彼女とわたし――伝わらない想い:悲しき女子ヘルプデスク物語(2/3 ページ)
ユーザーが発するIT用語が正しい意味で使われているとは限らない。往々にして伝えたい思いがすれ違ってしまうのだ。難しいものですね。
紙詰まりって出てるじゃん
一般のユーザーが使うIT用語が、正しい意味だとは限らない。Webサイトの閲覧を「インターネットする」と表現することだって、そう。それで何度、振り回されたことか。
とはいえ、アセっているユーザーに対し、コトバ使いのミスを指摘するのは、お勧めできない。なぜなら、ユーザーにとっては「そんなことはどうでもいい」からだ。たとえそのコトバ使いが混乱を招いているとしても、である。そんなヒマがあったら、さっさとトラブルを解消して欲しいというのが彼らの本音なのだ。
わたしは、「はいはい」と答えると、彼女のPCを操作する。
さっき、A美は「何度もコピー(印刷)している」と言っていた。ということは、プリントスプールにはジョブがたまっているはずだ。
スタートメニューの「プリンタとFAX」をクリックして表示されたプリンタアイコンをダブルクリックしてみると、案の定プリントスプールに大量の印刷原稿がたまっている。これが原因でプリンタが動かないこともある。とりあえず、一度これらのジョブを削除した。次にプリンタに異常が無いかどうか、チェックする。とりあえず、複合機の液晶画面を見てみると、何のことはない。「紙詰まり」という表示がしっかり出ているではないか。
わたし 紙詰まりって出てるじゃん。
A美 えー、さっき取ったよぉ?
言い訳のような愚痴のような返答をするA実。紙詰まりを起こしていたのなら、それを先に言いなさいよ。
どうやら、「印刷できないのでプリンタを見た。そうしたら『紙詰まり』という異常があったから紙を取り除いたけど、やっぱり印刷できなかった」ということらしい。本当にヘルプコールでなくて良かった。こんなこと、現場にいないと分からない。
最近の複合機は高速だ。1枚目の紙を印刷しているまさにその時、次の紙はトレイから取り込まれ、ドラムのすぐ側まで来ている。そんな状態で紙詰まりが発生したら、複合機内部のあちこちに紙が居残ることになる。
A美は、複合機で示された最初の1箇所の紙を取り除いただけで問題が解決したと思いこみ、複合機の液晶パネルを確認することなく、自席に戻ったらしい。
複合機のカバーをはずし、詰まっていた紙を取り除く。複合機の液晶には、そのほかのトラブルメッセージは出ていない。これで大丈夫と、A美のPCから印刷操作を行った。
ところが、プリンタはまったく動く気配が無い。その様子を見ていたA美、「PCが壊れちゃったのかなぁ」。いや、それは違うって。
しかしおかしい。念のため複合機を再度確認する。PCから印刷データがプリンタ側に送信されると、それを表すランプが点滅するようになっているのだ。点滅していないということは、PCからデータが届いていないのだ。
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