新藤愛大――欲望という幻想を現実に変えるActionScripter:New Generation Chronicle(7/7 ページ)
ソフトウェアとハードウェアの両方に精通し、世の中を変革しようと牙を研ぐバイナリアンたちを紹介していく「New Generation Chronicle:バイナリアンスレッド」。第3回は、若くして国内のFlash/ActionScript界をけん引する新藤愛大氏に登場いただいた。
「FLASHerは基本的にドM」は定説
―― これまでの開発(もしくはプロジェクト)で一番の失敗だと思っていることはありますか?
未踏に採択されたときのことですが、十分な準備期間が取れず、かなりグダグダになってしまった感があり、後悔しています。ただ、失敗とは転ぶことではなく、そのまま起き上がらないことだと思いますので、もし次またチャレンジすることがあれば、今度こそしっかりとした成果を残したいですね。
―― 未踏に応募されたことで、あなたの世界はどう変わりましたか?
人生が一回転半ぐらいした気がします。Flashに出会ったことの次に、今の自分に影響があった出来事です。いろいろな開発者の人と出会う、Spark projectをはじめる、大人の世界を垣間見る、大量にプレゼンをする、New Generation Chronicleに呼ばれる、いろいろなことのきっかけとなりました。集まる方々もただ者ではないオーラを発している方が大半で、未踏ユースは特にその傾向が強いので、参加されるときっと刺激を受けると思いますよ。
―― 今、優れた開発者とチームを組んで新しいプロジェクトを手掛けるとすればどんなものを?
「アホなことを全力でやる」とか「技術の無駄遣い」系のコンテンツを作ってみたいですね。全力で。巨大なコンピュータリソースが与えられるなら、Flashの計算/描画スピードではとうてい無理と思われているような表現(Processingのような)を思いっきりやってみるのも面白そうですね。
―― IT業界は3Kだと思いますか? また、どうすれば改善できると思いますか?
Flash業界というか、わたしの周りの人を見ていると、「きつい」「帰れない」に該当する例は、残念ながら結構見かける気がします。ただ、そこまで「給料が安い」ことはないと思いますし、「FLASHerは基本的にドM」は定説なので、わたしを含め、みん何だかんだいいつつ好きでやっているんじゃないの、と思ったりする面もあります。
―― 未来のActionScripterたちに一言
Spark projectで待ってます!!
―― この質問に項目を追加するとすれば、どんな質問を加えたいですか?
1週間の時間の使い方を教えてください。わたしは、フリーランスという性質上、実は結構あいまいというか決まったタイムテーブルはなくて、自分が抱えている案件の締め切りに一番左右されます。納期が近いと土日でも一日中仕事をしていますし、そうでないと逆に、平日でも思うがままにFlashやActionScriptの情報をあさったり、Spark projectのことをしていたり、ネットを見て一日を過ごしたりしています。だいたいちょっと遅め、お昼近くに起きて、それから夜中まで、ご飯とお風呂以外はiMacの前にいるような生活ですね。
―― インターネットは10年後、どのように進化していると思いますか?
現在は、回線速度の高速化だったり、ストリミーング配信だったり、「リアルタイム性」に重点が置かれていますが、それを超えた「非リアルタイム性」が注目されるような気がします。そういう意味ではニコニコ動画は非常に興味深いですね。
―― プログラミングの未来についてどう考えていますか?
今でこそオブジェクト指向がスタンダードですが、それに取って代わる何かが来るのかが興味深いところです。ただ、それが何かなのかはまだ分からないですね。AOP(Aspect-Oriented Programming)もいまいち爆発してない感がありますし。
―― 自分が実際に会ったことがある人の中で、「この人に回答してほしい」という人は?
井上氏、上野氏、わたしと未踏経験者が続いたので、これを継承する形で、未踏の先輩かつ日本語プログラミング言語「なでしこ」「ひまわり」などの作者で実はActionScripterなクジラ飛行机さんにお願いしたいと思います。
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