古い64ビットマシンをフリーソフトウェアで復活させよう:Leverage OSS(2/2 ページ)
初めての64ビットプロセッサ「MIPS R4000」がワークステーションに搭載されてから14年が経った。さまざまなアーキテクチャと64ビット設計の盛衰を振り返るとともに、64ビットアーキテクチャの去来を考える。
互換性の問題
その他のアーキテクチャがパフォーマンスを低下させたり開発者やユーザーに不便を強いたりせずに32ビットバイナリと64ビットバイナリの互換性を実現しようとして苦労していたのに対し、AMD64とEM64Tは32ビットバイナリとの完全な互換性を実現しており、それがビジネス上の大きな利点になった。
Robert Frances Groupの主席ビジネスアナリスト、マイケル・ドーチ氏はこう語った。「開発側の視点からすると、64ビットプロセッサに限らず新しいアーキテクチャが成功するための要件は、現在の技術とリソースを最大限に利用でき、なおかつ新しい技術とリソースへの投資は最小限で済むということだ。これは特に社内開発者や、商業開発者の中でもリソースの制約が特に大きい開発者にとっては真実である」。
64ビットシステムが成功するかどうかに関しては、メーカーのソフトウェア互換性、価格、サービス、品質が最も重要な鍵を握っているとドーチ氏は述べている。「企業はチップやコンピュータを買うわけではなく、コンピューティングそのものを買うわけでもない。企業が買うのはビジネス上の問題に対するソリューションであり、その問題に最もよく適合し、信頼性とパフォーマンスが最も高く、価格が最も安いソリューションが勝利を収める。このようなソリューションを作り上げ推進していくために必要なアプリケーション、パートナー、サポートから成る「生態系」を各種の技術の周辺に構築できるかどうかは、64ビットアーキテクチャの開発者にかかっている。そうでなければ、64ビットアーキテクチャは、コンピュータマニア同士がする、一般のビジネスマンには理解もできなければ興味も持たれないようなマニアックな会話のトピックにしかならないだろう」。
さらにドーチ氏は、AMD Opteronベースのサーバの売り上げを牽引しているのは明らかにSun Microsystemsであると述べている。Sun Microsystemsは、以前は同社のハイエンドマシンでもっぱらUltraSPARCプロセッサを使用していたからだ。「その他の64ビットアーキテクチャは、膨大な計算処理を必要とする特殊なケースを除いては、企業にとってそれほど重要な意味を持たないと思われている」とドーチ氏は語った。そして今日では、膨大な計算処理を必要とする場面ではどんどんItanium 2が使われている。つまり、強力で安価な64ビットマシンがワークステーション市場で優位を占めるようになっており、古い比較的高価なアーキテクチャは、価格やパフォーマンスという点でもはや太刀打ちできなくなっている。
今のところ、垂直的な拡張性を持つSPARC64は例外と言えるだろう。1つのシステムに9つ以上のCPUが必要な場合には、OpteronやXeonよりUltraSPARCの方が効率的である。OpteronやXeonの設計では、8CPUよりも大規模なシステムは想定されていないからだ。
SPARC64には垂直的な拡張性という長所があるが、その一方で、アーキテクチャ上の短所もいくつかある。OpenBSDプロジェクトのTheo de Raadtは、各種のプラットフォーム上でのバイナリ互換性の問題に取り組んでいる人物だが、彼はこう述べている。「完全な64ビットモードのSPARC64は、ビッグエンディアンの64ビットで実行している。ビッグエンディアンとリトルエンディアンのエラーはいつでも問題を引き起こすが、32ビットと64ビットの問題も同様である。しかし、64ビットとビッグエンディアンを組み合わせると、非常に厄介なプログラミングアーキテクチャになってしまう。そのおかげでバグができ、バグを修正することになるが、コードはたくさんのアーキテクチャ間で共有されているので、すべてのコードを見直さなければならない」。
ハードウェアアーキテクチャの寿命を延ばす要素の1つは、ソフトウェアサポートがあるかどうかだ。フリーソフトウェアは、既に死んだ(または死につつある)アーキテクチャに移植されて、そのアーキテクチャに新しい命を与え、古いプロプライエタリなUnixから解放するということがよくある。NetBSDプロジェクトはその移植性で名高く、50種類以上のハードウェアアーキテクチャで完全にサポートされている。GNU/Linuxは20種類以上、OpenBSDは16種類以上のアーキテクチャで利用できる。いずれもSPARC32システムと、ほとんどのSPARC64システム、AMD64/EM64T、Alpha、PA-RISC、さらに各種のMIPSおよびPPCの実装で使用できる。
フリーソフトウェアOSを使用すれば、古い64ビットシステムを再び役立てることができる。各種のBSDまたはGNU/Linuxを使用すれば、ある程度のデスクトップ機能を実現したり、古いワークステーションを小規模なサーバにしたりできる。また、eBayでは驚くほど安価なワークステーションがしばしば売りに出されている。
今後の展望
これまでに述べてきたアーキテクチャと64ビット設計の盛衰は、あくまで学術的なものである。今後の64ビットアーキテクチャの去来は、市場の動向によって左右されるだろう。最も安く、最も信頼性が高く、最もサポートが手厚く、最も強力なものだけが勝ち残ると思われる。ドーチ氏はこの点を次のように言い表している。
「ユーザー(または非IT系役員)の視点からすると、最も良い64ビットアーキテクチャとは目に見えないものだ。つまり、ユーザー側が感じるのは、アプリケーションがこれまでより速く実行され、より快適に利用できるということだけである。IT系役員の視点からすると、最も強力な64ビットアーキテクチャとはやはり透過的なものである。つまり、現在の32ビット環境やその他の環境できちんと動作し、可用性やパフォーマンスといった運用上の特性を改善し、その改善点をビジネス上の価値に転化するときの手間が最小限で済むようなものを指す。言い換えれば、『フォークリフト不要のもの』ということだ」。
古いAlphastationのパレットを倉庫から引き出してくるにはフォークリフトが必要になるかもしれないが、GNU/Linuxを使用すれば、それを新しいバックアップサーバとして利用することができる。いずれは、コンピュータの中に何が入っているかをあまり気にせずに済むようになるだろう。それよりも、そこでどんなソフトウェアが実行され、それがどう役に立つかのほうが重要である。
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