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ヒューレット・パッカードが挑んだ世界最大級規模のシステム統合がもたらしたもの“過去”からの脱却――エンタープライズ・サーバー選択の新常識

ITコストが既存システムの維持・管理にばかり割かれ、革新的な部分に投資されていない――肥大化したシステムを抱えていては、変化の早い市場環境に取り残されることになりかねない。システム統合の重要性を顧客に説くヒューレット・パッカード自身も、そんな悩みを抱え、システム統合へと歩を進めた一社だった。

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昨今、企業が注目するトレンドの1つとして、システム統合が挙げられる。部門や事業部といった単位で分散化してしまったサーバやストレージを統合することで、重複するシステム投資やデータを減らし、運用管理の効率化も図ることができるシステム統合は、変化の激しい市場環境への対応、組織の統廃合や企業合併といった動きの中で、「軽くて速い」組織を目指す企業にとってはもはや必要不可欠なキーワードとなっている。ここに、「軽くて速い」組織を目指し、世界最大級規模ともいえるシステム統合を推し進めた企業が存在する。それは、システム統合の重要性を顧客に説くヒューレット・パッカード自身であった。

システムの肥大化がイノベーションの足かせに

 2001年9月、ヒューレット・パッカードは、コンパック・コンピュータを買収するという電撃的な発表を行った。この合併により、大規模サーバおよびノンストップサーバからパソコン、プリンタに至るまで幅広い製品群を取り揃えるコンピュータメーカーが誕生したのだ。

 コンパックは、それに先立つ1997年にタンデム・コンピューターズを買収、続けて1998年にはディジタル・イクイップメント(DEC)を買収し、パソコンメーカーからコンピュータメーカーへの脱皮を図っていた。2002年のヒューレット・パッカードによるコンパック買収が正式に完了した段階では、2社の合併というよりも、むしろ、タンデム、DECを含めた4社による合併と表現した方が実態に合っていた。

久保 耕平氏
マーケティング統括本部 インフラストラクチャー ソリューション本部 担当部長 久保 耕平氏

 「成長とコスト削減を同時に達成すること、それが情報システム部門に求められた要件でした」と当時を語るのは、日本ヒューレット・パッカードのマーケティング統括本部インフラストラクチャソリューション本部・久保耕平担当部長。続けて、「合併時点での情報システムは肥大化していて、成長のための情報システム投資が困難な状況にありました」と話す。

 2002年5月に、新生ヒューレット・パッカードがスタートした時点における情報システム投資は、売上高対比で4.6%と、一般的な企業と比較しても高い比率となっていたのに加え、その多くが、インフラの維持やアプリケーションの維持に割かれていた。

 「合併直後のITコスト構造を見ると、約72%が既存システムの維持にかかわるものでした。その一方で、新たな分野への戦略的投資は、わずか28%に留まっていたのです」(久保氏)


ITコスト構造を「維持・管理」から「革新」へ。肥大化したシステムを抱えていては成長も容易ではない

 さらに、社内には、7000を超えるアプリケーション、2万5000台のサーバ、300にのぼるデータセンターが存在し、まさに情報システムの肥大化という問題に直面していたのだ。

 デスクトップ環境の標準化の問題や、運用管理プロセスの統一といったルール面での見直しも早急に取り組まなくてはならない課題だった。

 「アプリケーションごとにサーバやストレージを導入していたために投資コストは年々増え続け、それによってソフトライセンス費用も増加していました。また、平均18%というITリソースの利用率に留まっていたサーバが林立していたため、ITリソースが有効に活用できず、システムの複雑化による開発の遅れも表面化してきていました。重複し、しかも統一されていないサポート体制なども考えると、情報システムが抱えていた課題は大きかったといえます」(久保氏)

「Adopt and Go」方式で迅速な統合を図る

 ヒューレット・パッカードでは、こうした事態を憂慮し、事業の統廃合への取り組みとともに、情報システムの統廃合を重点課題として取り組んだ。

 設定されたゴールは、2007年10月までに、情報システム投資コストの52%を戦略的投資に当てること、アプリケーション数は1500に、サーバ数は1万に、データセンターは11に削減。そして、IT投資コストは売上高の3%に引き下げるというものだ。さらに、2005年には、この目標値が上方修正され、サーバは6000に、データセンターは6つに、ITコストは売上高の1.5%以下を目指すことになった。


ヒューレット・パッカードが情報システムの統廃合について掲げる2007年10月までの目標を見ると、変化適応型の企業、つまり、アダプティブ・エンタープライズとなるべく自身も歩んでいることが分かる

 情報システムの統廃合に際し、同社は「Adopt and Go」と呼ばれる手法を採用した。これは全社的な事業統合の中で採用された手法で、ヒューレット・パッカードおよびコンパック・コンピュータの合併で発生する重複する事業、製品ライン、人事などの各種施策などで最善となる一方を選択し継続させるという方法だ。事業統合を最短に進める上で、迅速に意思決定ができる手法として、同社が採ったやり方である。

