WLAN上の音声/データの共存は永遠の課題か:無線LAN“再構築”プラン(3/3 ページ)
データ系の無線LAN環境を生かしつ、その上にVoIPを展開するにはどうすればいいのか? 真に音声とデータの「共存」を実現する方法はあるのだろうか。
共存するための現実的な解決策
さて、最も期待していた現在の802.11eのQoSが思うように機能しないことが判明してしまったのだが、それでも何とかしたいというのが人情である。では、どのような手法で乗り切るのか?
そのヒントは、先の記事で取り上げたチャンネル相関図にある(図3)。先にその答えを言ってしまうと、共存させなければよいのだ。何とも不可解なことを言っているように聞こえるかもしれないが、以下を読み進めればその意味はお分かりいただけるだろう。
筆者は先の記事で、802.11b/gではチャンネル1〜13が少しずつオーバーラップしているため、干渉しないチャンネルは3本しか確保できないと説明した。これは逆に言うと、音声用に1本、データ用に2本を割り当てるという使い方をすれば、空間的には共存していても、無線の世界では共存(干渉)していない状況を作り出すことができるということでもあるのだ。
採用するWLANを802.11gに固定し、かつ24Mbps以上の速度に固定できれば、1台のAP配下でも同時通話数30本は確保できるはずだ。例えば、筆者が開発に携わっている「SIP:OFFICE」では、オフィスにおける電話の同時利用率を25%で計算する。これを基に同時通話数30本から収容端末数を逆算すると、おおむね120台が収容可能ということとなる(もちろん、全員が一斉に通話を開始したら破たんするが、一般的なオフィス利用でそれはあり得ない)。
つまり、標準的な長方形のフロアであれば、チャンネル1本でも1つのオフィスを十分にカバーできるということにならないだろうか。もちろん、AP(アンテナ)の設置には細心の配慮が必要なのは言うまでもないが、802.11bではなく802.11gであれば、音声に1本、データに2本の干渉しないチャンネルを割り当てる手法を用いることは可能だと筆者は考える。
また、多少費用は掛かってしまうが、データ系にはいっそ802.11aを採用し、それを割り当てるという方法も考えられる。費用面で厳しい制限がなく、また、より利便性を追求したいということであれば、こちらの方がより確かな手法だろう。
以上がデータ系と音声系を共存させるための現実的な解決策であるが、いずれHCCAが普及してきた段階で、機会があれば実設定を交えた記事を書くことにしたい。
寺下義文
日立コミュニケーションテクノロジー IPネットワークセンタ 開発部 SIP:OFFICEグループ技師。1986年、日立インフォメーションテクノロジーに入社。以来9年間データベース関連製品のプログラマーを経験し、1995年からネットワークSEとして多数の大規模ネットワークの構築も経験。さらに2003年から自社VoIP製品である「SIP:OFFICE」の開発に従事。2006年10月より事業統合により同社に転属。難解な技術を平易な言葉で表現することには定評がある。燃料は酒。これがないと走らない。
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