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ギョーザ事件はシステマチックに防げるのか?:食の安全とITを考える(4/4 ページ)
今年1月に起きた「中国製ギョーザ事件」は、いまだ解決の兆しが見えない。当初の捜査では、流通工程のどの部分で毒物が混入されたかが争点になっていた。こうした食の安全に対しITがどこまで関与できるのだろうか。
消費者との温度差
もちろんトレーサビリティは単に安全性を高めるだけのシステムではない。在庫管理や顧客管理、物流の状況把握などが可能で、サプライチェーン全体の効率化を図ることができる。例えば、家電業界ではトレーサビリティが進んでいる。
しかし食品の場合、業界内での業務効率化よりも、消費者に対する安全、信頼感が注目されてしまう。食は誰にとっても最も身近なものであり、安全性に対してより一層敏感になっている。一方で身近であるからこそ、IT投資や食品にRFIDを付けることによる価格の高騰への反発を恐れて、食品各社がシステム導入できず安全管理が遅れているというのは皮肉である。
「トレーサビリティが必要だと思う消費者が果たしてどれだけいるのだろうか」(大手ビール会社関係者)や、「ミートホープなどによる食品偽装は悪質な行為だ。しかし、食品は利益率が低い上に、(消費期限があるため)長期間在庫を抱えることができない。小売から返品されても処分するしかないという側面も理解してほしい」(食品業界関係者)など、業界側も一般消費者とのギャップを感じているのが現状だ。
食に対する安全・安心をITで高めていくには、消費者やメーカー各社の理解を得ながら、1つ1つハードルを越えていく必要がありそうだ。
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