第6回 夢を先取り!? 移動体インターネットの使える度をチェック:再考・ワイヤレスネットワーク(2/2 ページ)
昨年夏に本サービスを開始したつくばエクスプレスの無線LANサービスは、現在国内唯一の列車内ブロードバンドサービスだ。ここから移動体通信の「未来」が見えてくる。
速度変動は大きいが公衆無線LAN並の快適さ
それでは、つくばエクスプレスの実用度はどのくらいなのか。早速秋葉原駅から無線LAN対応列車に乗り込み、Windows VistaがインストールされたノートPCを取り出し接続を試みた(もちろん、駅構内で乗車前に接続してそのまま列車に乗り込んでもいい)。
接続方法は一般的な公衆無線LANサービスとまったく同じだ。このサービスは、NTTドコモが提供する「Mzone」とNTT東日本の「フレッツスポット」に対応しており、いずれかを契約していれば通常のスポットと同様に使える。
Windowsからは「docomo」(Mzone)と「FLETS-SPOT」(フレッツスポット)のほか、専用ポータルサイト接続用のフリーSSID(AP名)「tukuba」が表示されている。つくばエクスプレス関連情報や沿線情報にはアクセスできるが、インターネットアクセスはできない(クリックで拡大)
利用感は公衆無線LANサービスとほぼ変わらない。Webブラウズやメールの送受信についても問題なく行える。ただし、動画配信サイトにアクセスして比較的高画質なストリーミングを受信してみると、映像が途切れ途切れになってしまった。やはり、一般的なスポットと比べて通信速度の変動が大きいことを実感する。
なお、「RBBToday」が提供するスピード計測サイトで計測してみると、駅の近くなど環境の良い場所では7Mbpsクラスのスループットが得られたが、走行中は数10Kbps〜100Kbps台に落ち込むこともあった。特に、今回の検証で最もスループットが悪かったのは、千葉県/茨城県境近辺(利根川近辺)。リンク切れが頻発するので、この付近のAP−列車の通信状況は良好ではないようだ。
このように、エリアによっては思うように通信速度が得られないこともあるが、地下区間やトンネルを含めて「まったく使えない」という状況はほとんどなかった。また、ひとたびMzoneで接続していると、列車を降りてもそのまま駅構内で通信できる。いちいち接続したり認証する手間がなく、使いやすい。
移動体通信に残された課題とは
つくばエクスプレスは、茨城県や千葉県から都心へ通勤するビジネスユーザーに、車内でWebから資料を集めて仕事の準備をしたりメールチェックができるという、うらやましい環境を提供する。
しかし問題もある。常時高速な無線リンクを確保できず、ときどきリンク切れが発生する。これをどう解消するのかが今後の課題だ。業界関係者から見れば画期的なサービスに映るのだが、おそらく一般的なユーザーからすると「街中よりも不安定な公衆無線LANスポット」という感はぬぐえないだろう。
これは「VPN(Virtual Private Network)アクセスで社内サーバのデータをやり取りする」というレベルに達していないことをも意味する。例えば、営業マンが帰宅中に報告書などの資料を会社のサーバに送信したり、明日の仕事に必要な書類を取り出す、といったことができないのだ。
VPNは無線リンクが1回でも切れると、セッションが終了してしまう。その上、リンクアップ速度が激しく変動して安定した帯域を確保できない環境では、うまく利用できないことがほとんどである。また、今回は検証できなかったがSkypeなどの音声通信も難しそうだ。さらに、オフィスや自宅に比べてスループットが全般的に低いのも問題だ。
このあたりに風穴を開けるのが半径数kmをカバーする「WiMAX」(関連記事1、関連記事2)の進展であろう。とはいえ、WiMAXのこれからについては未知数であり、つくばエクスプレスが今後、WiMAXを導入するかどうかも分からない。
つくばエクスプレスは日本の移動体通信のショーケースとして、これからも疾走し続けることは間違いない。しかし、誰もが通勤電車や新幹線などの長距離列車の中で、「Webやメールができる」以上のユビキタスな使い心地を実感できる日は、もう少し先の話になりそうだ。
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