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蜂の友はLinux? StingerはRDBMS市場を変えるか

間もなくリリース予定の「DB2 UDB(Universal Database) V8.2」は、Linuxカーネル2.6に対応するなどし、大きく変貌を遂げようとしている。

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 9月7日、8日の2日間、日本アイ・ビー・エム(日本IBM)が開催した「IBM Linux コンファレンス〜秋のLinux祭り〜」では、Stingerについてのセッションも行われた。

 Stingerといえば、ここ1年あまり、細切れに披露されてきたDB2の最新バージョン、「DB2 UDB(Universal Database) V8.2」のコードネームであり、間もなくリリースされることもあってその特徴が具体的に紹介された。講師は日本IBMソフトウェア事業部の下佐粉昭氏が務めた。

Linuxカーネル2.6対応で何が変わるか?

 Stingerは既存製品から大幅な機能強化が行われるというのは前々から言われており、それが世間の興味をかき立てる演出となっていたが、その特徴は大きく2つに分けられる。64ビットLinuxへのフル対応と、先進的なオートノミック機能やHADRと呼ばれる高可用性リカバリ機能である。

 全面的なLinuxへのコミットメントを以前から表明しているIBMは、これまでのDB2でもLinuxに対応していたが、Stingerではこの部分が大きく強化されている。具体的にはLinuxカーネル2.6への対応と、64ビットLinuxのフルサポートである。POWERプラットフォームのpSeries、iSeriesへの対応、そしてzLinux(Linux on zSeries)での64ビット環境もサポートされた。

 これらの機能強化により、バッファプールサイズの制約がなくなるなど、大容量のデータ処理、つまりはパフォーマンスの向上につながるのである。

 そもそも、Linuxカーネル2.4系とデータベースの組み合わせというと、悩みどころが多かったのが実情だ。例えば、ほかの商用UNIXやWindowsにあるようなI/O機能がなかったり、ファイルキャッシュがメモリを食いつぶしてしまうようなメモリまわりの問題、そしてCPUの数を増やしても、ある程度でスケールしなくなることなどだ。

 これらの問題は比較的最近のLinuxカーネル2.4系では一部改善されているが、Linuxカーネル2.6に対応することで大きく改善される。I/O周りは、非同期I/O、ダイレクトI/O、ベクターI/O、で、メモリまわりの問題については、ラージページのサポートなどで前述のような問題を解消している。また、NUMAサポートやNPTL、I/Oスケジューラ機能などもこれまでの問題を改善するために大きく貢献している。

 参考までに、上記のI/O周りの設定を紹介しておこう。なお、Linux側の設定などは割愛しているほか、変更される可能性もあることを記しておく。

  • 非同期I/O

db2set DB2LINUXAIO=true(libaio.soが必要)

  • ダイレクトI/O

CREATE TABLESPASE時に「NO FILE SYSTEM CACHING」を指定

  • ベクターI/O

de2set DB2_SCATTERED_IO=ON

writev()は使用していない(書き出しは非同期I/Oで最適化)

「監視の自動化」から「対応の自動化」に

 Stingerのもうひとつの特徴は先進的なオートノミック機能やHADRと呼ばれる高可用性リカバリ機能である。

 オートノミック機能は管理の自動化が大きく前進している。「Automated Object Maintenance」と呼ばれる機能により、DBの稼働状態が常にチェックされ、自動的にバックアップを行ったり、テーブルの再編成要否を判定し、自動再編成(REORG)を行ったりできる。しかもこれらはあらかじめ、マネジメント・プロファイルで、自動バックアップや自動再編成を実行してもよい時間帯や曜日、条件を細かく設定できる。

 また、何らかのアラートが出た場合、リコメンデーションアドバイザが、アラートがどのような要因で発生したか、その緊急度は? などを判断し、問題を解決するためのアクションにはどのようなものがあるか、さらにはアクションを行うことでどのような結果になるかをガイドしてくれる。

 HADRは、IBM Informixの機能であるEnterprise Replication(ER)機能とHigh Availability Data Replication(HDR)機能を取り込んだもので、ログ転送を基にしたデータレプリケーション機能といえる。ERは物理的に離れた場所にあるDB同士を結んでスタンバイ状態にし、HDRは1つのサイト内でDBを多重化する機能だ。これらの作業もGUIから行えるようになっており、極めて簡単に高可用性構成を構築できるようになっている。

 単なるスケジューリングによる作業の自動化であれば、オートノミックとはお世辞にも言いがたいが、Stingerではこうした「監視の自動化」からさらに一歩進めて、「対応の自動化」が図られているところが注目したい点である。

 もちろんこれ以外にも、VBやC#などの汎用的な開発言語を利用して、ストアド・プロシージャやUDFを作成可能になるなどの新機能があるが、Linuxカーネル2.6と64ビット環境への対応、そしてさらに進化したオートノミック機能などの実装により、パフォーマンスやコストメリットが期待でき、エンタープライズ分野におけるLinuxとDB2を組み合わせた採用がますます加速することが予想される。

 なお日本IBMでは明日9月10日、東京コンファレンスセンター品川にて、「DB2 Day 2004」というStingerの新機能などを紹介するセミナーを開催予定となっている。多くのユーザーが注目しているようで、ほとんどのセッションが満席となっているが、まだ一部セッションには空きがあるようなので、興味がある方はこちらのページから申し込んでみるのもよいだろう。

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