Oracleの中国への投資はさらに拡大する:Oracle OpenWorld Asia Pacific 2007 Report(2/2 ページ)
Oracleは7月30日、上海に中国内で3つ目となるR&Dセンターの開設を発表した。世界的に展開している「Oracle Asia Research and Development Center(OARDC)」としては7番目となる。
この急激に拡大する中国巨大市場は、日系企業の中国進出にどのような影響を及ぼすのだろうか。日本オラクルのアジアパシフィック事業開発本部 執行役員の沼田治氏は、「このところ、中国に進出した日系企業で導入されるシステムのトレンドが、人事やCRMといったものになっている。当初は製造業の工場が会計やサプライチェーン、生産管理といったシステムを利用することが多かったが、現在はいかに効率的に販売するか、また中国においてもきちんと人材を育成、確保していくかという課題解決のシステム導入の傾向が強まっている」と言う。
日本オラクルのアジアパシフィック事業開発本部は、アジア地域に進出する日系企業に、日本と同水準の営業支援サービスを提供することを目標に活動を行っている。2003年に上海に中国事業開発部として設立され、製造業を中心に中国での合弁工場などのシステム化の手助けを現地法人と協力して行ってきた。2004年にはシンガポールにも拠点を置いてアジア地域全体をその対象に拡大し、さらに2007年6月からはインドのデリーへの駐在も開始している。
アジア地域のビジネス動向を2003年から肌で感じながら活動している沼田氏によると、中国では離職率が高いこともあり、人事的な管理は今後重要な課題になるという。なるべく長く働いてもらうための給与や教育、昇進管理などを行うには、大勢いる現地の社員を適切に管理する需要が高まっているのだ。
さらに、市場としての成長を踏まえ、営業販売管理、ディーラーマネジメント、顧客サポートを行うコールセンター案件も目立つようになっているという。コールセンターについても、当初は現地顧客のトラブル対応が目的だったが、最近は1つの販売チャネルとしての活用に変わっていると沼田氏は言う。
こうしたアプリケーションの導入方法は、中国消費者の感覚が日本や欧米とは異なるため、日本流や欧米流を押しつける方法はうまくいかない。「押しつけるのではなく、日本や欧米のノウハウが詰まったものをうまく活用するという考え方が成功しやすい」と沼田氏。
中国での人材教育にも投資する
デレック・ウィリアム副社長によれば、Oracleは中国において人材教育にも多くの投資を行っているという。直近の優秀な技術者を確保するため、大学などにOracle製品や技術を積極的に利用してもらうといった取り組みにとどまらず、それよりもさらに下の若い世代の才能のための投資も行っているという。
沼田氏の見解によると、中国はまだまだITの技術者の層が薄く、その中でも技術の高い層はさらに薄い。その下に、あまり技術力の高くない層が位置している状態だという。そのため、少しでも技術力のある人間は、より高い賃金を求めて流動的な状況にある。人材の流動が激しければ、構築されるシステムの信頼性などに大きな問題が発生する可能性もある。こうした状況に対し、技術者層を上から下まで厚くすることで、中国のIT業界全体を安定した状況へと導く必要がある。そのためには、中長期的に人材の育成を行う必要があり、子どものときからIT教育を受けられるように支援しているのだろう。
急速な変化で、ゆがみもある中で拡大する中国という市場には、まだまだ支援すべきところがたくさんある。目先の利益追求のためだけではなく、中長期的な視点から課題解決に投資するOracleの見越す先は、中国アジア地域における将来のさらなるビジネスの成功ということだろう。
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