「誠実にこなす」だけでは不十分なヘルプデスク
インシデント処理に情熱を注ぐヘルプデスクの社員たち。しかしなかなか従業員の満足度は向上しない。各インシデントばかり見ていても、本質は見えてこない(攻めのシステム運用管理)。
インシデント処理に情熱を注ぐヘルプデスク。だが、従業員の満足度は一向に上がらない。このような場合は、各インシデントに目を向けるだけでなく、一歩離れた次元から全体を見渡してみると、本質的な事実に気付くことがある。
多忙を極めるヘルプデスク
わが社の派遣社員3名で構成されるヘルプデスクでは、毎日非常に多くのインシデントが発行されていた。その多くがハードウェア故障関連であり、その度にヘルプデスク要員が現地に駆けつけ、対応に当たらなければならないものであった。あまりのインシデントの多さに派遣社員の間からは、ヘルプデスク要員の増員が熱望された。しかし、ヘルプデスクを管理すべき正社員は日常業務が忙しいというく、ヘルプデスク業務自体に関心を示さず、結果的に増員されないでいた。
ある日ヘルプデスクを管理すべき正社員のPCが故障した。長時間使っていると、ごくまれにマシンがフリーズしてしまうという症状だった。最初はOSの問題を疑って再インストールを試みたが、しばらく使っているとやはり同じ症状がでてしまう。
ハードウェア故障を疑った正社員は、早速ヘルプデスクに電話した。ヘルプデスクの対応の中で、これは間違いなくハードウェア故障であるとの回答を得たが、やり取りの中で気になる発言があった。「今回のような故障対応は毎週のように受けているので、ハードウェア故障と断言できる」というのだ。
この発言が気になった正社員は、早速過去のヘルプデスク対応履歴を調べてみることにした。すると驚くべきことが分かった。ヘルプデスク担当者が言うように、同様の障害は確かに頻発していいる。よく調べてみると、故障しているPCはすべて同じ時期に購入した同一モデルのPCであった。
メーカー対応
障害発生の疑いがあるPCすべてのパーツを予防交換してもらうためこの事実をPCメーカーに突きつけた。するとメーカーからは一度調査をしてみたいとの回答が来た。しかし、今回の症状はまれにしか発生しないため、メーカー内でのテストでは症状が再現しない。症状が再現できないと対応できない、とメーカー側は主張する。頑なな対応に憤慨しつつも、粘り強い交渉を続けた。
最終的な決め手となったのはヘルプデスク対応履歴であった。対応履歴を見ると、誰がどう見てもすべて同じ時期に購入した同一モデルのPCに、同様の障害があると考えざるを得ない。これが決め手となってすべてのPCのパーツを予防交換してもらえた。予防交換の効果はてき面で、それ以来同様のインシデントが大幅に減った。当初ヘルプデスク要員増員が求められていたが、これにより現在は逆に問い合わせのない暇な時間が増えたくらいである。
ヘルプデスクの本質的な存在意義が従業員の満足度向上にあるとすると、ただ「各インシデントを誠実にこなす」だけでは不十分である。インシデント履歴を常時分析し、常に問題の本質を改善していくことが必要だ。
※ITILでは、ヘルプデスクを「サービスデスク」と呼んでいる。これは従来のヘルプデスクを発展させたもので、ヘルプデスクの主な役割が障害や操作問い合せの受け付け窓口であるのに対し、サービスデスクは業務とシステムの双方についての知識を持ち、ユーザーからの問い合せに対し、迅速に回答すると定義されている。
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若葉田町
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