SharePoint Portal Server 2003の導入・構築時に考慮すべき点は
今年のTech・Ed 2004では、対象ユーザーが開発者だけでなくITProにまで拡大された。そのことをよく反映しているのが、SharePoint Portal Server 2003などのインフォメーションワーカー向けアプリケーションの導入に関するセッションである。
SharePoint Portal Server 2003(SPS)は、企業の情報共有環境を構築するためのポータルアプリケーションである。その導入と構築にはさまざまなノウハウが必要となるが、その手がかりを提供したのが、マイクロソフト エンタープライズサーバービジネス本部 テクノロジースペシャリストの鈴木幸子氏によるセッションだ。
SPSは高い可用性と拡張性を備えている製品ではあるものの、時間的経過などに伴う要件変更が出てきた場合にも困らない導入法やシステム構築には、やはり一通りのセオリーと勘所がある。鈴木氏のセッションははじめに、SPSで作成されるポータルサイトとその背後にあるDBの関係など、構築時に知っておかなければならないSPSのアーキテクチャから解説が行われた。
SPS自体は5つのコンポーネントから構成されるアプリケーションだ。Webコンポーネント、検索コンポーネント、インデックスコンポーネント、ジョブコンポーネント、そしてSQL ServerをベースとしたDBである。
これらをすべて一台のサーバ内に配置して構成することも可能だが、それぞれを複数のサーバに分散して配置することもできる。これをファーム構成と呼び、これによって多重化による負荷分散や信頼性向上、パフォーマンス向上が期待できる。
ファームには構成DBが1つ存在し、全体的な動作の制御をつかさどる。そして、ファーム内に作成されるポータルごとに、ポータル用DB(コンテンツデータベースなど)が作成される。
コンテンツデータベースにはサイトコレクションが格納される。これはサイトの集まりで、トップおよびサブサイトをひとかたまりとして考えたもの。複数のサイトコレクションを作成すれば、ポータルとチームWebと個人用サイトを分離しておくすることができる。これにより堅牢性やセキュリティを確保することができる。
実際のインフラ設計では、まずサーバ構成(トポロジ)を以下の4つから選択することから始まる。シングルサーバ、小規模ファーム、中規模ファーム、そして大規模ファームだ。
それぞれにはメリットとデメリットがある。例えばシングルサーバは、一台のサーバにすべてのコンポーネントをインストールするもので、最も素早い稼働開始が期待できるが、負荷分散や二重化ができないといった問題点もある。
これらのうちどれを選択するかは、目安としてユーザー数があげられるが、それだけで判断するのは危険だと鈴木氏は言う。
これはその後に行うストレージのサイズ判断などにも共通するが、できるだけ利用要件(必要となる機能や可用性、期待するスループットなど)を洗い出し、それをもとに検討することが大切だ。
もちろん、SPSは柔軟な拡張性を持っているため、導入したあとでも構成変更は可能だが、トポロジによってはサポートされないコンポーネントの配置もあるため、できる限り早い段階から吟味しておくことが望ましい。
次に考えることは、共有サービスの利用とチームWebサイト、個人用サイトの配置法である。共有サービスは、企業内で複数のポータルを導入する際などに有効だ。複数の部門ポータルで同じサービスを利用でき、統一した管理やサービスの重複を避けることができる。
その利用は「対象ユーザー」で設定するが、共有元ととなる親ポータルで一括して設定できる。なお、この機能はデフォルトはOFFで、一度設定すると元に戻せない。
チームWebサイトの配置については、3つの形態から選択する。規定の配置、イントラファーム、インターファームだ。これも利用要件によって選択するが、分散化と堅牢性、そして口述するバックアップの柔軟性も考慮に入れておくことが大切だ。
そして最後が、検索で利用するインデックスファイルをどこに置くかということである。インデックスファイルとは、インデックスコンポーネントが作成し、利用者からの要求をもとに検索のコンポーネントが利用する全文検索のためのDBである。
この2つのコンポーネントを別サーバに置く場合は、インデックスファイルを定期的に検索コンポーネントへ伝達する必要(プロパゲート)がある。データサイズが大きい場合や頻繁なインデックス更新が行われる場合はこのファイルサイズも大きくなるので、専用のネットワーク化なども検討する必要がある。
SPSの導入・構築には、以上のような点を踏まえて行うことが望ましい。ただ、前述したように、SPSは高い拡張性と可用性を備えているため、企業や部門の成長に合わせて規模を広げていくことも可能だ。その点では、導入時のわずらわしさや負担が少ないポータル製品であると言える。
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