ERP導入に復活を賭けた老舗企業――在庫3分の1減、売上げ15%増への執念:事例から学ぶ「座礁しないERP」(2/2 ページ)
中堅・中小企業にとって、ERP導入は容易なことではない。しかし、システム導入によって悪環境から立ち上がった企業がある。迷走状態の現場を救ったERPの威力とは?
社員の気持ちを一つにするトップの説明責任
この導入に際して、一番のポイントとなるのは、まずは経営計画を先に立てたことだろう。野侮ミ長は次のように話す。
「業績が悪化していることを70名の社員全員にちゃんと説明することから始めました。ここで生き残り、会社を大きくしていくにはどうしたら良いのか。業務全般を見直して、無駄をなくす必要がある。『それは何とかしなくてはいけない』とまず社員の気持ちが一つになったと思います。そして目標を掲げて、それを達成するには、営業が主導する生産計画の仕組みに変えていかなくてはならないと説明したのです」
生産現場からの反発などはなかったのだろうか。これに対する野侮≠フ答えはこうだ。
「高い機能を持った製品を作ることに変わりはないので、反発のようなものはなかったですね。生産計画を立案する仕組みづくりには、生産サイドがかなり協力してくれました。会社を良くして行こうという目標があれば、うまく行くものだと思いましたね」
目標達成のための5項目
野侮≠ヘ「全社目標管理体制の確立」、「組織力の強化と人材のスキルアップ」、「多品種少量生産の対応と在庫の削減」、「新製品の開発」「営業力の強化」という成功するための5つの項目を挙げ、ITSSPに参加している。また、従業員の半数以上が参加したブレーンストーミングを繰り返し、SWOT分析を取り入れている。システム導入前にこれだけの準備は当然といえば当然ともいえるが、簡単なことではない。
「ITSSPに参加してから参画してもらったITコーディネーターさんの支援も大きかったですね。製造現場での入力作業はバーコードとテンキーのみで行うようにするとか、実情に合わせた工夫もできました。約20工程分の生産計画を半年先まで自動化できるようになっていますが、必要に応じて手動に切り替えることもできます。販売予測だけでなく、下限在庫、安全在庫という項目を設定するなど業務がストップしない仕組みも取り入れています」と野侮≠ヘ話す。こうした細かな工夫は外部の専門家を積極的に受け入れたからこそ実現したものだろう。
Copyright© 2010 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 座礁しないERP導入:中堅・中小企業の泣きどころ
座礁しないERP導入:目先のコスト削減を最終目標にするな
経営の全体最適を目指し、中堅・中小企業でもERP導入は進んでいる。しかし、導入を断念したり、導入されてもフル活用とは程遠いというケースもあるようだ。こうした結果に至る原因を探ってみた。- 時間単位、分単位での生産計画も可能に、富士通とグロービアが「glovia.com」新版
- 「Apex」はSalesforce.comの強力なドライバとなる
- 「SOAはもうビジョンという段階ではない」とSAPのスナーベGM
- SAPとデルが中堅/中小向けERPで協業、パートナー会も設立へ
- 適用範囲の分析で確度の高いERP導入プロジェクトを支援、日本IBMら
- OfficeならERPも簡単?――SAPとMSが試みる基幹システムの発想転換
- 経営戦略なきところにIT戦略なし1
- 【特集】座礁しないERP導入
中堅・中小企業向けのERP導入は「教科書通り」には進まないことが多い。その原因は人的リソースの不足が主として挙げられる。こうした不足を補う手法、導入失敗を避けるための注意点などを探る。
