一般向け地図サービスのビジネスへの応用――ゼンリンデータコム:地図情報がビジネスチャンスを見つけ出す! 第6回
一般ユーザーに親しまれていた地図情報サービスだが、これからはビジネス利用への可能性も広がる。住宅地図データベースを武器にするゼンリンデータコムに、今後の地図利用への可能性を聞いてみた。
ゼンリンデータコムでは、親会社のゼンリンが構築した住宅地図情報を、『its-mo Navi』シリーズのネットワーク型地図ソフトとして販売している。アクセスするたびに新しいデータが利用できるほか、全国1400都市の40万件にものぼる施設データの利用や、VICSによるリアルタイムの渋滞情報なども知ることができる。一般ユーザーはもとより、営業マンやサービスマンなどが利用するケースも多いという。
また、注目すべきサービスに、携帯電話で利用する歩行者用ナビがある。車道両側の歩道の選択や陸橋、地下道、公園内を横断するルートまで検索が可能。主な都市をカバーし、3メートル以下の細道路や私道までも網羅しているところが、ゼンリンならではのサービスといえる。歩行者演算データには経路の上りや下りの情報、階段、屋根伝いの歩道などの属性を持ち、ルート探索の際に「階段の少ないルート」を選択すると、階段などアップダウンの少ない経路を検索し、「屋根の多いルート」を選択すると、ひさしがあって雨でも濡れにくい歩道を優先的に検索する。現在はボーダフォンライブにのみ対応しているが、アプリケーション容量が大きなFOMAの上位シリーズなど、来年以降に第3世代携帯電話でGPS搭載機種が拡大するようになれば、すべてのキャリア向けにサービスが開始される予定だという。
この歩行者用ナビは、ベースにカーナビ用データを使い、さらに歩行者専用のデータを上乗せしているため、カーナビの2.4倍ものデータ量を持っている。将来はスロープ付きの階段など、高齢化社会や身障者向けにバリアフリーのデータまで持つようになる予定だ。
「地図情報の需要は確実に伸びている」と話すのは、同社のコンシューマビジネス本部でサービス開発部長を務める奥正喜氏。グーグルマップスのAPIを利用したサービスが増えると、有料サービスの需要が下降するかとも思われたが、反対にマーケット自体が拡大しているという。「売上は前年に比べ堅調にアップし、パッケージ製品も1割程度伸びている状況です」(奥氏)
こうした動きについて奥氏は、ユーザーが地図をシームレスに利用でき、地図を起点にして周辺の情報を簡単に探し出す機能が便利と気づき始めたからだろうと分析する。デジタル地図ならば、すべてネット経由でサーバから最新の情報が入手でき、どんな情報も盛り込める拡張性を持つからだ。また同社では、法人向け地図ASP『e-map』も提供している。三井住友銀行や新日本石油、パーク24など現在150社が利用中だ。「今後、歩行者用ナビなどが組み合わされると企業でのサービスが向上するでしょう。地図の利用が当たり前になった今、きめ細かい地図・位置サービスは他社との差別化要因となり、それが当社の強みになっています」(奥氏)
今後、同社はネット上の口コミ情報などを地図上に反映し、嗜好を絞った情報を入手できるようなサービスを考えていくという。
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