家族や社員を守れ 大地震に対する安否確認システムの導入に拍車:問われる危機管理(2/2 ページ)
大地震の発生に備え、安否確認システムの導入が進みそうだ。BCPやCSRの観点で、企業は災害に対する危機管理をどのように徹底するかを問われている。
企業ユーザーだけでなく、個人による安否確認のニーズも出てきている。
事業者向けの緊急地震速報システムに組み込まれることが多い安否確認サービスだが、家族単位など少人数に対応したものもある。システム開発のアールシーソリューションが手がける「ゆれくるコール ファミリーパック」は、1契約で最大5人の安否確認ができる小規模向けサービスだ。
同サービスは、利用者が事前に登録した家族や知り合いに地震の速報や安否確認のメールを自動送信できるサービス。実家を出て一人暮らしをしている人が家族の安否を確認したり、家族で小規模の企業を経営している人たちが緊急地震を素早く知ったりするといったシーンでの利用を想定している。
安否確認のツールとして一般的に知られているのは、被災した側が伝言を残し、家族などがそれを確認する災害用伝言ダイヤルだ。だが「災害用伝言ダイヤルの利用では、被災した人と安否の確認を求める人の間に意識の行き違いが生じる」とアールシーソリューションは言う。
例えば岩手・宮城内陸地震において、宮城県境は震度3程度の地震だった。被災を心配する人はその被災状況が分からないから伝言を残す一方、被災側は、震度3程度のため大きな被害は受けず、被災の伝言を残さない。被災を確認する側からの伝言で回線が込むと、災害伝言ダイヤルは不通となる。これが「被災側に何かあったのではないか」と確認側の不安をあおる。
同社によると、2007年7月16日に発生した新潟県中越沖地震における災害伝言ダイヤルの利用者は、被災を心配する人の方が多かった。被災した人の伝言ダイヤルの利用はわずか1割にすぎず、残りの9割は被災した人の安否を気遣う人だったという。
地震大国の日本では、来る大災害に備え万全の対策が必要となる。企業の事業継続は社員があってはじめて実現する。個人での危機管理が進む兆しを見せていることもあり、企業は危機管理をこれまで以上に徹底する必要が出てきている。
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