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Crystal Enterprise<SUP>TM</SUP>の導入で現場から経営判断まで一貫した情報活用が可能に

菊正宗の歴史

 菊正宗酒造は、その歴史を遡ると、1659年に嘉納家が神戸・御影で清酒の醸造を開始したころにその源流を見ることができる老舗の酒造メーカーである。品質を第一に考え市場を牽引してきた同社は、昭和50年代に「辛口の菊正宗」というメッセージでシェアを拡大し、業務用を中心に磐石の体制を作ってきた。

 しかし近年、割安感がある合成酒や焼酎の台頭に加え、それに伴う価格競争の激化など、清酒業界はまさに激動の渦中にある。清酒の総需要が伸び悩む中で、清酒の販売数量が増加しても利益は思うようには増えない。販売数量の増加効果が、広告・販促費の増加などに相殺されてしまっているためである。

 同社を取り巻く枠組みが大きく変化しつつあるこの現状を、「それまで免許制による、いわば護送船団方式に守られていた清酒業界だが、いきなり嵐の中に置き去りにされた気分」(菊正宗酒造 営業企画部 部長 半田吉彦氏)と述べていることからも、いわゆる大手でも安穏としてはいられない状況であったことがうかがえる。


菊正宗酒造 営業企画部 部長
半田吉彦氏


 この状況に対して、いち早く危機感を感じた同社が出した方針は「販売面での効率化」、「販売実績の把握」という2つの方針であった。具体的には、販売経費の効率的な使用が求められたほか、商品ごと、得意先ごとの収益状況、小売店の販売実績などを正確に把握していくことが求められたわけである。

 もちろんこれまでも、それらのデータは存在していた。しかし、データが紙ベースでやりとりされていたため、熟練した人間の「カン」、いわゆる経験則からおかしいと思われる部分を見つけ、経費処理のための約定システムから問題を掘り下げていく必要があった。

 紙ベースからの移行を実現するための切り札として導入されたのが、クリスタルディシジョンズのビジネスインテリジェンス(BI)ソリューションである。クリスタルディシジョンズは、企業内データを有効活用するBIの分野で、とくにレポーティングのリーディングベンダーとして知られている。ここで菊正宗酒造が導入したのは、あらゆるタイプのデータを様々な出力形式でインタラクティブにレポートする「Crystal ReportsTM 9」および「Crystal AnalysisTM 9」を統合し、Webブラウザからの閲覧も可能なレポーティングソリューションとして定評がある「Crystal EnterpriseTM 9」であった。

導入の背景と狙い

 菊正宗酒造がBIの導入に向けて具体的に動き出したのは2002年の9月。同社の経理部 システム課課長の福田恵司氏によると、この引き金となったのは、前述のような理由のほか、Visual Basicの限界があったという。それまでの社内システムは基幹システムのほか、データベースにMicrosoft SQL Server 2000、そしてVisual Basic(以下VB)で作成したプログラムをフロントエンドに据えた、いわゆる「作りこみ」の世界だった。しかし、Visual Basicでは実用に足るものになるまでに、開発期間も長期になるなど、必然的にシステム部門に負担がかかっていた。

「もちろん、時間をかければこれらを従来の紙ベースのままでも推し進めることはできたかもしれないが、たとえば、提出された書類を数年後に確認したい、などといったニーズに応えるのは現実問題として無理と考えていた。Crystal Enterpriseを導入するとしないでは雲泥の差となっていただろう」(福田氏)


菊正宗酒造 経理部 システム課
課長
福田恵司氏

 こうして9月から各社製品の検討が開始された。評価に関しては、福田氏他のシステム部門のスタッフを中心に2か月程度行ったという。ここではBIベンダー5社程度に実際にデモを行ってもらうなどし、それらを慎重に判断した結果、最終的にCrystal Enterpriseを含む2製品に絞り込んだ。ここで最終的な判断の指標となったのは、

 「Crystal Enterpriseはそれまで使い慣れていたVBとの親和性が高く、非常に柔軟で開発しやすいことが1点。もうひとつは、Crystal Enterpriseのほうが全体的なレスポンスが軽かったことと、既存のシステムに新たに専用のSQL Serverを立てる必要がないなど、システムを膨らませずにすむことが決め手となった」(福田氏)

 なお、菊正宗酒造の基幹システムに格納されているデータは、190万件におよぶ酒販店データと、30万件の経費管理データという規模を持つ。月に数回更新される酒販店データは、1か月あたり約10万件程度、ほぼ毎日のように更新される経費管理データは、1年あたり約10万件増加し続けている。これらのデータ量は小売店のデータだけで1Gバイトを超えるサイズになるが、実際のところ、ハードウェアの追加はCrystal Enterprise用のサーバを1台追加するにとどまったという。

