検索
特集

IPネットワークにストレージのデータを流す――IP-SANを実現するiSCSIのテクノロジファイバチャネルか?IPか? SANテクノロジー最前線(3/3 ページ)

SANの接続にはファイバチャネルが一般的に使われるが、光ファイバを利用するため、コストなどの面で問題がある。この問題を解決するのがIPネットワークを利用するIP-SANだ。このIP-SANを実現するiSCSIとはどんなものなのだろうか。

Share
Tweet
LINE
Hatena
前のページへ |       

IPでストレージを実現するiSCSIの仕組み

 IP-SANの中核をなすiSCSIのテクノロジについて、もう少し詳しく紹介しよう。

 まず、iSCSIの階層モデルをファイバチャネルと比較してみよう。ファイバチャネルの物理レイヤであるFC-0、符号化/復号を行うFC-1に相当するのが、イーサネットである。フレーミングを行うFC-2に相当するのが、TCP/IP。そして、マッピングを行うFC-4のSCSI-FCPに相当しているのが、iSCSIということになる(図5)。


図5 iSCSIとファイバチャネルの階層モデル

 iSCSIの構造は、SCSIに準拠している。SCSIは、クライアント/サーバモデルになっており、SCSIコマンドを発行して処理を要求するイニシエータ(サーバ)と、処理を行ってレスポンスを返すターゲット(ストレージ)で構成されるが、これはiSCSIでも同じである。iSCSIでは、イニシエータとターゲットの論理的な伝送路をiSCSIセッションという。iSCSIセッションは、SCSIにおけるI_T Nexusに相当するものであり、複数のTCPコネクションで実行される。それぞれイニシエータ名を使った認証が行われるが、認証はIPSecなどで暗号化されており、適切なイニシエータからのアクセスだけが許可される仕組みになっている。


図6 iSCSIの概念図。iSCSIセッションは、複数のTCPコネクションで構成される

 サーバのインターフェイスは、従来のNICを利用する方法と、iSCSI用のHBAを利用する方法がある。NICはファイルレベルのデータをパケット転送するように設計されているので、ブロックレベルのデータ転送は行えない。そこでiSCSIドライバがブロックレベルのデータをTCPパケットに格納する。この作業は、サーバのプロセッサに大きな負荷をかけるため、NICを利用したiSCSIではシステム全体のパフォーマンスは低下する。

 そうしたパフォーマンスを改善するのが、iSCSI用HBAである。このHBAには、TCP/IPを処理するエンジンを備え、データのブロック化とセグメンテーション処理を行っている。

 また、パフォーマンスと安定性をより確保するためには、インターネットアクセスやファイル転送など一般的な用途に用いられているLANと、IP-SANで利用するIPネットワークを物理的に分離することが望ましい(図7)。ただし、IP-SAN専用のIPネットワークにNAS(Network Attached Storage)を接続し、双方のメリットを生かしたシステムを構築することもできる。


図7 IP-SANで利用するIPネットワークは物理的に分離する

 繰り返しになるが、ファイバチャネルの問題点は、機器のコストがかかり、さらに接続に利用する光ファイバの敷設にもコストがかかる点だ。iSCSIでは、機器はiSCSI用HBAを使用する場合を除いては一般的なものでよく、接続に利用するネットワークも光ファイバと比較してコストが安く敷設できる。半面、パフォーマンスの確保のためには通常使用するIPネットワークとSAN用ネットワークの分離などさまざまな対応も必要となるがそれを考えても低コストでSANを構築できるメリットがある。

 IP-SANはFC-SANの問題点をカバーしており、これからの発展が期待できる。現時点でハイパフォーマンスで信頼性の高いSAN環境を構築したいのならFC-SANに実績があるが、今後の動向次第では、IP-SANがFC-SANにとってかわることもありうるだろう。

前のページへ |       

Copyright© 2010 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る