いったん振り返る、ERPってなに?:中堅中小企業の経営基盤改革術(1/3 ページ)
中堅中小企業を支えるソフトウェアとしてERPの導入が進んでいるが、ERPとはもともとどんなものなのか。血液のように企業の各部門にデータをスムーズに流す仕組みを改めて考えてみる。
前回はユーザーがERP導入を行うきっかけについて、歴史的ないきさつも踏まえて概観してみた。だが、前回記事を読んで「ERPってもともとなに?」と思った方もいたのではないか。
いまさらながらERPは「Enterprise Resource Planning」の略であり、企業における経営資源(ヒト・モノ・カネ)の最適化を目指す活動のことを指す。そこから転じて、企業の統合基幹業務パッケージをERPと呼ぶようになった。しかし、この説明だけでは具体的なイメージはあまりわかないだろう。ERPはデータを共有した幾つかのモジュールが組み合わさった形態を取ることが多く、ベンダーによって備えるモジュールは千差万別である。
この点もERPの理解を難しくしている一因といえる。そこで今回はERPの定義を明確にし、その構成要素を整理することにする。次回以降ではERP導入の成功・失敗パターンやさまざまなケーススタディを紹介していく予定だが、そうした具体例を見る前にERPについての基本事項を理解しておこうというのが今回の目的である。
まずERPの定義をもう少し掘り下げてみることにする。「統合基幹業務パッケージ」ではあまりに漠然としているので、ここでは以下のように定義してみる。
ERPとは
「企業内における財務会計、販売管理、購買管理、生産管理、人事・給与といった各モジュールのすべてもしくは一部を提供し、各要素内や要素間のデータ共有が計られたアプリケーションパッケージ」のことである。
ERPにはデータを共有する幾つかのモジュールが存在し、それら各モジュールの種類や呼称がベンダーごとに異なっていることは既に述べた。そのままの状態では整理をすることができないので、ここではERPの「標準モデル」を定義してみることにする。まず標準モデルを理解しておき、具体的なプロダクトについては標準モデルとの差の部分を把握するようにすれば、種々雑多なERPプロダクトも統一的な視点で整理することができるはずである。
それでは標準モデルの内容について見ていくことにしよう。標準モデルには「財務会計」「販売管理」「購買管理」「生産管理」「人事・給与」のモジュールが含まれている。これらはERPの根幹を成すモジュールであり、多くのERPプロダクトはこれらのすべてないしは一部を備えている。それぞれのモジュールが持つ機能は以下の通りである。「サブモジュール名称」は実際のERPプロダクトで用いられている名称を挙げている。
また、「/」で区切られた複数の名称は意味的には同じであるがベンダーによって表現が異なっているものを示している。
「財務会計」
入出金や仕分けといった総勘定元帳の管理、原価計算、予算管理、決算書や財務諸表の作成などを行う。下記は財務会計モジュールに含まれるサブモジュール名称(機能名称)。
- 債権・債権管理
- 入出金管理
- 原価管理
- 経費管理
「販売管理」
見積書、受注情報、および請求書の管理、出庫処理、販売取引情報の管理などを行う。下記は 販売モジュールに含まれるサブモジュール名称(機能名称)。
- 見積管理
- 受注管理
- 売上管理
- 請求管理
- 在庫管理/出荷管理/出庫管理
「購買管理」
発注処理、仕入れ在庫の管理、購買取引情報の管理などを行う。下記は購買管理モジュールに含まれるサブモジュール名称(機能名称)。
- 発注管理
- 仕入管理
- 在庫管理/入荷管理/入庫管理
「生産管理」
在庫情報や受注情報に基づいて調達計画や生産計画を作成し、商品生産プロセスの管理と遂行を行う。下記は生産管理モジュールに含まれるサブモジュール名称(機能名称)。
- 調達管理
- 計画管理
- 工程管理
- 在庫管理
「人事・給与」
従業員の勤怠及び給与情報の管理や給与明細の作成などを行う。下記は人事・給与モジュールに含まれるサブモジュール名称(機能名称)。
- 給与管理
- 勤怠管理
- 人事管理
実際のERPプロダクトではこれら標準モジュールに相当する各機能に加えて、「資産管理」(固定資産などの管理を行う)、「税務管理」(法人税申告などを行う)、「物流管理」(販売した商品の流通情報を管理する)、「業種特化機能」(業界ごとに必要とされる管理文書の作成などを行う)といったさまざまな追加モジュールが提供されている。
この標準モデルを図示すると以下のようになる。
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