検討に2か月、実際の開発は3か月で

 同社のBIの構築は、コーディネーターを担当した兵庫リコー株式会社と、SIである株式会社日立オープンプラットフォームソリューションズ(OPSS)がその開発を支えていた。

 OPSSは、菊正宗酒造のシステム課に常駐し、菊正宗酒造からの聞き取りやデータ型の調整などを含め、約2か月にわたり徹底した討議を行いシステムの全体像を描き出した。そして、実際のシステム構築は、約3か月という短期間で完了している。ここに「最小投資、短期開発、即効性」というBIの特性を見ることができる。

 「私は従来ホスト系の基幹業務でシステムの開発に携わっていました。今回、製品の戻入情報の照会画面をCrystal Enterpriseの環境ではじめて開発したのですが、非常に簡単に、短期間で行えました。」(菊正宗酒造 経理部電算課 課長代理 鑪野史明氏)


菊正宗酒造 経理部電算課
課長代理
鑪野史明氏


 「システムの導入はOPSSにお願いしましたが、実際に開発に使用してみた感想はVBやCOBOLを使うことに比べれば非常に簡単に、効率的に開発が行えます。データベースソフトでレポートを作成した経験があればまったく問題なくすぐに使用できます。サポートに関しても、月曜に問い合わせを出した場合、どんなに遅くとも金曜には回答があったので、安心できました」と福田氏は驚きを隠さずに話す。

「システム構築にあたって苦労した点として、経費の支払先と商品の出荷先のデータは異なるため、それらをどのように連結させるかが問題でした。また、データ形式の統一やパフォーマンスなどでいくつか問題が残っていたので、それらに対してさまざまな改善を行うことで、ようやく思い通りのBIを構築できたのです」(株式会社 日立オープンプラットフォームソリューションズ プラットフォームエンジニアリング本部 PE部 技師 月原 正幸氏)

 半田氏も同様に「あくまでBIはツールですので、短期間にここまでの利用価値が高いものを構築できたのは期待以上でした」と述べている。

菊正宗のシステム構成

 こうして構築された、菊正宗酒造のビジネスインテリジェンス。基幹システムとの連携によるデータの流れは次のようになる。

 菊正宗酒造のシステム構成は、Crystal Enterpriseが動作するWindows 2000サーバが1台、基幹系と連携するSQL Server 2000が動作するWindows 2000サーバが3台、サイボウズのグループウェアが動作しているLinuxサーバが1台となっている。また、データのバックアップに関しては、バックアップ専用のサーバを別途用意し、定期的にデータをそちらに移しているという。外部とはNTTのBフレッツで接続しているが、音声優先の仕様となっており、インターネットVPNで利用した場合のデータ転送速度は2Mbps程度だという。

すでにユーザーは100名強、全ユーザーへの拡大が目標

 すでに2003年4月の段階で開発自体はほぼ終わっていたが、レポーティングツールの特性として、ある程度のデータが集積されないと誤差を多く含んだ結果が帰ってきてしまうので、データの準備やパフォーマンスのチューニングなどを行い、実際のユーザーが利用を開始したのはこの9月からだという。

 「実運用からまだそれほど経っていませんが、札幌、東京、名古屋、大阪、神戸、福岡といった各地域の販売部門のスタッフを中心におよそ100ユーザーが利用しています」と半田氏は成果を紹介する。

 レポートへのアクセスは、通常使用するグループウェアにインターネットVPN経由でアクセスし、そこからCrystal EnterpriseのWebデスクトップである「ePortfolio」へ接続。「ePortfolio」から各レポートをアクセス、閲覧する形となっている。各ユーザーは、データベースを意識することなく、自由自在に約定データ、経費管理、予算管理などのレポートを確認しているという。

 しかも、レポートの閲覧などに関して、エンドユーザーに特別なトレーニングは行っていないという。データベース構造やSQLの知識がなくても、ユーザー自身で複雑な情報を紐解くことが可能という認識が広まった事は、迅速で効果的なマーケティング活動の手助けになるといえる。

 また、これらのレポートは、Crystal Enterpriseが持つ機能の1つであるユーザーごとのアクセス制御が行われている。たとえば、セールスが閲覧できるのは返品率のレポートだけで、マネージャになると、経費管理などのレポートも閲覧可能になるといった具合だ。現在は支店ごとで販促予算が違うことなどもあって他支店のレポートを見ることができないが、「支店間の競争を促進する意味でも、今後オープンにしていく」(半田氏)という。

