ネットワークスイッチのスループットを調査せよ【前編】:計る測る量るスペック調査隊(2/3 ページ)
ITは、分かっているようで意外と説明できないことの集合体である。本連載では、IT業界に眠るそれらの謎を文字通り徹底的に調査していく。第1回は、ネットワークの代名詞的な技術といえる100BASE-TXが本当に100Mbpsの速度で通信するのかどうかを調査してみよう。
ネットワーク機器の基本性能を測る
ネットワーク機器の性能を表す指標の中で、最も一般的なものがスループットだろう。スループットの測定方法はRFC 2544*「Benchmarking Methodology for Network Interconnect Devices」で定められている。
RFC 2544で規定されている測定手法自体は非常に簡単であるが、デバイスそのものが持つフレーム転送の基本能力を見極めることができるため、非常に重要な試験といえよう。ここで測定できるその基本能力が、インターネット上のすべての上位アプリケーション(音声や画像など)に大きく影響を及ぼすといっても過言ではない。
なお、RFC 2544はその前身であるRFC 1944を改定したものであり、RFC 1944も含めると10年も前に規格化された測定手法である。しかし、それがいまもなお基本性能を測る指標となっている点からも、この試験がどれほど重要であるかがうかがえる。
まずはこのRFC 2544テストにより、現在における一般的なL3スイッチの基本的な性能を調べてみよう。
RFC 2544テストによるベンチマーク
RFC 2544ではスイッチやルータなど、ネットワークを構成する装置について、表1の性能を測定する方法が詳細に規定されている。その中で、今回はスループットとレイテンシについて測定を行った。この2つは機器が正常動作している場合の処理能力を表すものであり、機器の基本的な性能を表している。
対象 | 説明 |
---|---|
スループット | 対象機器の最大転送能力 |
レイテンシ | フレームが機器に入力されてから出力されるまでの時間 |
フレーム損失率 | スループットを超えた状況での転送能力 |
連続フレーム | 連続してフレームが入力された場合に正しく処理できる限界フレーム数 |
システム回復 | 過負荷状態からの復帰に必要な時間 |
リセット | 対象機器がハードウェア/ソフトウェアリセットされてから復帰するまでの時間 |
なお、RFC 2544では64、128、256、512、1024、1280、1518バイトという7つのフレームサイズでそれぞれ試験を行うことを推奨しているが、今回の試験では最小の64、最大の1518、中間の512バイトという3つのフレームサイズで試験を行った。
スループット試験
対象機器に入力されたフレームをロスなく転送できる最大レート(スループット)を求める試験である。あるレートでフレームを入力してロスなく転送できた場合はレートを上げ、ロスが発生した場合はレートを下げて試験を行い、二分探索アルゴリズムによってロスのない最大レートを測定する(図1)。
テスト対象ポートは24ポートすべてを対象とし、通信速度は100Mbps(100BASE-TX)、1回の試行時間は60秒で、3回の試行の平均を測定結果とした。フレーム長は前述のとおり64/512/1518バイトの3通りを使用している。
測定結果
表2が試験対象L3スイッチ3台のスループット試験結果である。3台とも、24ポートすべてにおいて理論上のスループット*を問題なく示した。このクラスのボックス型スイッチは、フレーム転送をハードウェア処理で行っているため、十分な転送能力を有していることが試験によって実証できた。
フレームサイズ | 理論値 | CentreCOM 8624EL | SF-4024FL | Apresia 3124GT |
---|---|---|---|---|
64バイト | 148809.5 | 148809.5 | 148809.5 | 148809.5 |
512バイト | 23496.23 | 23496.23 | 23496.23 | 23496.23 |
1518バイト | 8127.433 | 8127.433 | 8127.433 | 8127.433 |
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このページで出てきた専門用語
RFC 2544
RFCとはインターネットに関する各種技術的情報のこと。インターネット上のさまざまなプロトコルなどが記述されている。RFC 2544ならば、その2544番目。
理論上のスループット
理論上の最大レートのこと。イーサネットの通信速度100Mbpbpsを、フレームサイズ+プリアンプル(フレームの前につけられるヘッダ情報)64ビッビット+フレームギャップ(フレーム間隔)96ビッビットで割ったもの1秒間に最大で送信できるフレーム数、つまり理論上のスループットとなる。
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