ケータイだけでできる動画共有――映像インデクシング技術:次世代ITを支える日本の「研究室」(3/3 ページ)
YouTubeに代表されるCGV(Consumer Generated Videos)として、アマチュアが個人で撮影したパーソナル映像をネット上に気軽に公開できる時代になった。一方で、見る側に映像の内容を効率良く伝えることが目下の課題となっている。
gooラボで携帯動画パノラマの実用化を検証中
森本氏と同じメディアコンピューティングプロジェクトにおいて、メディアプロファイリンググループの主任研究員である小西宏志氏は、「サムネイル画像の間引きの仕組みは現在も研究中だが、単純に一定間隔で間引くのではなく、アップショットを優先し、ブログの記事として書きやすいように、特徴が表現されている点を優先して検出する工夫が施されている」と説明する。
現在、この携帯動画パノラマシステムは、goo上にある実験サイト「gooラボ」に、「携帯動画パノラマ実験」として公開され、商用環境での実用化を検証中だ。期間は2007年3月31日までだが、登録すれば誰でも無料で利用できる。
ケータイのカメラで撮影した動画をiモーションメールとしてサーバにアップロードし、その際に件名や本文を記載すると、そのまま記事として反映される。自分で写した映像をスクラップブックのように整理でき、またそれをgooラボ内に公開することも可能だ。ケータイの動画は容量も少なく撮影の尺も短いためか、送信してからブラウザでアクセスするまでには映像解析は完了し、想像以上に簡単に動画つきブログを公開できる。
ケータイで利用する場合は、FOMAの700/900シリーズのみに対応している。利用は無料だが、別途パケット代が掛かるので、パケホーダイに契約している方が望ましい。
撮影テクニックと撮った映像の編集力
森本氏は「個人がインターネット上に映像を公開するには、2つの異なる目的がある」という。1つは、友人や家族との情報共有。この場合は、手の込んだ編集をしなくても、撮った映像をそのままを見せれば目的は達成される。そしてもう1つは、映像投稿・共有サイト向けやオフィシャルな情報開示のように、多くの人に見てもらうことを想定している場合だ。見やすく編集し、作品として飾り付けがされていないと、誰も見てはくれないため目的が達成されないことになる。
後者の場合、撮った映像の編集力が必要となるのはもちろんだが、撮影する際のテクニックやノウハウも同じように重要となる。しかし、そこがCGVのもう1つの課題ともなっている。
そこで森本氏らの研究グループでは、映像を撮る時点からある程度のサポートができるよう、例えばシナリオ段階から支援するテンプレートの開発や、撮影品質を保つ管理システムなどの研究も進めているという。それが実現すれば、映像品質が向上し、公開する機会が増え、映像資産の流動化が加速されると考えている。
「映像というメディアをテキストと同様に扱える土台を作りたい」という森本氏は、ブログが広く普及した背景として、使い方をサポートすることで、ユーザーが自ら情報を発信するようになったことが大きいとみている。「映像は、デバイスの技術では大きく進歩したが、情報量が多いだけにいまだに発信手段や検索の面で課題を抱えるメディアだといえる。NTTサイバーソリューション研究所ではそれを解決し、より一般の生活者が使いやすい技術を提供することで、映像の流通を促進していきたい」(森本氏)
今後、映像は単に「撮る」「観る」だけではなく、「人に魅せるメディア」として扱われていく。映像でいかに表現できるかということを、本格的に考え始めるときが来ているのだろう。
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