パッケージ導入の常識を覆す――ボトルネックから突破口を切り拓く!:事例から学ぶ「座礁しないERP」(2/2 ページ)
海外生活サポート事業で順調な成長を続けるラストリゾート。同社は現在ERPシステムを構築中だ。業務の「入り口」から「出口」までを網羅する欲張りなシステムはいかにして発案されたのか。
システムの陳腐化を見逃さない
現在、ラストリゾートではERPシステムを構築中だが、順番としてはCRMのシステムを優先して作り上げ、それから会計のシステムを構築していくという流れで作業を進めている。会計システムは上流の営業や手続き関連の業務フローが変わるとその都度変更していく必要がある。上流の業務フローの大枠を固めてから会計に手をつけていかないと効率が悪い。問題はCRMと会計のシステムがそれぞれ完成に近づいた時、これらの連携がうまくいくかということだ。
CRMと会計のシステム両方をSAP製品で構築することを選んだのは、こうした連携に齟齬をきたさないようにするためだという。
名取氏は現在稼働しているシステムについて次のように語る。
「現在のシステムはERPとは言えないですね。販売管理システムです。一応お客様とのやりとりの履歴は残るのですが、全てを網羅できていませんでした。それと、マーケティングのシステムと、販売管理のシステムと、会計のシステムがつながっていない。そのため販売管理の方にデータをインプットするのに、一回、マーケティングの方からアウトプットして、また販売管理にインプットするという手間がかかりました。それが、会計システムでも同じ事があり、そこに二重入力の手間があったりして、会社としてはそこがボトルネックになっていた。であれば、会社全体として、ERPを導入すべきだという考えになった」
業務の全体最適を図るタイミングというのは、意外と難しい。ましてや、成長率の高い企業はなおさらだ。このタイミングをどう考えるのか。名取氏によると、システムが業務効率を上げる割合とシステムが与える業務への悪影響の割合を計るのが肝心だという。
「システムが業務効率を下げる割合が30〜40%もあれば、もうシステムそのものが陳腐化しているといっていい。もちろん業務フローに問題があって効率が落ちているケースもあります。つまりシステムのせいではない部分ですね。業務フローの問題とシステムの問題が半々であれば、業務の全体最適を改めて考え、それに合わせてシステム全体を変える必要があると思います」(名取氏)
次回は同社の取り組みの中で、具体的な業務の見直しについて紹介する。
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