「ネットカフェ難民」の問題が及ぼす意外な影響:情報ツールと人格〜ネットカフェから「2in1」へ
今年になって「ネットカフェ難民」の実態がテレビで放送されるようになった。その問題を突き詰めて考えると、2つの見解を持つことになった。5月の連休中に、そんなことに気付いた――。
5月の大型連休では、メディアが伝える恒例の空港や新幹線のにぎわいもさることながら、筆者が職業柄感じたところでは、インターネットを用いた広告やメールなどのマーケティング手法においても、休暇期間における生活者の行動やニーズをより深くとらえようとする動きが目立ったように感じられた。従来は連休が始まる前の時期に、旅行などのサービスを中心とした内容が目立っていたのだが、今年は連休期間中も、ファッションや食品、書籍などさまざまな商品の購入を呼びかけるメールやキャンペーンが連日のように届いた。デパートなどの大型店が連休の行楽としてのショッピングを目当てに、休日返上でイベントを開催したりするのと同様のことが、ネット販売の世界でも起こっているようだ。
インターネットビジネス成長の指標であるネット広告とECの伸びを見ても、その勢いは依然として根強い。しかし、そのスタイルは少しずつ変化している。背景にあるのは、生活者のインターネット利用行動が、オンとオフを問わず、一段と日常生活に密着したものになりつつあることが考えられる。
ビジネスや経済といった観点からのネット普及の拡大や深化についてもさることながら、生活者の意識や社会問題の点からも、インターネットや携帯電話などの情報ツールの普及やその使われ方は、確実に新たな局面に入りつつあるように思われる。
「ネットカフェ難民」問題から指摘できること
そんな中、大型連休中によく目にしたのが、「ネットカフェ難民」という問題だ。テレビのバラエティ番組やワイドショーなどがこぞって取り上げていた。言葉自体は、年初にこのテーマを取り上げたテレビ番組のタイトルとして出現したもののようだ。その意味するところは既に多くの方がご存知のことだと思う。
この問題はマスメディアを中心としたブームに相応しい幾つかの側面を持っている。一つは、4月の統一地方選での政党キャンペーンとして大きく掲げられた「格差社会」の一面を、都市と地方という構図からではなく、都市そのものに潜む問題として新しい観点から光を当てているということ。ほかには、その具体的内容が地方や中高年世代にとってはにわかに理解し難いものであり、若干の解説を要するという番組構成上の扱いのよさもあるように思う。
これに関する報道や記事を目にしながら、いろいろなことを考えた。やがて、それは二つの側面に落ち着いた。一つはマスメディアがこの問題の本質として主張している、いわゆるワーキングプアや格差社会という社会的問題である。
もう一つ指摘しておきたいのは、このような切り口からネットカフェがメディアに取り上げられたことで一番迷惑を被っているのは、ほかならぬネットカフェを生業としている事業者ということだ。なぜなら、その意味での問題と店で提供されているネット環境のサービスとは、実質的には何の関係もないからだ。既存のメディアはよほどインターネットに悪いイメージを持たせたいのだろうかと考えるのは、穿った見方なのだろうか(「月刊アイティセレクト」掲載中の好評連載「新世紀情報社会の春秋 第十六回」より。ウェブ用に再編集した)。
なりかわ・やすのり
1964年和歌山県生まれ。88年NEC入社。経営企画部門を中心にさまざまな業務に従事し、2004年より現職。デバイスからソフトウェア、サービスに至る幅広いIT市場動向の分析を手掛けている。趣味は音楽、インターネット、散歩。
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