成長スピードの加速とガバナンスの強化という、相反する課題に直面する大企業。その解決策として注目されるのが「汎用(はんよう)ワークフロー」だ。申請・承認ツールという印象が根強いが、AIエージェントの暴走を防ぐガードレールであり、意思決定の統合基盤としても機能するという。
AIエージェントの実用化が進み、社内に蓄積された業務データの価値が見直される中、データが集まるワークフローシステムにも注目が集まっている。一方で「生成AIやAIエージェントが普及すれば、従来のワークフローシステムは不要になるのでは」という声も聞かれる。
AI時代を迎えて多様なITツールの役割が変化する中、ワークフローシステムはどうあるべきか。汎用(はんよう)ワークフローシステム「AgileWorks」(アジャイルワークス)を提供するエイトレッドの佐藤拓良氏に、ワークフローの現状とAI時代の役割の変化を聞いた。
大企業の情報システム部門にとって、「事業成長のための意思決定の迅速化」と「ガバナンスやセキュリティの厳格化」の両立は悩ましい課題だ。ワークフローシステムは後者のためのツールだと捉えられがちだが、佐藤氏はその見方には誤解があると指摘する。
「多くの企業は『ワークフロー=内部統制やコンプライアンスのためのツール』と捉えて、導入すれば、申請作業や承認チェックなどで業務の負荷が増える前提で検討に入ります。われわれは、その誤解を解くところから提案を始めます。業務プロセスを適切に整理・構築して、現場が迷わず申請・決裁できる状態を作れれば、無駄な時間が削減されて意思決定のスピードを向上させられるからです」
重要なのは仕組み化だ。スピードとガバナンスの両立を、現場の「ルールを守ろう」という個人の意識や気合に頼るのは限界がある。
「Amazonの創業者、ジェフ・ベゾス氏の『Good intentions don't work, but mechanisms do.(善意は機能しない。仕組みだけが機能する)』という言葉の通りです。人間が相反する二つの目標を意識し続けることは不可能であり、仕組みが必要です」
営業担当者が意識しなくても、販売施策のコンプライアンスがチェックされる。基準内の割引率であれば自動承認されて、基準を超えた場合のみ上位者に確認が回る──このように業務プロセスにガバナンスが自然と溶け込んだメカニズムを構築することがポイントになる。
その実現手段が汎用ワークフローだ。
ワークフロー機能は、SFAやERP、会計、人事などの専門パッケージシステムにも標準で搭載されている。それらに加えてAgileWorksのような「汎用ワークフローシステム」を導入する価値について、佐藤氏は3つのポイントを挙げる。
「一つは、『意思決定データの一元管理・統合(Single Source of Truth)』です。経営層は多様なシステムで承認しますが、履歴が分散すれば検索に手間がかかります。汎用ワークフローを間に置くことで、意思決定の経緯やデータを一つのデータソースに集約でき、検索・検証が容易になります」
部署間で連携する際の「ブリッジ機能」もポイントだ。営業はSFA、経理部は会計システム、開発部はGitHubなど専門システムを利用しているが、部署間の連携を各システムで行うと、アカウントコストが肥大化してしまう。このため、実際にはメールやチャットで連携する企業が多い。「汎用ワークフローを置くことで、アカウントコストを抑えつつ、部署間の依頼・共有業務をスムーズに接続して、履歴も保持できます」と佐藤氏は語る。
加えて、自社独自の重要業務プロセスの最適化を図れる点も強みだ。汎用ワークフローなら、標準パッケージでは対応できない自社独自の重要業務でも、自社に合わせてデザインして自動化できる。
「当社でも、クラウドサービスの環境払い出し業務を汎用ワークフローで自動化しています。投資すべきコア業務を汎用ワークフローで最適化して、標準化できる業務は既存パッケージに任せる。このメリハリをつけることで、コストを抑えながら市場変化への柔軟性を維持できます」
AgileWorksはまさに3つのポイントを兼ね備えており、成長とガバナンスのジレンマを乗り越える近道になる。
一方で、AIエージェントの登場に伴ってSaaS利用の見直しを検討する企業も増えている。「ワークフローもAIで代替できるのか」という問いに対して、佐藤氏は「AI時代だからこそ汎用ワークフローの重要性が高まる」と強調する。
「AIエージェント単体に頼るリスクは『出力の安定性の低さ』と『業務プロセス制御の困難さ』です。単発のタスクであれば大きな問題はなくても、連続的な業務プロセスではリスクが肥大化します」
