才能の網羅がつづる出版の未来像:日本のインターネット企業 変革の旗手たち【番外編】(3/3 ページ)
出版不況や活字離れなど出版社を取り巻く状況が悪化する中、持ち前のコンテンツをWeb、紙媒体、携帯電話などに展開し、新たな出版社像を模索する講談社。Webマガジン「MouRa」の部長である服部徹氏にWebマガジンや出版の未来を聞いた。
メディアではなく、才能と心中
ITmedia 保守的な人材が多いとのことですが、求める人材像は積極性を重視するのでしょうか?
服部 問題解決・提案型、変化を恐れない、明るく前向き、コミュニケーション能力に長けている、情報を共有できる、費用対効果を計算できる――ざっと挙げるとこのような要素を見ています。
タイタニックを撮影したジェームズ・キャメロン監督は、とてつもない映画を効率の良い予算で作り、期待以上にヒットさせるといった優れたプロデュース感覚を持っています。タイタニックの逸話ですが、キャメロンは沈没シーンでタイタニックを動かす特注の装置をクレーンとして流用できるように設計して、メキシコの鉄工所に売り、予算を浮かせられるように発注したそうです。彼は映画をただ撮影するだけでなく、経営視点を持って作ることができるのです。
例えば書籍が100万部売れたら売り上げが幾らになるか、手掛けているプロジェクトの果てにどれだけの利益が見込まれるか、そういったことを想像できる感覚が必要となってきます。「間もなく100周年の歴史ある講談社はつぶれない」と考え、自らを変えることに保守的な人ではだめです。
ITmedia MouRaが目指す次の姿は?
服部 目指すものはまだ見えていませんがたどりつくべきものはユーザー視点、これは間違いありません。「ユーザーや読者のために才能と心中しても、メディアとは心中しない」ことを心掛けています。
今はWebや携帯電話、紙媒体など個人の才能を世界中に広めるメディアはたくさんありますが、それは日々変化しています。今後メディアがどうなるかは誰にも分かりません。そのような中で出版社の立場として言えるのは、われわれは確実に作家や個人の才能とはつながってゆくということです。
おもしろくてためになるという講談社のコンセプトをMouRaという才能の受け皿にプラスして、説教くさくなく、楽しく、いつのまにか読者のリテラシーが上がっているようなコンテンツを提供し続けていきたいですね。
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