速度よりもサービス――無線BBの急先鋒、WiMAXがもたらすもの:無線LAN“再構築”プラン(3/3 ページ)
WiMAXは、最大75Mbpsの通信を可能にする無線ブロードバンド技術として注目を浴びている。有力な通信事業者が参入を決めるが、その高速インフラを活用したビジネス、サービスの具体像はなかなか見えてこない。その最新動向を追った。
WiMAXが創る新しいサービス像
WiMAXサービスは単なる通信サービスというよりも、新しいビジネスを創出する技術という点で、各社とも意見が一致しているようだ。とはいえ、まだそのビジネスがどのようなものになるのかは現時点でみえていない部分も多い。例えば新しいサービスとして、スマートフォンのようなPDA端末で、自宅で取りためたビデオ映像を移動しながら観たり、コンテンツ配信サーバにアクセスしてVODで映画を観るといったサービスや、シンクライアントをワイヤレス化する手段に利用することも考えられるかもしれない。
「従来とは異なる新しいビジネス領域を作っていくことが重要。単なる携帯サービスへの載せ替えでは、新たな通信事業を拡大できない。必要な部分で携帯サービスや固定通信と連携させ、全体としてのすそ野を広げていく。またKDDIとしては、この領域を伸ばせるように定額制を実行して、利用者に大きなコストメリットを感じてもらえるような市場を開拓していきたい。ライフスタイルを変えるような新たなサービスが出てくれば、と考えている」(要海氏)
WiMAXでは次世代ネットワーク(NGN)構想との連携も見据えている。KDDIが進めるウルトラ3Gは、コアにIPネットワークがあり、携帯電話、固定、WiMAX、無線LANなどの通信メディアがフラットに並ぶ構図だ。上のノードからみれば、どのメディアとも連携が取れるようになっている。
「もともとウルトラ3Gの構想は各メディア間を連携させるためにスタートしたもの。MMD(MutiMedia Domain)を使うと、複数サービスにまたがった利用が可能だ。例えば、IPのテレビ電話で音声で送り、相手側はチャットで文字を返すというように、音声と文字の通信を複合化できる。また外から携帯電話でテレビ電話を使い、自宅に帰ったら固定系メディアを経由したネットワークにそのまま移行して、PCに切り替えられる。メディアがWiMAXになったり、無線LANになったり、何の違和感もなく、広い意味でのシームレスな連携が行われる」(要海氏)
一方、ソフトバンクもWiMAXとWi-Fi、W-CDMAという3つの無線通信方式をシームレスにハンドオーバーさせる実験に成功している。アッカ・ネットワークスも、WiMAXと有線ブロードバンドサービスの融合を目指し、シームレスハンドオーバーの実証実験を実施する予定だ。「屋外ではモビリティに優れたWiMAXを、自宅では無線LANアクセスによってADSL回線や光回線など有線ブロードバンドサービスを同一端末で利用できるFMC(Fixed Mobile Convergence)サービスの実現を検討していく」(同社広報)。
WiMAXは、従来の無線ブロードバンドサービスを単に置き換えるシングルポイントソリューションではなく、既存技術とうまく連携していくことが鍵となるだろう。さらに、サービス面でWiMAXのメリットを生かせるような魅力的な新しいビジネスをどのようにして創出していくか――。成否はこれらに大きく懸かっているようだ。
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