同じ業務でAIが毎回異なる判断や手順を取れば、連携先の人間がついてこられず、業務が混乱する。適切なアクセス権限の制御がないままAIを走らせれば、重要データの破損や漏えいリスクも生じる。
汎用ワークフローは、AIエージェントに対する「ハーネス(ガードレール)」になる。どのタイミングでAIを実行して、どのような権限でデータを引き渡し、どのような条件で人間へエスカレーションするかを厳格に定義することで、AIの暴走を防ぎつつ業務で安全に利用できる。
こうした守りだけでなく、AI活用を拡大する上でも汎用ワークフローが重要だと佐藤氏は語る。
「今後の業務設計は、ワークフロー基盤の上で人間、AIエージェント、自動化プログラムの役割分担を定義し、オーケストレーションを実現することが重要です。集計や外部へのデータ受け渡しなど毎回同じ出力が必要な確定的な処理はプログラムに任せて、情報収集や柔軟なチェックはAIエージェントが担う。イレギュラーな判断や最終承認は人間がするという形です」
AIエージェントがMCP(Model Context Protocol)やAPIを介して自律的にデータを参照して、手続きを代行する未来も見え始めている。
「例えば、多数の申請フォームから正しいものを選択するのに迷う時間を、AIエージェントのナビゲーションで削減して、自己解決を促進できます。これは当社でも実証実験をしており、一定の成果が見えたため実用段階に入っています。日本企業の文化では、意思決定の経緯や責任の所在を明確に残しつつ、人とAIを円滑に協働させる汎用ワークフローが不可欠になると考えています」
見逃せないのが、日常業務を通じてワークフローに蓄積されるデータの価値だ。AIの効果を最大化するには良質なデータが欠かせない。汎用ワークフローに蓄積されるデータは、社内AIが参照すべき「信頼できる一次情報」になる。
そこで重要になるのが、ワークフローの使い方だ。単に承認の可否という結果だけを記録する使い方では、決定に至る過程や背景、比較数値などのデータが蓄積されない。
例えば製造業における品質管理ワークフローで、測定値や判定基準の画像データを比較可能な形式で蓄積すれば、そのまま「AI学習用のアノテーションデータ(教師データ)」になる。データ加工に時間やコストをかけなくても、ワークフローを通じて日常業務を回すだけで、自社に最適化されたAIを育てるデータが自然と蓄積される。
「ガバナンスのためだけにワークフローを使うのではなく、『自社の判断基準をAIに学習させるためのデータ基盤』として捉え直す意識転換が必要です」と佐藤氏は強調する。
AI活用を見据えた全社基盤の重要性を理解できても、大企業が新たなワークフローに移行するハードルは高い。この課題に対するAgileWorksの回答が、独自のライセンス体系だ。
「AgileWorksは『ユーザーID課金』ではなく、『同時接続ライセンス』という料金体系を採用しており、登録ユーザー数に制限はありません。数万〜数十万人規模の大企業であっても、全社員をユーザー登録できます。ライセンス割り当て管理の面倒さはありません」
導入初期は、効果が出やすい領域から少数の同時接続枠でスモールスタートして、利用範囲の拡大に合わせてライセンスを柔軟に拡張できる。さらに、既存のExcel帳票や旧システムの画面からAIを活用してフォームを自動生成する移行支援機能も備えており、情報システム部門の移行負担を軽減する。
先行きが不透明で、技術の進化も加速する現代において、システム構築のセオリーは変わりつつある。佐藤氏は、奮闘する大企業の担当者に次のようにメッセージを送る。
「AIは猛烈な勢いで進化しており、今年の最適解が来年には通用しない時代になりました。大切なのは、変化を前提にトライ&エラーを繰り返しながら最適な業務の形を探る姿勢です。AgileWorksとAIを組み合わせれば、失敗のリスクを最小限に抑えて業務改善を進められます。トライ&エラーを楽しむ気持ちを持って、取り組んでください」
企業の成長とガバナンスを両立させて、AIという戦力を最大限に活用する。AgileWorksは、それを実現する有力な選択肢になるだろう。
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提供:株式会社エイトレッド
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2026年11月19日