画面

導入効果

 BIを導入したメリットについて、菊正宗酒造では次のように分析する。

 「これまでは、1件1件の把握はできても、全体としての把握というのは非常に困難だった。しかし、Crystal Enterpriseを使うことで、約定のおかしな部分が、どの小売店で、どの製品に多いのかなど、効果的に販売経費を使用するための情報が見つけやすくなった。また、卸店が小売店に対して行った値引きの額までもチェックできることで、より正確な判断が下せるようになったことが大きい。結果的に全体の流れが1本の線のように見えることは期待以上のものだった」(半田氏)

 続けて同氏は、「正直なところ、BIといっても、これまで紙で提出されていた帳票が、Webブラウザから確認できるようになる、といった程度のものを考えていた。しかし、実際のところは、表示されているデータで気になるところを必要であれば大元の部分までドリルダウンで確認していくことで、注目すべき点を数回のクリックで簡単に見つけられるようになった。これには驚いている」と語る。

今後の展開

 今後の展開としては、現在100名強の利用者をより拡大し、全社員に相当するレベルまで拡げることや、小売店実績や販促費などのレポートを全社員に開示していくことを予定しているという。これにより、広範なエンドユーザーが、データをもとにスピーディな意思決定を行い、営業全体のスピードアップに貢献することを目指しているという。

 また、ツールとしてのBIに対しては、要求ごとにレポートを作成していては処理も重くなってしまうので、絞り込んだ表示を行うために詳細なパラメータ入力画面を実装するなど、使い勝手を向上させるための画面の作りこみを行っていきたいと、「作りこみ」の部分に期待を寄せる。

 また、半田氏は、BIを導入したことで利用者のマインドに変化が感じられると話す。

 「特約店や小売店、さらには卸売店固有のデータを簡単に確認でき、小売店ごとの戦略政策に柔軟に対応できます。また、何か変化や問題が生じた時に即座にドリルダウンを行い、視点を変えるなどして問題を確認できます。こうしたデータ活用の機運が急速に高まっていることを日々実感しています」と感動している。

 「また、支店長クラスになると、そこに集約される情報は膨大なものになります。その中には、自分が直接関与していないようなものも含まれることがあります。営業本部長などならなおさらです。そのような何も知らない状態からでもすぐに問題点を指摘できる。BIの導入というと、すぐにROIなどの話が持ち上がりますが、むしろ、これまで丸1日かかっていたような作業がさっと終わってしまう。こうした時間のコストが大幅に削減できたことに大きな意義があるのではないかと思います」(半田氏)

 経営判断だけでなく、現場レベルまで広く活用することで、すべてにわたって競争力をつけることのできる考え方であり、手法であり、同時にツールでもあるBIの導入は、同社にとってサプライチェーン的な機能、つまりSCMの役割を果たすことにもなっているといえる。

 他社や世相の動向によって品質や価格を下げることなく、データに基づいた納得できる価格を提示することで販売革新を進める。その基盤となるものこそが、Crystal EnterpriseTMを使った「情報共有」だといえる。酒造業界でも過不足のない受発注と販売機会の損失回避は至上命題である。その根拠となる部分を的確に照らし出すBIツールを手に入れた菊正宗酒造の今後の動きに期待したい。

ユーザー プロフィール

菊正宗菊正宗酒造株式会社

本社:〒658-0046 神戸市東灘区御影本町1-7-15
設立:大正8年11月10日(創業1659年)
資本金:1億2,696万円
従業員:450名
業務内容:日本酒製造、販売および輸出

菊正宗 Webサイト


Crystal Decisions, Inc.

Crystal Decisionsは、1500万件のライセンス出荷実績を誇る、BI(ビジネスインテリジェンス)ソフトウェアおよびサービスにおける世界トップベンダーの1社です。1984年以来、Crystal Decisionsは優れた意思決定を下すために企業の従業員、パートナー、顧客が必要な情報へ最も迅速にアクセスし、最終的に生産性を高めることを可能にするソリューションを世界中の成功企業へ提供しています。エンタープライズレポーティングの分野において「Crystal」は最も信頼できるブランドとして広く知られており、360社を超える独立系ソフトウェアベンダー(ISV)がCrystal Decisionsのソリューションに基づいた標準化を行なっています。現在Crystal Decisionsは、カリフォルニア州パロアルトの本社を中心に、世界25か所のオフィスを拠点としてビジネスを行なっています。

Crystal Decisions Webサイト


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