第3回 日本が進んでいる!?――意外と知られていない事実:考察! まん延する凶悪スパムの対応策
後手に回っているという、日本企業におけるスパム対策。だが、実は対策効果では他国に比べ秀でている部分もある――。
スパムに立ち向かう“組織”結成
企業におけるスパム対策が後手に回っているといわれる(3月5日の記事参照)日本において、スパムに正面から立ち向かう団体がある。国内の主要ISPや携帯電話事業者が連携し、迷惑メールに対処することを目的として2005年3月15日に発足したワーキンググループ「JEAG」(Japan Email Anti-Abuse Groupの略。「ジーグ」と読む)である。
携帯電話向けの迷惑メールが増加し、社会問題化し始めたころ、PCでもその傾向が強まり始めた。だが当時、ISP事業者と携帯電話事業者は迷惑メール対策に関する話し合いの場を持つことはなかった。
既に米国では、国境を越えて被害を及ぼす迷惑メール対策に向けて活動する、「MAAWG」(Messaging Anti-Abuse Working Groupの略。「マーグ」と読む)という国際的ワーキンググループが存在していた。それに倣い、日本でも有志企業が「MAAWG-J」を組織し、非公式に活動を始めた。それがJEAGの母体となっている。
送信ポートをブロックせよ
JEAGには、発起人の6社を含め、現在31社がメンバーに名を連ねる。また、オブザーバーとして総務省、経済産業省、日本データ通信協会が参加している。2006年2月23日には、これまでの活動成果を踏まえ、すべてのメールサーバー管理者が行うべき施策を提言するものとして、「携帯電話宛迷惑メール対策(Wireless)」「Outbound Port25 Blocking(OP25B)」「送信ドメイン認証」の3つのサブワーキンググループによるリコメンデーションを発表した。これが、現在のスパム対策において、最も有効な指針の一つとなっている。
具体的には、Wirelessサブワーキンググループにより、日本特有といえる携帯電話あての迷惑メール対策では、受信者側(携帯電話事業者)に加え送信者側(ISP事業者など)の対策も併せて提供されることが重要であるとまとめられている。JEAGのボードメンバーで、NTTドコモのコンテンツ&カスタマ部主査を務める昌川浩二氏は、「具体的な技術面の対策としては、送信数制限とOP25Bの二つが中心となるが、迷惑メールの情報収集と利用停止措置の実施や契約時の本人性確認強化の推奨なども、現時点でのベストプラクティスといえるものになっている。送信側事業者においても、これらを参考に導入を検討してもらいたい」と話す。
OP25Bとは、ISPが提供する動的IPアドレスからメールサーバーへ直接送信される迷惑メールを、メールサーバーのメール送信ポートである「25番ポート」をブロックすることにより受け付けないようにする技術。Wirelessサブワーキンググループでは、OP25B導入のプロセス提案や、課題提起とその検討などを提唱している。これにより、実は携帯電話あての迷惑メール対策において、日本は他国に先駆けて既に大きな効果を挙げているという(「月刊アイティセレクト」3月号のトレンドフォーカス「まん延する凶悪スパム メール文化に 危急存亡の秋!? 急を要する本格対策」を再編集した)。
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