アキバのPCで米作り 100台の利活用がスタート:節電しにくい電力を再利用
東京の秋葉原で、家電量販店の展示PCを国際的な米作りの研究に役立てるキャンペーンが始まった。節電しにくい展示PCの電力を別の用途に生かす活動だ。
東京の秋葉原の家電量販店で展示しているPCを、米作りの研究に活用するキャンペーン「活エネ・キャンペーン@アキバ」が始まった。
これは、害虫に対する防御や栄養価に優れた米作りを行う米ワシントン大学の研究に、PCの処理能力を提供するもの。米のタンパク質の構造解析などに使う。この研究は、使われていないPCの演算能力を社会貢献度の高い研究に転用する、IBM主導のプロジェクト「ワールド・コミュニティー・グリッド」の1つである。
秋葉原にある家電量販店の石丸電気、オノデン、九十九電機、ソフマップ、ラオックスが参加し、約100台の展示PCの演算能力を提供する。
処理能力の提供には、PCにIBMの専用ソフトウェアをインストールすることが必要となる。PCが休止状態になると、インストールしたソフトウェアが、専用サーバにプロジェクトで使う基礎データを要求する。これに応じて専用サーバが研究データを各PCに割り当てる。PCが送られてきたデータを計算し、計算結果を専用サーバに返送する。「PCが使われていない時にCPUの約60%を割り当て」(日本IBM社会貢献、藤井恵子係長)、展示用PCの一定時間をデータの解析時間に提供するという考えだ。
「同プロジェクトでは、1台のPCに割り当てたデータの演算は約2日で終わる」と藤井氏。演算が終わるとIBMのスタッフが家電量販店に来て、データを専用サーバに送信する作業を行う。
同キャンペーンは、これからプロジェクトを本格始動させるための「検討」(オノデン小野一志社長)に当たるという。専用ソフトウェアを導入するPCのスペックに伴って、CPUの稼働率や提供できる演算能力が異なるため、「提供できる演算能力の定量的な目標が立てにくい」(藤井氏)。今回のキャンペーンでは、来客者の数に対して、どれだけのPCがアイドリング状態になり、演算能力を提供できるかといったことを検証し、プロジェクトの本格始動に向けて準備を進めていく。
ワールド・コミュニティー・グリッドでは、がんやAIDS、気候モデリング、疾病などの研究を進めるための基礎データを解析する。同プロジェクトには現在40万人が参加し、100万台のPCが登録されている。
オノデンの小野一志社長は「2010年には約1000万人の観光客が日本を訪れる試算だ。そのうち約1割が電気街に立ち寄る。グリッド技術を活用した社会貢献に秋葉原が取り組んでいることを知ってもらいたい」と話している。
活エネ・キャンペーン@アキバは、7月6日まで実施する。
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