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コラム

ASPとSaaSの違いをはっきりさせる連載:SaaSで一歩抜け出す中小企業(1/2 ページ)

SAP、Oracle、Microsoftなど大手ソフトウェアベンダーがSaaSに力を入れ始めた。中堅中小企業専門のIT調査会社ノークリサーチに、調査結果をもとにした中小企業のSaaS利用を展望してもらう。

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 SaaS(Software as a Service、サース)とは、「ベンダーが所有するソフトウェアをユーザーがネットワーク経由で利用するサービス」を指す。それは「カスタマイズの実現度」「ユーザービリティの高さ」「マルチテナント技術の応用」といった技術的裏付けから従来のASPとは区別されるソフトウェアの提供形態である。SaaSは将来的にXaaS(X as a Service)と呼ばれるサービス領域にまで拡大することになる。

SaaSの定義

 SaaSはソフトウェアの提供形態の呼称に過ぎないため、厳密にはSaaS市場なるものは存在しない。今それを便宜的に「SaaS的市場」(以下SaaS市場)と称し、ソフトウェア、サービスの代替市場と定義する。(ハードウェア市場はSaaS市場の比較対象とはしない。)従ってソフトウェアの利用料金(セットアップ費、カスタマイズ費、ランニングコスト含む)がSaaS市場を金額ベースで形成する。

SaaS登場背景(ASPとの相違)

 ASP(Application Service Provider)のパラダイムシフトとして登場したSaaSは、専業ベンダーによる市場開拓に始まり、次々と大手パッケージベンダーが参入を表明している。一方で経済産業省や総務省など政策立案者による普及推進表明が見られるなど、もはや無視できない存在となっている。

 一般的にSaaSの前身サービスである ASPは失敗に終わったとされている。その原因は次の3点に代表される。

  • 1.インフラ、アーキテクチャに起因した問題
  • 2.ビジネスモデルに起因した問題
  • 3.アプリケーション性能、操作性に起因した問題

 1.については、ブロードバンド環境の不備、データセンターの堅牢性の問題(空調設備や各種防災設備、耐震構造、無停電電源装置、高度なセキュリティ管理など)、アーキテクチャの問題(シングルテナントなど)、アプリケーション管理上の問題(バージョン管理、コードベースの混在など)、普及のために解決すべき課題があまりに山積していた。

 2.については、ASPモデル構築には高額なイニシャルコスト、ランニングコストが求められる割に、収益となる月額料金は低額という、ASP提供側の損失の上にユーザー企業の利便が圧し掛かる構図を脱却出来なかったことを意味する。

 3.については、既存のパッケージソフトを単にサーバに載せ、フロント部分をHTML化したに過ぎないサービスが主流であり、その操作性はおろか、利用価値そのものが疑わしいものが少なくなかった。

 これらのうちで、特にブロードバンド環境の充実に伴いネットワークコストが低下したこと、マルチテナント形式という技術進歩があったこと、ユーザービリティ(操作性)が向上したこと、既存ソフトウェアとの連携が可能になったこと、業務プロセスに合わせた広範囲のカスタマイズが可能となったことによって、あえて「ASP」から「SaaS」という名義変更を経て、改めて「ソフトウェアは保有するものでなく今後は利用するものである」という論調が尊ばれるようになったのである。


【図表1】ASPとSaaSの違い 

 「ネットワーク経由でのソフトウェア利用」というSaaSの基本コンセプトはASPと同様である。両者の決定的な違いは「マルチテナント」というアーキテクチャにある。極端な例だがサーバ100台で1000ユーザーのデータ処理を行うのと、サーバ1台で1000ユーザーのデータ処理を行うのとでは、1ユーザーのデータ処理に発生するベンダーの平均コストは圧倒的に後者が低い。

 1ユーザー当たりの課金率は基本的に一定のため、利益率は後者が勝る。これを技術的に実現するのがマルチテナントであり、すなわちそれはSaaSビジネスの利益の源泉である。

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