OracleはRed Hat Linuxへの一本化を望んでいる?
Oracle Summit 2006のために来日したOracleのシンプ副社長は、OracleにはLinux分断の意図がないことを改めて明確にした。早ければ年明けにも日本市場での展開が明らかにされるという。
「いつ、どういう形で起こるのかは想像の域を出ないが、OracleはLinuxが1つのディストリビューションに収れんされていけばいいと考えている」── 10月14日、「Oracle Summit 2006」カンファレンスのために来日した、グローバルテクノロジービジネス部門のロバート・シンプ副社長はこう話し、OracleにはLinux分断の意図がないことを改めて明確にした。
Oracleは、10月のOracle OpenWorld San Francisco 2006で同社がRed Hat Linux自体のサポートに乗り出すことを明らかにしている。米国で発表されたOracleのサポート料金は、年額99ドルから始まり、Red Hatの半値以下。さらにRed Hatが提供していない、データセンターのデータベースをサポートするのと同等の品質水準もメニューに加えている。
大きな打撃を受けるとみられているRed Hatは、IBMと急接近を図っていると伝えられているが、「(IBMへの接近が)人気のあるRed HatにLinuxが収れんされていく追い風になるのであれば、業界にとっては良いことだ」とし、あくまでもOracleは顧客の声にこたえる形で、より良いエンタープライズ向けのLinuxを望んでいることを強調する。
Red Hatが、Oracleの発表後まもなく、「Oracleが修正したLinuxは、Red Hat Linuxではなく、互換性の問題が生じる」と警告したことについても、「Oracleは、これまでにも顧客にRed Hatのサポートを提供してきたが、非互換の問題はなかった。それにもかかわらず、なぜ互換性の問題を持ち出すのか分からない」と一蹴する。Oracleでは、Red Hatが掲げるIHVおよびISVの互換性保証リストをそっくりそのままサポートすることも表明している。
「減らすわけでもなく、増やすわけでもない」とシンプ氏。
また、OracleのLinux開発チームの成果が、だれでも利用できるものになることに変わりはない。2002年、同社はクラスタファイルシステムを開発し、Linux Gridの性能を高めるために大きく貢献している。
「われわれの開発成果は、すべてのディストリビューターが利用できる。彼らのビジネスはLinuxの差別化によって成り立っているが、われわれは収れんを望んでおり、差別化は望んでいない。むしろ、われわれはより良いサービスを提供することで差別化を図っていく。取り組んでいる姿勢が根本的に違うのだ」(シンプ氏)
Miracle Linuxとは住み分け
しかし、日本オラクルが過半数の株式を所有するミラクル・リナックスの存在もあり、日本市場でのRed Hat Linuxサポート事業のスタートはすんなりとはいかない。同社には14%を所有するNECを筆頭に日立製作所、NTTデータ、オービックビジネスコンサルタント、大塚商会といった、日本オラクルのパートナーらが株主として名を連ねているからだ。
日本オラクルでシステム製品統括本部長を務める三澤智光氏は、「Oracleがグローバルで取り組むUnbreakable Linux(2.0)とMiracle Linuxがどういうポジショニングになるのか、明確なメッセージとしてパートナーらに説明しなければならない」と話す。
ただ、LinuxでOracle Real Application Clusters(RAC)システムを構築する企業のほとんどは、Red Hat Linuxを採用している。三澤氏によると、サポート事業展開の当初は、日本オラクルがこうしたハイエンドの顧客らを直接サポートすることになるという。
「中小規模システムで実績を重ねているMiracle Linuxとすでに住み分けはできている。競合することはない。むしろ、ミラクルのLinux技術者がわれわれのサポート事業に貢献してくれることを期待している」と三澤氏は話す。
三澤氏によると、早ければ年明けにも日本市場での展開が明らかにされるという。
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