Javaアプリケーションサーバのパイオニア、BEA Systemsは市場が拡大するにつれ、IBM、Sun、Oracleといった大手ベンダーの猛追撃を受けている。20億ドル規模ともいわれる市場の魅力のせいもあるが、J2EEサーバが次世代サービス基盤の本命として地歩を固めてきたからだろう。特にWebSphereを擁するIBMとのトップ争いは熾烈だが、日本BEAシステムズのロバート・スチーブンソン社長は、「実際に使ってもらえば、その差は歴然」と自信を見せる。昨年秋には日本でもdev2devプログラムをスタートさせ、J2EE技術者のすそ野拡大にBEAの使命を感じるとさえ話す。
ITmedia 2003年はUFJグループが総合金融プラットフォームとしてBEA WebLogic Serverを採用するなど、J2EE陣営にとって大きなニュースがありました。
スチーブンソン 2003年はJ2EEが次世代のサービス基盤として高く評価され、エンタープライズコンピューティングの本流となった年でした。企業がどの技術を利用すべきか明確になり、メインフレームのリホスティングやアプリケーション統合のプロジェクトが動き始めました。2004年はいよいよ本格的なJ2EEサーバ普及の年になるでしょう。
その一方で、この分野もベンダーの淘汰を経て成熟の段階に入ったと思います。幾ら宣伝がうまくても、実際に使ってみると、性能や機能の差は歴然です。Windows .NETやIBM WebSphereの追撃も心配されましたが、実際には大した脅威になりませんでした。BEA WebLogic Serverは安心して基幹系にも使ってもらえるデファクトとなりつつあります。
BEAシステムズとしては、米国ではポータルやインテグレーションの機能も統合した「BEA WebLogic Platform」やサービス志向アーキテクチャ(SOA)のメッセージが打ち出されていますが、日本はJ2EEアプリケーションサーバであるWebLogic Serverのビジネスが実ってきたところです。
ITmedia やはり日本のIT利用は米国に遅れをとっているということですか。
スチーブンソン いいえ、そうは思っていません。サービス基盤としてJ2EEを採用し、ビジネス環境の変化に合わせ、迅速なサービス展開を図るというのは、通信業界が先鞭をつけたと思いますが、それが日本のさまざまな業界で起こりつつあります。UFJグループが良い例です。
武道家として知られるスチーブンソン氏、合気道は黒帯
日本市場にユニークな特性としてブロードバンドの普及があります。こうした通信と日本メーカーが得意とするデジタル家電のコンバージェンス(融合)は、新たな市場を創造する可能性を秘めています。世界的に見てもメインフレームがたくさん残っているという市場特性があり、そのリホスティングというビジネスチャンスも多いのですが、個人的にはデジタル家電の領域が面白いと思っています。
BEAはこれまで製品ベンダーでしたが、今年、あるいは2005年はこうした新しいソリューションの開発にシフトする必要があり、日本市場がその開発拠点の一つになると思っています。
ITmedia ソリューションの開発にはパートナーの力が不可欠ですね。どのような枠組みを考えているのでしょうか。
スチーブンソン ISVパートナーを支援すべく、より一層の力を注いでいきます。J2EEをベースとしたコンポーネントビジネスは、これまで期待されながら、うまく行っていません。やはり、コンポーネントの再利用が難しいからです。
われわれは日本でも昨年11月、J2EE技術者の底上げを狙い、開発者支援プログラム「BEA dev2dev」をスタートさせました。J2EEの最新技術情報をdev2devサイトで発信していくほか、われわれの開発ツールであるBEA WebLogic Workshopを利用したJ2EE開発の効率化を促していきたいと思っています。
WebLogic Workshopでは「Javaコントロール」を再利用することで、J2EEに精通した技術者でなくとも、容易にJ2EE開発が行えるようになります。これまでJ2EEやBEA製品に縁のなかった技術者も取り込み、そのすそ野を拡大できると考えています。
これまでにもコンポーネントビジネスの理想はありましたが、市場を動かすには至りませんでした。われわれは、JavaコントロールのパワーとWebLogic Workshopというツールキットを開発者に提供することで、開発モデルを変えるという大きな役割を担っていきます。
ITmedia 日本のコンピュータベンダーやシステムインテグレーターは、J2EE開発のためのフレームワークを個々に持っています。それぞれに良いところもあるのですが、本当の効率化という点からは疑問もあります。
スチーブンソン WebLogic Workshopによってフレームワークの収れんが始まるとみています。
WebLogic Workshopではフレームワークを否定する必要はありません。フレームワークの優れた部分をラッピングして取り込み、新たな機能は選りすぐりのJavaコントロールを再利用すればいいわけです。ある機能を実現するコンポーネントは、結局のところ一つあれば済みます。優れた機能を提供するコンポーネントは価格を維持することができ、そうでないものはフリーになっていくでしょう。
開発モデルは「パッケージ」から「フレームワーク」へとアプローチを変えてきたわけですが、Javaコントロールによって、さらに柔軟でコストを抑えられるアプローチへと進化できます。
ITmedia ライバルたちは、WebLogic Workshopが開発者を囲い込むものだと非難しています。
スチーブンソン われわれにそんな考えはありません。J2EEのハードルは高い、EJB(Enterprise JavaBeans)は難解、情報システムに開発リソースがない……、大手企業のCIOといえどもなかなかJ2EE開発には踏み切れないのが現状です。
WebLogic Workshopの開発ライセンスは無償で、だれでもdev2devサイトからダウンロードできます。dev2devコミュニティーにとっては、WebLogic Workshopはオープンソース的なものになるかもしれません。自由に試してもらい、Javaコントロールを使ったJ2EE開発を促進したいと願っています。
これまで開発コミュニティーはSun Microsystemsによってそのすそ野が拡大されてきましたが、これからはBEAが彼らに代わってそれを加速させていく使命があるとさえ思っています。
2004年、今年のお正月は?
米国でクリスマス休暇を過ごしたあと、北海道でスキーや温泉も楽しむというスチーブンソン氏。年が明けてからは、読書をしながら今年の言葉を選び、書にしたためるという。「昔の武道家に鏡は欠かせなかった。私も毎朝、書を見ながらイメージトレーニングです」と話す。
2004年に求められる人材像とは?
IT業界では金太郎飴のような人が多いと嘆くスチーブンソン氏。ブロードバンドの普及で日本が大化けするかもしれない今、独創的な絵を描ける人が求められると話す。「勇気を持って、日々、自分を磨ける人がいい」と、実に武道家らしい。
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日本BEAシステムズ
[聞き手:浅井英二,ITmedia]