Azure Arc活用へ 松本協立病院のクラウド戦略

PR/ITmedia
» 2026年09月25日 10時00分 公開
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 松本協立病院は、深刻化するIT人材不足や医療DX推進に対応するため、エッジコンピューティング層を設けたハイブリッドクラウド基盤の整備に乗り出した。Azure ポータルからオンプレミスのリソースを管理できる「Azure Arc」と、Azureからの管理を前提に設計された仮想化基盤「Azure Local」を活用。医療データのローカル処理と診療に求められる即応性を支えつつ、まずはインフラ基盤でAzure側からの管理を開始した。将来的に80種類以上の院内システムの集中管理を見据え、管理対象を段階的に広げるための環境整備を進めている。同院のITモダナイゼーションの軌跡を追う。

80種以上のシステムが密に連携、少人数インフラ運用の限界と医療DXの壁

 同院は1999年に介護保険システムをインターネット接続し、2000年には電子カルテを稼働、2013年には「Microsoft 365」を導入するなど、先進的な取り組みを続けている。しかし昨今のIT人材不足は深刻だ。システム課 課長の白川栄治氏は「IT人材は採用の段階から困難な状況が続いています。当院は正職員2人と非正規スタッフという限られた人員で、80種類以上に及ぶ基幹システムや診療システムの運用管理を担っています」と明かす。

 院内で稼働する広範なシステムは密に連携し合っており、ITインフラの設定変更やライセンス管理、複数ベンダー間の調整には経験と知識が要求される。さらに、ランサムウェア対策、診療報酬改定、オンライン資格確認システム導入など、次々に施行される制度対応も遅滞なく進める必要がある。この複雑な課題に対応するために、同院はハイブリッドクラウド基盤の整備に踏み出した。

白川氏 松本協立病院の白川栄治氏(システム課 課長)

フルクラウド化は非現実的――Azure Localで院内エッジを構築

 これまで同院はWindowsベースのHCIで主要システムを運用してきたが、レスポンス低下や性能劣化など複雑な問題の発生時は仕様を熟知した人材でないと対処が難しいケースがあった。クラウド移行は運用負荷軽減に有効だが、患者のデータを扱う医療機関が全システムをパブリッククラウドに置くことは、機密保持だけでなく通信遅延やコストの観点からも現実的ではない。

 そこで既存HCIの更改を機に、Dell Technologiesのハードウェアを採用したAzure Local基盤へ移行。「全面的なクラウド移行ではなく、院内にエッジ層を設け、データの配置と処理をローカルで担わせることを重視しました」。既存環境からの移行において、Dell Technologiesがハードウェアからハイブリッドクラウド環境まで一貫したサポート体制を持つ点が選定時の決め手になったという。

 同院は現在、Azure Localの稼働状態やクラスタ更新、AVD環境などのインフラ基盤を対象に、Azure ポータルから管理する環境を整備し、操作体系をAzure側へ寄せつつある。これにより、場所の制約を受けないリモートメンテナンスという手段を選べるようになった。「派遣エンジニアの契約終了を契機に、遠隔地のエンジニアによる保守体制の検証を開始しました。高度なスキルを持つ人材を距離の制約を超えて活用する、新たな運用モデルの確立を目指しています」(白川氏)

図 松本協立病院のシステム構成(提供:松本協立病院)

Azure Arcで脱VPNを推進、ハイブリッドAI活用も見据える

 セキュリティアーキテクチャの強化も進めている。従来型のリモートアクセスへの依存を減らし、病院側を起点とするアウトバウンド通信とクラウド認証管理を活用する方式へ段階的に移行。「Azure ArcはHTTPS(TCP 443)を利用したアウトバウンド通信で機能するため、インバウンドポートを開放せずにAzure Arcの管理対象とした院内インフラをAzure ポータルから管理できます。利用者認証は導入済みの『Microsoft Entra ID』に統合し、『Azure RBAC』による権限管理と組み合わせることで、ランサムウェアの侵入口となり得るVPN装置への依存を段階的に低減し、ゼロトラストを目指しています」と白川氏。病院側で管理するリモートアクセスはAzure Arc活用への移行を進め、従来型VPNに依存しない運用環境を実現している。

 これらの刷新を足掛かりに同院は、院内システムを支えるインフラについてAzure Arcによる集中管理の対象を段階的に広げ、各システムの特性に応じてクラウド連携を進める。クラウド型電子カルテをはじめとした外部システムとの連携拡大を見据えつつ、院内に保持すべきデータのローカル処理と診療に求められる即応性をAzure Localで支えるハイブリッド構成がポイントとなる。

 この基盤でAI活用も進む。「院内にデータを置いたまま『Azure OpenAI in Foundry Models』を利用するハイブリッドAI環境を構築し、退院サマリーの作成などからPoCを重ねています。人による確認を前提に、安全かつ実務的なAI活用の範囲を広げます」(白川氏)

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