新興ベンチャー危うし!?:J-SOX法対策の死角となるか? IT統制の標的 第8回(2/2 ページ)
内部統制においてネックになると見られているIT部門。加えて、新興成長企業自体も問題視されている。そこには、世間でもてはやされている多くのIT企業が含まれているのだ――。
疑問視される財務・経理部門の能力
久保氏によると、新興成長企業において業務プロセスは大した問題にはならない。それよりも、決算・財務報告で懸念があるという。決算を作成する経理部門の能力が疑問視されているのだ。実際のところ、外部の専門家の力を借りなければ完璧な決算ができないところが多いようで、とてもではないが、久保氏が進言するように「会社自身が監査人になるほどでなければいけない」という基準を満たせていないのである。「税理士さんにお任せしている」といった発言が出るレベルでは駄目だと、久保氏は力説する。
もちろん、決算報告までが不適切にはならないだろう。ただ、新興成長企業には、内部統制監査において「×」となる可能性がかなり高い企業が多く潜んでいる。
新興成長企業といえば、スピード経営が売りといえるところが多い。だが、内部統制への対応で、そのメリットは殺がれることになるかもしれない。ただ、そうした傾向は「むしろ望ましい」と内山氏は説明する。というのは、これからの日本企業が目指す姿は、ビジネスのスピードを損なうことなく標準化した管理・統制を集中的に行うことを促進し、その統制プラットフォームの上で、ダイナミックで、柔軟性にとんだビジネスを展開するモデルを追求することだから――だ。
その新興成長企業には、IT系ベンチャーがかなり存在する。ITを売りにしていながら、ITの統制で自社の評価を下げることになるとすると、それはあまりにも皮肉な結果となってしまうのである(「月刊アイティセレクト」1月号の特集「J-SOX対策の死角となるか? IT統制の標的」より)。
*本稿では、内部統制を日本版SOX(J-SOX)法により課される部分を中心として考える。2006年5月施行の会社法や各金融商品取引所(現行の証券取引所)が定める規則(上場基準など)に従う部分は基本的に考慮に入れていない。ちなみに、J-SOX法とは6月に公布された「金融商品取引法」の一部を指す(12月1日の記事参照)。
*本稿は、可能な限り最新情報を盛り込んでいるものの、基本的に2006年11月15日時点の情報に基づく。
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