Web情報の公開で、多品種変量の注文に応える――多摩冶金:業種は違えど、ヒントを得られる(2/2 ページ)
東京多摩地区は、金型製作、メッキ、研磨といった小規模な工場が集中しているエリアだ。金属熱処理を専門とする、多摩冶金株式会社もここにある。同社は、Webを利用して自社工程を顧客に公開し、業務の効率化と顧客満足度の向上、営業力の強化を図っている。
最近は、納期に対する顧客の要求がより厳しくなっているという。「何日に納品」ではなく、「何時に必ずくれ」という要求なのだ。
「お客様からは状況を問い合わせるお電話をいただきますが、すべてに答えていたら事務処理が滞ってしまいますし、答えないと不満を持たれてしまいます」(間宮氏)
オフコン時代には、作業状況を事務員が確認するシステムを入れ、それを事務員が電話で顧客に伝えていた。
「それだけでは面白くないので、どうせならこの際、情報をWebで公開してしまおうということになりました」(間宮氏)
同社に処理を依頼した顧客には、IDとパスワードが発行される。顧客は、Webブラウザで多摩冶金のページにアクセスすれば、自分の注文が今どの工程にあるのかがわかる。さらに、同社の作業予定スケジュールも公開されており、登録すれば誰でも自由に見られる。情報を公開するというのはシンプルな発想だが、その効果は絶大である。まず、顧客からの電話が減るため、事務処理の効率が上げられる。作業予定が公開されているので、顧客の方がそれにあわせて前後工程を決められる。
「Webを見たお客様からの「こっちはあとでいいから、そっちを先にやってくれ」といった要望にもすぐ対応できます。また、運送会社に外注しているお客様はその会社にIDを教えておくことで、品物ができたときに取りに来させることもできるでしょう」(間宮氏)
作業予定を見に来た会社の担当者に対して、営業をかけるといった展開も可能だろう。
社内の問題点をしっかり把握する
話をうかがっていて感じたのは、間宮氏、兼村氏とも、システムの内容について実に詳しいということだ。
「まず、自社を見つめてどこが悪いのか問題の切り分けをすることが重要です。納期を早くしたいから何とかしたいとか、問い合わせを減らしたいとか。そういうところから入らず、ITさえ入れれば何とかなるだろうと思っていると、おかしなことになってしまいます」(兼村氏)
「国や自治体の事業ではITコーディネータを派遣していますから、こうした人材を活用するのがよいでしょう。ただし、出来合いのシステムを売り込まれても、たいてい役に立ちません。会社の業務について親身になって相談してくれる人、最後まできちんと責任を持ってくれる人を選ぶ必要があります」(間宮氏)
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