はるかなる夢、あるいは未来への勝利:Imagine Cup 2008 Report(3/3 ページ)
Imagine Cup 2008は盛況のうちにその幕を下ろした。日本から参加した学生たちの胸に去来するものは、夢を見続ける楽しさだった。ここでは、Imagine Cup 2008、および日本代表の人物像に迫ってみたい。
「男たちは、夢を見る」はドラマの中だけの話ではない
「伝説を作ります」――フランスへたつ前に日本国内で行われた壮行会で、報道陣に向けて大胆にもそう公言したNISlab。国内予選を通過し、その2カ月もの間ブラッシュアップを図ってきて最高のものを作り上げたという自信から、彼らは野心に満ちていた。しかし現実にはNISLabはラウンド1で敗退した彼ら。ラウンド2に進む12チーム、その中に自分たちのチームが入っていないことを知ったときの彼らの姿にはそれまでのような覇気は消えうせていた。
しかし、NISLabが今回のImagine Cupで見せたソリューションは、過去の日本代表の中でも最高峰に位置するものだった。3年連続でImagine Cupに出場し、ソフトウェアデザイン部門のファイナリストにまで進んだ中山浩太郎氏(現東京大学知の構造化センター特任助教)の壁を越える者がとうとう現れたと感じたほどだ。その証拠に、多くのメディアが彼らのプレゼンテーションを絶賛した。以下に、彼らのラウンド1でのプレゼンテーションの様子を一部ではあるが紹介しておきたい。
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世界に挑み、世界を知った彼ら。そこで終わるのではなく、再び世界を目指そうとしている。彼らは伝説を作れなかったのだろうか。その問いはイエスでありノーである。彼らは伝説を作ることを夢見て、そして、その夢から今も覚めていない。それぞれの夢の続きはImagine Cup 2009へと続いていくことだろう。
エジプトのカイロを主会場に開催されるImagine Cup 2009のテーマは「テクノロジーの活用による世界の社会問題の解決」。ここでいう社会問題とは、2000年に国連ミレニアム・サミットで産声を上げたミレニアム開発目標(MDGs)に沿ったもので、かなり広範なテーマを包括している。
そして重要なのは、これまでのImagine Cupは毎年テーマを変えてきたが、Imagine Cup 2009から3年間、このテーマで開催されるという点だ。つまり、参加者はさまざまな視点から、数年単位で腰を据えて問題に取り組むことが可能になるわけだ。上述したような参加障壁を下げることが期待される。
「やっぱり来年はECOGRIDの改良版で、ELOGRIDじゃないかな。世界中のエロを集めてみんながつながるような(笑)」――加藤君が帰国途中に何気なく交わしていた言葉。もちろん冗談だろうが、彼らの目はすでに来年を見据えている。どんな夢であれ、本気でそれに取り組み、実現させるなら未来は変わる。要はどれだけその夢に全力で取り組めるかである。
Imagine Cup 2008に参加した学生が共有した感覚は、何気なく過ぎていく日常生活の中ではなかなか感じられるものではない。彼らはそれに酔い、再び同じ地を目指そうとしている。そんな魅力的な機会は彼らだけのものではない。しかし、彼らを眺めているだけの傍観者に同じチャンスは回ってこない。これを見ている方が学校の友人、あるいはインターネットを通じて知り合った仲間たちとともにImagine Cupへ挑戦することを記者だけでなく、Microsoftが、そして世界が待ち望んでいる。プログラミングができるかどうかなんて関係ない。そのためにImagine Cupにはさまざまな部門が用意されているのだから。
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