「電波少年」でできなかったことをネットでやる:日本のインターネット企業 変革の旗手たち【番外編】(3/3 ページ)
「あくまで僕は作り手」と話す第2日本テレビの土屋氏は、インターネットのあり方についてビジネスマンとは違うユニークな考えを持っている。ネットビジネスから2ちゃんねるに至るまで多くを語ってくれた。あの番組の話も……。
プロデューサーのあるべき姿
ITmedia ネットのサービスやコンテンツで注目しているものはありますか?
土屋 追いかけ切れないですね。僕らが認めちゃいけないんだけど、最近だと「ニコニコ動画」や「YouTube」みたいなものですね。2ちゃんねるは怖くていまだに観たことがないです。よくブログが炎上するとかいうじゃないですか。あんなの絶対に自分がそうなったらと考えると無理だと思う。1つの悪口でめちゃめちゃへこみますからね。つい自分の名前を検索してみたくなりますが、どんなことが書かれているか、何件あるかというだけで怖いです。ブロガーの人たちと話をする機会がありますが、彼らは「炎上してなんぼですよ」という。炎上はいいことなんだというくらい、言葉やバッシングに対する強さを持っています。そういう耐性をネットの作り手・送り手は持たなくてはいけないと思いますが、自分には難しいです。
ただし、今ではほとんどの有名人がブログで発信していて、少し前とは様変わりしています。その時代の中で送り手のあるべき姿というものも変わっていくと思います。送り手が身につけなければいけない能力というものもあるはずです。
ITmedia 最近はWebプロデューサーという職種も登場してきています。最後に、ご自身のプロデューサー論を教えてください
土屋 Webプロデューサーって、技術とビジネスが分かる人ということだけど、もう1つ、クリエイターの気持ちを理解できないとプロデューサーとはいわないです。クリエイターとビジネスマンの架け橋がプロデューサーであるという考え方をしないといけない。Webプロデューサーの人たちは、「クリエイティブなんてネット上に転がってるんだ」という考え方をしてしまいがちです。そうではなくて、きちんとクリエイターなりエンターテイナーなり、タレントといわれる人たちも含めて、それを見つけて育てないとクリエイティビティは生まれてきません。発掘して育てることが大切で、それをプロデューサーがやらなくてはなりません。Webの世界はそれが軽視されすぎている気がする。
Webの世界でもコンテンツ自体がすごく大事になってきます。クリエイティビティは言い換えると「狂気」に近いものです。それを認めてあげないと面白いものはできません。例えば「電波少年」で、猿岩石という無名の芸人がヒッチハイクで香港からロンドンまで行くという企画を会議で出した時、作家含めてスタッフ全員が「何をこいつは言っているんだ」という反応をしました。実際に番組がスタートした時、多くの視聴者から「そんなものをやらないで松村のアポなし(アポなしで永田町の総裁のいすに座るなどの企画)を見せてくれ」という電話が山ほどきました。でも、何ヶ月かやって実は面白いということになり、半年後のロンドンゴールの時には、「松村のアポなしより、猿岩石が見たい」ということになりました。
Webプロデューサーになりたいという人は、ビジネスや技術のことだけ分かればいいと思っているかもしれませんが、実はその先にクリエイターという非常に繊細なクリエイティビティがあって、それをつなぐ役目だと考えないと、もう通用しない時代がきていると思いますよね。
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