ホンダはこうした――発見! アクセス解析は広告の効果測定に使える(後編):Webマスターが変える 企業サイトの「秘力」
アクセス解析は、従来属人的に行われていた判断をデータに基づくものに変えている。そしていずれは、「顧客との接点」を完全制御するものになる――。
広告出稿先をデータに基づいて選定する
本田技研工業(以下、ホンダ)は「自由闊達自己責任」という方針の下、自社サイト開設以来、コンテンツごとに担当者を置き、それぞれのアクセスログを公開してその内容を自発的に改善させる試みを続けてきた。担当者の延べ人数は約30名。営業や宣伝、広報、人事などさまざまな部署にわたる。宣伝部隊の一人でもある、日本営業本部宣伝販促部ホームページ企画ブロックのブロックリーダー営業主幹、渡辺春樹氏の主な役割は、利用者の利便性を高めるために各コンテンツを取りまとめること。ちなみに、2006年度のトップページへのアクセスは3600万を数える。
渡辺氏は現在、「アクセスログの効果測定への活用は実用段階に入った」と考え、過去の分析例を社内に公開し、これまで蓄積してきた“属人的”なノウハウの共有を進めている。その具体的な内容については「まだ発表できる段階ではない」と明言を避けるが、各部門と連携して広告的な情報発信を担当する宣伝販促部の一員として、すでに広告出稿時の媒体選定において分析結果を参考にしているようだ。
もっとも、そのノウハウの利用拡大には課題も残されている。テレビや新聞、雑誌などの各媒体は当然ながら読者の属性が異なる。また、軽自動車のCMではアクセスの反応が出にくいなど、製品ごとにアクセス数への影響に差がある。そのため、「効果の判断」を誤らないためには、媒体や製品の特性に対する十分な理解と配慮が欠かせない。
アクセス解析に秘められた新たな可能性
ただし、効果測定は大きな可能性を秘めている。従来、効果測定の指針とされた視聴率や発行部数は、媒体そのものの力を推し量ることには使えたものの、広告単体でどれだけ消費者に影響を与えたのかまでは確認できなかった。だが、企業サイトへの誘導を併用すれば、そのアクセス数にそれが明確に表れるのである。「従来行われていなかった広告のコストと効果のアカウンタビリティ(説明責任)に(アクセス解析による効果測定は)大いに活用できる」(渡辺氏)のだ。
また、アクセス解析は、宣伝活動と広報活動を同一の評価軸で検証する手段にもなり得る。
「あるニュース番組で当社の新製品(モデル)発表の様子が取り上げられたところ、その時間帯にそのモデルのサイトへのアクセスが増加する現象を確認できた。広告と広報の両者の効果を比較できるようになった意味は、当社として極めて大きい」(渡辺氏)
2011年になると、地上波放送の完全デジタル化によって、テレビがインターネットと「ほぼ全面的に」接続される環境が整うという追い風も吹いている。
企業サイトは、顧客と各コンテンツをつなぐ“情報のハブ”と位置付けられる。「アクセス解析の目標は、極言すれば顧客とのコンタクトポイントの完全制御にほかならない」と語る渡辺氏。ホンダではその実現に向けた体制が、整いつつある(「月刊アイティセレクト」8月号の特集「『持ち腐れ』の企業サイトに喝! Webマスターが変えるマーケティングの底力」より。Web用に再編集した)。
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