また、前出の警察庁のレポートによると、バックアップを取得していた企業のうち、実際にデータを復元できたのは2割にとどまっている。
「同じ社内LANの中に保存していたバックアップまで攻撃の対象となって暗号化、消去されていたり、そもそも運用の不備で適切に取得できておらず、意味のないバックアップになっていたりすることもあります。また、ツールや手順書はあっても、担当者が変わっていて想定以上に手間取るというケースもあります」
こうした課題を解決し、サイバーレジリエンス向上を支援するのがIIJだ。同社は、インシデント対応の準備段階から、発生後の原因究明・影響範囲調査、さらにシステム基盤やセキュリティツールの復旧までを支援する幅広いソリューションを提供している。企業が直面するさまざまな局面に応じて、平時・有事の両面からサポートできる体制を整えている。
中でも、前述のEDRやセキュリティ対策ソフトなどを無効化するランサムウェア攻撃への対策となるのが「IIJフレックスレジリエンスサービス」だ。
このサービスは、EDRやセキュリティ対策ソフトも含めたエンドポイントの状況を常時監視する。もし攻撃者によってアプリケーションが削除・停止された場合には、自動でアプリケーションを再インストールして正常な状態に修復し、常に脅威を検知できるようにする。「早期にEDRが復活すれば、その時点ですぐに不審な挙動を検知して隔離できるため、被害の拡大を食い止められます」
迅速で確実なデータ復旧を実現するためには、バックアップ環境の見直しも不可欠だ。IIJは、そのためのソリューションとして「IIJシンプルバックアップサービス」と「IIJセキュアエンドポイントサービス」を用意している。
「ランサムウェアはすぐに表面化するものばかりではなく、時限爆弾のように潜伏するものもあります。感染し、潜伏されている期間しかバックアップデータがない場合、復旧データとしては使えません。そうした事態を避けるためにも、複数世代のバックアップを長期間保管する必要があります」
IIJシンプルバックアップサービスとIIJセキュアエンドポイントサービスはこれらのポイントを実現する。自社でバックアップ先を用意することなく、IIJが運用するデータセンターでデータを保管、保護でき、手軽にバックアップからの復旧が可能だ。運用面での疑問もIIJに気軽に相談できる。
IIJシンプルバックアップサービスは、文字通り、社内のデータをシンプルにバックアップできるサービスだ。オンプレミス環境はもちろん、Microsoft 365などクラウド上のデータもバックアップできる。システム単位、部署単位などでのバックアップ範囲の指定や差分のみを取得することでストレージ容量を節約するなど、細かなカスタマイズも可能だ。
IIJセキュアエンドポイントサービスは、バックアップとアンチウイルス機能を組み合わせて提供する。バックアップの取得時や復旧時に、対象データに不正なマルウェアが含まれていないかを確認でき、単一のコンソールでバックアップとセキュリティをまとめて管理できる。
IIJは他にも、インシデント発生時の調査や影響範囲の特定を支援する「IIJデジタルフォレンジック調査」や、実践的なインシデント対応訓練を提供する「IIJセキュリティ教習所」なども展開している。インシデントが起きてから慌てて外部の専門業者を探し、契約を締結しているようでは、調査や対応が遅れ被害は拡大する一方だ。平時から自社の環境を理解し、いざという時にすぐ動いてくれる信頼できるパートナーを見つけておくことが、被害を最小化する最大の防御策となる。
「こうしたサービスを活用することで、いざという時に慌てず対応できる体制を構築できます。関係機関とすぐ連携が取れるような関係を構築したり、調査に不可欠なログを日頃から保管したりする環境も整備できるでしょう」
IIJは「対策の優先度がつけられない」という企業向けに、既存環境を整理し、次の施策をアドバイスするワークショップも用意している。「自社だけで抱え込まず、まずは気軽にご相談ください」
自社のランサムウェア対策を強化する際、全てを自分たちの手で行う必要はない。専門家の支援を得ることが早道だ。IIJは企業に寄り添い、サイバーレジリエンスの向上を支援していく。
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