エンタープライズサーチで情報共有――アシストの場合:よく効くエンタープライズサーチの処方箋(3/3 ページ)
情報共有を通じて競争力を高めたい――こう考える企業は数多い。アシストでは、SFAやポータルサイト、ファイル共有などで情報共有を試みたが、どの手法も社員に定着しなかったという。
データ管理手法を見直しOSESの利用を活性化
こうした経緯を経て、アシストでは情報共有の活性化に向けてOSESによるESP環境の整備に着手した。作業の過程では、ファイルサーバの重複ファイルの削除など、情報を検索しやすい環境の整備も約10名のスタッフの手作業により進められた。
そして2006年7月、システムは既存のポータルの機能の1つとして稼働を開始したが、当初、システムの利用はほとんど進まなかったという。「作業の過程で約3割のファイルを削除したが、それでも検索対象となるドキュメントは150万に上る。その結果、検索精度の低下を招き、稼働開始の数週間後にはシステムがほとんど利用されなくなってしまった」(佐藤氏)。
このような状況を打開するため、佐藤氏は約2カ月間をかけ、今度は社内のファイルの整理作業に取り組んだ。
具体的には、新たな管理ポリシーを作成することで、これまで社員任せになっていたファイルサーバ内のファイルの管理手法を統一。新たなディレクトリ構造にデータを移行させるとともに、社員全員に依頼してファイルごとに作成者名や社員番号、メールアドレスなどのメタデータを付与していった。そして、その過程ではそれらの作業を支援するためのCMS(Contents Management System)を、また、情報活用を支援するための社内ブログをそれぞれ整備していった。
「管理手法を統一したことで、ディレクトリ構造を基に検索作業を行えるようになり、検索精度が飛躍的に向上した。メタ情報を付加すれば、情報について社員間で直接コミュニケーションを取ることもできる。キーワード検索では把握しきれない情報も、これらの取り組みを通じて探し当てられるようになり、システムの利用が急速に進んだ。今では技術部門を中心に、社内ブログを用いた情報発信も活発に行われている」(佐藤氏)
現在、同社では全社規模でOSESの活用が進められており、1日に平均200件以上もの検索作業が行われるなど、情報の共有/活用が定着しつつある。その一方で、同社は今回の導入で得られたノウハウを基に、OSESを活用したシステムの提案活動も開始しており、すでに数社の企業から引き合いがあるという。
データベース事業部技術第1部課長の大久保正雄氏は「営業活動を通じて情報共有を徹底させたいと考えていても、その手法について悩んでいる企業は決して少なくないと実感している。OSESをはじめとするESP製品は、そのような企業にとって極めて効果的なツールだろう」と話す。
同社では今後、社内ブログを用いた情報活用を積極的に進めていく計画だが、ESP製品は同社の情報共有/活用の基盤のみならず、収益の基盤の1つにもなりそうだ。
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