 情報システムに関しても同様の手法が採られ、各システムにおいて最善と思われるシステムが選択され、それをベースに拡張していくことになった。

プロセスの標準化と仮想化技術の採用が鍵に

 また、標準化できるものについては、標準化の作業を開始。営業、マーケティング、給与、人事など、各部門において共通化できるプロセスの検証を行った。その結果、人事システムにおいては、実に95%のプロセスを標準化できると判断。結果として、地域や国で異なっていたビジネスプロセスをグローバルレベルで統一した。さらにビジネスプロセスを支えるアプリケーションも、それまで4つの人事関連と7つの給与系が稼働していたものを一つのグローバルインスタンスに統合した。プロセスの標準化とシステム統合によって、データセンタースペースを66%削減したほか、サーバ数では63%削減、ストレージを60%削減という驚くべき成果を出した。

 システム統合において仮想化技術を積極的に採用したのも大きな特徴として挙げられる。同社では、共有アプリケーション・サーバ・ユーティリティ(SASU)という新しい考え方によって、それまでプロジェクトごと、あるいはアプリケーションごとに分散していたサーバ、ストレージを共有化。この仮想化された共通基盤の上で、アプリケーションのホスティング環境を提供する形とした。

 これにより、ITリソースの効率的な利用によるコスト削減、そして、負荷の増減に応じてダイナミックにリソースを再構成できることで市場環境の変化にも柔軟に対応可能となったのだ。

 「仮想化技術の採用は、管理者数の削減や組織の変化にも柔軟に対応でき、企業全体の俊敏性を高めることにもつながります」と久保担当部長は語る。

 SASUにおいては、HP IntegrityサーバとHP-UXをベースに、仮想化技術を採用。J2EEプラットフォーム上でさまざまなアプリケーションが、ホスティング環境で動作することになる。ワークロード管理ツールのHP-UX WLM(Workload Manager)、リソース管理ツールのHP PRM(Process Resource Manager)によって管理された環境において、複数のサービスレベルを満たす形での運用のほか、アプリケーション開発者へのシェアード型での基盤提供も行われている。


SASUアーキテクチャの概要。J2EEアプリケーション・サーバのシェアード・サービス化、ユーティリティ化によって、サービス指向へのシステムへと変化することとなる

 イメージプリンタ事業部では、消耗品の自動発注システムにSASUを採用。プロジェクトを3カ月前倒しで完了させるとともに、ハードウェアコストを3万ドル削減。開発者や初期セットアップの要員削減を含んだ総コスト削減額は25万ドルにも達したという。

明確なゴールを設定することが成功につながる

 ヒューレット・パッカードのシステム統合では、重要なポイントがある。それは、単にシステム統合というゴールを目指すのではなく、明確な青写真を掲げたことだ。それが先に触れたサーバ数、アプリケーション数といった定量的な目標であり、そして、これから触れる「エンタープライズ・アーキテクチャ(EA)プログラム」で定義された定性的な目標なのだ。

 久保担当部長も、「ヒューレット・パッカードが極めて短い期間にシステムの統合を完了し、成長戦略を打ち出せたのは、システム統合において明確な目標を設定したことに尽きると思います」と語る。

 EAプログラムの中で同社が掲げたのは、将来のあるべきITの姿を、明確なプリンシバル(指針)に基づく活動としてつなげることだった。

 「指針の一例をあげると、ITのためのITではなく、定義されたビジネスプロセスにひもづく形でのITであること、アプリケーションは作らず、購入することで素早く、安価にソリューションを提供すること、インフラはシンプル化を進めることなどがあげられます。また、EAを進める上でもっとも重要なのがITガバナンスの確立ですが、HPでは、中央集権と地方分権を絶妙なバランスでとらえたITガバナンスの設定、プロジェクトのアーキテクチャへの適合判断や上級役員による調停といった体制を作ってきました」(久保氏)

 そして、「こうした経験は、顧客に対する提案という点でも大きな意味があります。当社が提案するアダプティブ・エンタープライズは、自らの経験に基づいた提案であるということが分かってもらえると思います」と久保担当部長は続ける。

 つまり、同社社内で進められる世界最大級ともいえるシステム統合の過程で得られたノウハウを、同社の製品やサービスに惜しみなく凝縮してユーザーに還元することで、同じ悩みを抱えるユーザーに顕著かつ明白な信頼感を与えている。64ビット・アーキテクチャのインテル® Itanium® 2 プロセッサを搭載したエンタープライズサーバの「HP Integrityサーバシリーズ」をベースに、自らの体験もふまえてシステム統合を提案する、他社のそれとは言葉の重みからしても大きく異なるものであると言えるだろう。

*** 一部省略されたコンテンツがあります。PC版でご覧ください。 ***


提供:インテル株式会社、日本ヒューレット・パッカード株式会社
制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2006年6月30日

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